大飯再稼働と消費税増税 命と生活が、松下政経塾内閣お得意の舌先三寸で鴻毛の軽きに扱われた

2012-06-17 | 政治

大飯再稼働を決定 首相「安全」裏打ちなき強行
東京新聞2012年6月16日 14時00分
 政府は十六日午前、野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係三閣僚による四者会合を開き、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を決めた。これに先立ち、福井県の西川一誠知事は官邸で首相と会談し、同意する考えを伝えた。政府は十分な安全対策を取らないまま、裏打ちのない首相の「安全宣言」によって再稼働を強行した。
 首相は四者会合で「立地自治体の理解が得られた今、再稼働を政府の最終的判断とする」と表明。「政権として、原子力行政と安全規制の信頼回復に向けさらなる取り組みを進める決意だ。新たな規制機関の一日も早い発足に向け、一丸となって努力を続けたい」と強調した。記者会見はしなかった。
 四者会合前の会談には、首相のほか、枝野氏ら関係三閣僚らも同席。西川知事は安全対策や使用済み燃料の中間貯蔵施設の整備など八項目を要望し「関西の人々の生活安定のため再稼働に同意したい」と述べた。
 枝野氏は八項目の要望について「重く受け止め、真摯(しんし)に対応する」と応じ、首相は「福井県の決断に深く感謝したい」と語った。
 関電は同日午後、機器の点検など再稼働に向けた作業に着手。二基の起動は順番に行い、それぞれ本格稼働に三週間程度が必要とされるため、フル稼働は早くても七月下旬になる。
 国内の原発五十基は北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が五月五日に定期検査入りして以降、すべて停止している。大飯原発3、4号機が再稼働すれば昨年の東京電力福島第一原発事故以来、定期検査後の原発が再稼働するのは初めてとなる。
 しかし、安全対策に盛り込まれた免震施設の建設や防潮堤の整備などは計画を示せば十分とされ、今回の再稼働には間に合っていない。事故で信頼を失った経産省原子力安全・保安院に代わる安全規制の新組織もまだできておらず、安全対策は万全とはいえない。
 大飯再稼働をめぐっては、政府が四月十三日に再稼働方針を決定。首相は今月八日の会見で「福島を襲ったような地震、津波が起きても事故を防止できる」と表明していた。
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【大飯7月再稼働 福井同意に首相決断】 関電、準備作業入り/官邸、市民ら数百人抗議
 政府は16日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を正式に決めた。野田佳彦首相が再稼働について「政府の最終的な判断とする」と表明した。福井県の西川一誠(にしかわ・いっせい)知事が官邸で首相に同意を伝えたことで、地元の一定の理解が得られたと判断した。
  経済産業省資源エネルギー庁は関電に準備作業の開始を指示。関電は16日午後に3号機の作業を始め、早ければ3号機が7月8日、4号機が同24日にそれぞれフル稼働になる見通しを明らかにした。
  昨年3月の東京電力福島第1原発事故後、検査で停止した国内の原発が運転を再開するのは初めて。5月5日に商業用原発全50基が停止した「稼働原発ゼロ」は終わることになる。
  政府は再稼働で、電力不足による産業や生活の混乱回避を狙うが、安全規制組織の刷新や事故の検証を待たずに決めることで、抜本的な安全対策を置き去りにしたとの批判は避けられない。
  16日午前の知事との会談には、首相や枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚のほか、地震や津波の研究を進める立場の平野博文文部科学相が出席。知事は国民や消費地の再稼働への理解促進や、使用済み核燃料の引き受け拒否など8項目の要望を伝え「同意する決意をしたい」と表明。枝野経産相は「重く受け止め、真摯(しんし)に対応する」と応じた。
  首相はあらためて関係3閣僚との会合を開き「原子力行政と安全規制の信頼回復に向け、さらなる取り組みを進める」として再稼働を決断した。
  4月14日に政府が福井県に協力を要請後、同意手続きは難航し、2カ月超を要した。中長期の安定稼働を求める福井側に対し、京都府や滋賀県、大阪市など関西圏の自治体が夏に限った運転を求めるなど、慎重論もくすぶり続けている。
  枝野経産相は会合後の会見で「特別な監視体制を直ちに立ち上げる」と説明。再稼働時の安全確保に対応する。京都と滋賀には個別に情報提供することも明らかにした。
  政府は再稼働の準備状況を見ながら、関電管内で求める15%の節電目標(2010年夏比)の引き下げなど電力需給対策を再検討する。7月2日に節電期間が始まるが、フル稼働が間に合わないため、梅雨明け後の電力需要の急増や、火力発電所のトラブルに備え、計画停電の準備は続ける。
  大飯以外の原発の再稼働は、規制組織の発足が遅れており、安全評価(ストレステスト)の手続きが進んでいる四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)も再稼働時期は見通せていない。
  ▽表情硬く「同意を決意」 官邸、市民ら数百人抗議
  首相官邸前で脱原発グループなどの数百人が抗議の声を上げていた。福井県の西川一誠(にしかわ・いっせい)知事は官邸を16日訪れ、硬い表情で関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働に「同意の決意をしたい」と野田佳彦首相に伝えた。「深く感謝したい」と首相。原発近くの自治体からは安全性への不安と疑問の訴えが相次いだ。
  西川知事は午前9時半に県職員らとともに官邸へ。3階の会議室で野田首相ら関係閣僚と机を挟んで向き合った。
  「原発の重要性を理解してもらうことが大事。立地地域と消費地がいがみ合うのは避けなければならない」。同意を伝える前に、そう重ねて強調した。会談はわずか20分ほどで終わった。
  その官邸前。朝から「脱原発の政治決断を」などと書かれた横断幕を掲げた市民ら数百人が集まった。西川知事を名指しし「市民の側に立て。目を覚ませ」と声を上げ、数十人の警察官が視線を送る物々しい雰囲気に包まれた。
  地元のおおい町は期待と不安が交錯する。「おおい町は原発でやってきた。みんな動かしてほしいと思っていたよ」。町商工会副会長の浜田長利(はまだ・ながとし)さん(61)は歓迎した。
  原発の長期停止で地域経済は疲弊。商工会には地元の中小企業から雇用調整の相談が相次いでいた。一方で浜田さんは「世論が反対しているのがつらい。今後は風評被害も怖い」と懸念する。
  町内の飲食店に勤める女性(34)は「長い目で見れば、原発はなくすしかないと思う。事故の際の補償や避難など、分からないことや不安もある」と打ち明けた。
  大飯原発から30キロ圏内に住民の約7割に当たる約6万3千人が住む京都府舞鶴市。多々見良三(たたみ・りょうぞう)市長は5日の市議会で、再稼働に「安全判断は中立的な立場の専門機関から全く説明されていない。安全を徹底することが第一で電力が足りないから動かすというのは本末転倒だ」と話した。
  橋下徹(はしもと・とおる)大阪市長は14日、記者団に「再稼働は例外中の例外。暫定的な安全判断だと肝に銘じないといけない」と話し、夏限定の稼働を主張した。
 (2012年6月16日、共同通信)2012/06/16 14:26
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大飯原発「5層の防護」3層目まで 国際基準 程遠く
東京新聞2012年6月16日 夕刊
 大飯原発3、4号機の再稼働が決まった。野田首相らはしきりに安全性が確保されたと強調するが、国際的な安全基準の一部しか満たしていないのが現状だ。このまま再稼働に踏み切れば、国際基準から逸脱した形になる。

       

  国際原子力機関(IAEA)は、原発の安全性を保つため「五層の防護」という考え方を示している。
  五層の防護とは、故障や誤作動を防ぎ、地震や津波などに襲われても炉心溶融のような重大事故にならないよう備えをするのが一~三層目。事故が起きてしまった場合、いかに事故の被害を最小限に食い止め、住民を被ばくから守るかの備えをするのが四、五層目となる。
  大飯原発はどうか。非常用電源の多様化や建屋が浸水しにくいなどの安全向上策はある程度はできたが、それは三層目までのこと。事故が起きた後に重要となる四、五層目の対応は空手形というのが現状だ。
  ベント(排気)時に放射性物質の放出を最小限にするフィルターの設置、事故収束に当たる作業員を放射線から守る免震施設の整備などが四層目に当たり、適切に住民を避難させたり、内部被ばくを防ぐヨウ素剤を配ったりするのが五層目。
  しかし、四層目が達成されそうなのは三年後で、五層目はいつになるか、めども立っていない。
  原発外で対策拠点となるオフサイトセンターは、いまだに見直し作業の最中。モニタリングポストなど広域に放射線量を監視する体制も整っておらず、福井県の避難計画も近隣の他府県との連携を考えない硬直化した内容のままだ。
  首相らは「福島のような津波と地震が襲っても事故は防げる」と胸を張るが、国際基準に照らせば、重要な対策がすっぽり抜け落ちている。(福田真悟)
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<来栖の独白2012/6/17 Sun.>
 私たちは、なんという凶悪な犯罪集団を内閣として戴いたことだろう。福島第1原発事故の何も解明されないうちに、野田内閣は大飯原発再稼働を決めた。安全対策が講じられるのは、数年後だ。財務省に操られて再稼働を決め「責任は私がとる」と野田総理は言う。が、凶悪殺人という犯罪の責任を取ることのできる人間など、この世にいない。奪った命や失われた時間を償って元に戻せる、つまり責任を取ることのできる人間などいない。被災した福島の皆さん、そして世界は、野田総理のこの仕業を何と見るだろう。嘆きが伝わってくるようだ。「日本という国は・・・」という驚きの声が聞こえるようだ。
 野田執行部と自民党との連立政権は大飯再稼働と同時に、今一つ、消費税増税という凶悪法案を事実上成立させた。
 最も重んじられねばならぬ命や生活が、松下政経塾お得意の舌先三寸で鴻毛の軽きに扱われた。 
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大飯原発/「福島」と同じ大混乱を招く恐れ/いざ事故が起きたときの肝心の対策がほとんど改善されていない 2012-04-12 | 地震/原発/政治 
 
     

大飯 遅れる防災 OFC改善未定 ヨウ素剤確保も
東京新聞2012年4月12日 朝刊
 政府は原発の再稼働に向け突き進むが、関西電力大飯(おおい)原発(福井県おおい町)をめぐっては、いざ事故が起きたときの対策拠点の見直しや被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を住民にどう配るかなど、肝心の対策がほとんど改善されていないことが本紙の取材で分かった。こんな状況で再稼働させ、事故が起きれば、東京電力福島第一原発事故時と同じような大混乱を招く恐れがある。
 まず問題なのは、住民の避難など対応策を決めるオフサイトセンター(OFC)をどうするかが決まっていない点だ。
 福島の事故ではOFCが原発から五キロと近すぎ、放射性物質への防護も不十分で使い物にならなかった。大飯原発のOFCは原発から八キロで、敷地の高さは海抜わずか二メートル。仮に原発が津波に耐えても、OFCが水没する可能性が高い。
 ここが使えなかった場合は、関電高浜原発(福井県高浜町)のOFCを使うことになっているが、こちらも海抜四メートルにある。
 福井県の担当者は「両方のOFCがだめになっても、まだ敦賀、美浜両原発の二つのOFCが県内にはある。万一のときはそのどちらかを使うことも考えられる」とする。
 確かにこれら二つは海抜十数メートルにあり、津波には耐えられるかもしれないが、県内四つのOFCとも放射性物質を除去するフィルターはなく、非常用電源も十五時間しか使えない。外部電源が失われれば、ただのコンクリートの箱と化す。
 県の担当者は、国のOFCの見直し方針が定まっていないことを理由にしているが、これらの弱点は福島事故から一年以上過ぎてもまったく改善されていなかった。
 一方、事故の影響は当初の想定より大幅に広かったことを受け、重点的に防災対策を実施する区域が、従来の八~十キロ圏から三十キロ圏にまで拡大されることが固まっている。
 しかし、内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の備蓄や配布計画の作成は進んでいない。
 福井県は原発がある市町以外にもヨウ素剤を確保することを決めたものの、肝心の追加分のヨウ素剤は確保されていない。二万二千人分は確保されているが、区域拡大に伴って対象人数も膨れあがるため、二十二万八千人分が不足している。
 大飯原発の三十キロ圏には滋賀県や京都府が新たに入るが、ヨウ素剤はまだ確保されていない。
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大飯原発 許されない政治の安全軽視 再稼働後、福島第1原発のような重大事故が仮に起きたら 2012-04-07 | 地震/原発/政治 

             

大飯再稼働、重要対策 電力会社任せ 
2012年4月7日 02時00分
 野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら3閣僚は6日、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題を協議し、再稼働を認める際の新しい安全基準を正式に決定した。ただ、格納容器のベント(排気)時に放射性物質を取り除くフィルターの設置など重要な対策でも、先送りを認め、期限は電力会社任せとなった。
 政府は6日、関電に対し、時間がかかる対策は実施時期や方法を記した工程表を作成するよう指示。経済産業省原子力安全・保安院が関電からの報告を検証し、再度、首相や閣僚が協議する。安全と判断されれば、枝野氏が福井県を訪問して説明する。
 基準は、非常用電源車配備など緊急安全対策を実施(基準1)▽安全評価(ストレステスト)の1次評価で、東京電力福島第1原発を襲った地震・津波に耐えられると政府が確認(基準2)▽福島事故を踏まえた30項目の対策を、事業者が実施する計画を明示(基準3)-の3点が柱になっている。
 政府は、大飯原発は基準1、2はおおむね満たすが、3は不足している部分が多いと判断している。不足分とは、作業員を被ばくから守る免震施設の整備や、原発の熱を海に逃がすための海水ポンプを守る対策など。
 政府は最終的にはこれらも実施するよう電力会社に求めるが、再稼働の段階では間に合わないため、実施計画を示すことで地元の理解を得る狙いだ。
 だが、いつまでに全ての対策を実施すればいいのかは不明。枝野氏は「実現可能な最大のスピードでやっていただく」と述べるにとどまった。計画が妥当かどうか判断する基準も「一律には設けられない」とした。
 政府は「現行法令上の規制を超える安全性の確保を事業者に対して求める」と安全性重視の姿勢をアピールする。つまり法的な根拠がなく、実施されるかどうかは政府の取り組みいかんにかかっている。
 再稼働後、福島第1原発のような重大事故が仮に起きた場合の責任には「政治責任は(首相ら)4人が負う」と強調した。
(中日新聞)
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大飯再稼働 即席で国民を守れるか
2012年4月7日中日新聞 社説
 大飯原発3、4号機(福井県おおい町)再稼働条件の新安全基準は、わずか二日で作った「即席」だ。暫定とはいえ福島原発事故後の緊急対策の域を出ない。国民の安全を守れるとは到底思えない。
 福島第一原発事故拡大の原因者ともいえる経済産業省原子力安全・保安院が、いくらたたき台があるといっても、たった二日で作ってしまう。それを見て「安心しろ」という方に無理がある。
 これが野田佳彦首相のいう「納得いくまで徹底的に議論した結果」とすれば、首相と三閣僚は政治家としての資質さえ、疑われても仕方がない。国民の安全最優先が、政治家の務めである。それを軽視するにもほどがある。
 なぜ、こうまでして再稼働を急ぐのか。
 五月五日に北海道電力泊原発3号機が定期検査に入り、国内五十四基の原発が初めて全停止する。「原発なき社会」の実現を、よほど避けたい、その可能性を見せたくないとしか思えない。
 もし、これほど急を要する事態が起きているのなら、その理由をまず国民に、わかりやすく説明するのが先だ。
 枝野幸男経産相は「(大飯以外は)電力需給も再稼働の判断材料にする」という。なぜ大飯は例外なのか。
 新基準といっても、ほとんど通り一遍の電源確保と緊急冷却対策程度である。大けがにばんそうこうをはり付けたぐらいの応急措置で、再稼働の実績づくりをひたすら急ぐ。
 費用と時間のかかる大規模な対策は、何かと理由を付けて先送りした。事故対応の拠点になる免震施設の完成は四年先。これがなければ福島原発事故の被害はさらに拡大したといわれる重要な施設である。原子力安全委も、必要性を強く訴えていたではないか。
 爆発を避けるため原子炉格納容器の圧力を下げる排気(ベント)時のフィルター設置も、除外してしまった。防潮堤のかさ上げが不十分、非常時のアクセス道路に問題があるという重大な指摘も考慮されていない。断層の連動による地震規模の引き上げが進む。敦賀半島が四年先まで大地震に襲われないという保証はない。
 繰り返す。少なくとも国会事故調の提言が出て独立の規制機関が動きだすまでは、原発の再稼働を判断するべきではない。さもないと、政治に対する国民の信頼は本当に地に落ちる。
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<来栖の独白2012/4/7 Sat.>
 再稼働後、福島第1原発のような重大事故が仮に起きた場合の責任には「政治責任は(首相ら)4人が負う」と強調したが、命を始め、人間には背負いきれぬ責任、返しきれぬ喪失、哀しみ、絶望、不信だ。「責任はとれない」、これが人間の性なのだ。命に対する責任は、とれない。政治生命などという安い「クビ」とは、違う。野田さん、あなたが総理を辞める、それがどれほどのもんですか。財務省、大企業に踊らされ、政権は、狂ってしまった。
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「再稼働前提」耐震性強く見せかけ? 再稼働にこだわる政府が関電の数字を十分な検証もせず 2012-04-05 | 地震/原発
 大飯原発1次評価に疑問点 制御棒の挿入 急に時間短縮
中日新聞《特 報》2012/4/4 Wed.
 関西電力大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の再稼働について、内閣府原子力安全委員会は経済産業省原子力安全・保安院が妥当と判断した安全評価(ストレステスト)一次評価を了承したが、関電作成の資料に従来、保安院が認めていない数値が示されていたことが分かった。地震発生時、原発を停止するための制御棒が挿入されるまでの時間で、従来の「2・16秒」ではなく、「1・88秒」とするデータを「参考情報」として原子力安全委員会の検討会に提示していた。安全性に関わる重要な要素だけに、地元の反対派などは「耐震偽装に等しい」と批判している。(小栗康之、中山洋子)
耐震性強く見せかけ? 関電は否定
 大飯3、4号機の一次評価は、これまでも繰り返しチェックのずさんさが指摘されてきた。
 安全評価は再稼働の条件として昨年七月に導入され、その一次評価は地震や津波への余裕を調べる。ただ、原子力安全委の班目春樹委員長は「安全性の評価としては不十分」と発言。テストの拙速さは、政府内でさえ批判の声がある。
 基準地震動(最大の揺れ)については「1・8倍まで耐えられる」とされているが、保安院の意見聴取会でも、メンバーから冷却器などを固定する基礎ボルトなどに「1・8倍」も余裕がない場所が多くあるという指摘が出されていた。
 そうした中、再び大きな疑問が浮上した。先月13日の原子力安全委の総合的評価検討会で、地震時に原子炉を止める制御棒の挿入時間が「1・88秒」と記された資料が配布されていた。
 3、4号機での制御棒挿入時間は国が「2・2秒」を超えてはならないと定めている。2007年の新潟県中越沖地震後の新耐震指針に照らした耐震安全性評価で、関電は「2・16秒」と報告。保安院も審議会を経て、2010年11月にこの値を了承していた。
 なぜ、「2・16秒」が、安全評価の資料で唐突に「1・88秒」と短縮されていたのか。
 その意図を探るために制御棒とは何か、という点から確認してみる。
 制御棒とは、中性子を吸収して核分裂反応を抑えるための装置。原子炉を停止させるときに燃料棒の間に挿入する。緊急時には全制御棒が挿入されて原子炉が自動停止することになっている。
 その挿入時間のわずかな違いに大きな意味はあるのか。元原子炉格納容器設計者で、芝浦工大の後藤政志非常勤講師は「制御棒は原発を止めるブレーキに当たる。挿入時間を守ることは極めて重要なルール。守られないならば運転する資格はない」と説明。井野博満・東大名誉教授(金属材料学)も「核燃料の被覆管は秒単位で溶けだす。地震の際は揺れて、遅れれば遅れるほど入りにくくなる」と語る。
 すなわち、安全面では極めて重要な値だ。それが従来、審議会で認められてきた値より、小さく公表された。理由は地震の想定にありそうだ。
 関電が大飯原発の耐震設計で想定するのは、海側の2つの活断層の連動のみ。東側の陸にあるもう一つの活断層は「連動しない」としてきた。この2つの活断層の連動を想定して出した数字が「2・16秒」だった。
■「再稼働前提」
 ところが、福島の事故後、揺れが大きくなる三連動も想定すべきだという声が強まった。二つの連動で「2・16秒」が出てくる計算式だと、三連動なら許容値「2・2秒」を超え、運転できなくなる可能性が高い。
 「なぜ、関西電力は1・88秒という値を出してきたのか。まず、再稼働ありきのやり方だ」
 元大阪府立大講師で、「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)」の小山英之代表はそう憤る。
 保安院は「1・88秒」を先月13日の原子力安全委員会の検討会に「参考情報」として提出した。しかし、この関電側の計算が適切なのかどうか、保安院が審査した形跡はない。
 再稼働に反対する市民団体などは、関電と政府側が連携し、三連動が問題になっても、乗り越えられる都合のいい数字を出してきたのでは、という疑いを強めている。
 保安院の意見聴取会メンバーでもある井野名誉教授も「数字の根拠を示す報告は出ていない。別の解析方法による値と推測されるが、おそらく余裕を値切っている。安全性を重視しての数字とは思えず、この時期の唐突な提示は三連動を視野に入れた数字と疑われても仕方がない」と話す。
 もちろん、関電も政府側もこうした見方を強く否定する。関電は数字が「短縮」された理由について「より詳細な検査の結果、得られた数字」(関電・駒井秀行・広報グループ員)として、恣意的な計算ではないと強調する。
 「2・16秒は2007年の中越沖地震を踏まえて、国に早期に耐震見直しを中間報告する必要があったため、簡易な方法で算出したが、その後、制御棒のモデルを実際に揺らして、落とすなどのテストも行った結果、1・88秒となった」
 保安院側は、現時点での正式な挿入時間はあくまで「2・16秒」と解説。にもかかわらず、「1・88秒」を「参考情報」として示したのは「関電側の1・88秒の説明が、おかしな根拠によるものではないと考えたため」(田口達也・保安院原子力安全技術基盤課長補佐)と言う。
 「妥当性については確認していない」(今月3日公表の政府答弁書)が「参考情報」として示したという説明では、関電の主張を保安院側が「うのみ」にしたとの批判はぬぐえない。
 さらに数字の疑惑は別にもある。活断層が三連動したと想定した場合の揺れの大きさだ。
 保安院の地震・津波に関する意見聴取会では、メンバーから「三連動を考えた方がいい」とする意見が続出した。
 指摘を受けた関電は先月12日の意見聴取会に、三連動での地震の揺れを760ガルとする試算を示した。従来の二つの連動の揺れは700ガルで60ガル増えただけだが、保安院も28日にこの値を「妥当」とした。
 だが、石橋克彦神戸大名誉教授は昨秋、東京新聞への寄稿文で「(三連動だと)地震動は1260ガルを超す可能性がある」と指摘。「美浜の会」などは震動の予測には二つの計算式があり、「三連動で760ガル」を導いた計算式は、二つの連動で700ガルとした従来の計算式とは別の方式だとして、数字の信頼性に疑義を示している。
 再稼働にこだわる政府が、関電の数字を十分な検証もせず、むしろ、再稼働にとって好都合とばかりに「採用」するようなことをすれば、国民の疑念は深まり、再稼働への逆風はさらに強まることは間違いない。
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政府、早期再稼働を優先「地元の同意不要」/大飯 ベント対策など、再稼働是非の暫定基準に含めない方針 2012-04-05 | 地震/原発 
 原発安全基準を決定=大飯再稼働に適用、判断は週明け以降
2012年4月6日20:36 JST
 野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら3閣僚は6日夕、原発再稼働の関係閣僚会合を首相官邸で開催し、運転再開を判断するための安全基準を最終決定した。新たな基準は関西電力大飯原発(福井県おおい町)の3、4号機に適用する。枝野経産相は会合後、首相官邸で記者会見し、同原発の再稼働について「判断は週明け以降に行う」と語った。
 枝野経産相はまた、関電に対し、安全対策の実施計画の提出や事業への取り組み姿勢の報告を求める考えを表明。全電源喪失の防止策などで、地元を説得できるだけの安全性が確保されているかを確認する。 
[時事通信社]
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原発再稼働、地元同意義務ない
 藤村官房長官
2012年4月5日 15時17分
 藤村修官房長官は5日午前の記者会見で、定期検査により停止中の原発の再稼働に関し、地元の同意は必ずしも前提条件にならないとの認識を示した。「法律などの枠組みで同意が義務付けられているわけではない」と述べた。これまで原発の再稼働には地元の同意が必要としてきた姿勢を軌道修正した形で、原発の地元や周辺自治体などの反発は必至だ。
 政府は、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に向けた手続きを進めているが、周辺自治体が反対・慎重な立場を崩していないためとみられる。法律上の「同意」は不要との立場を強調し、再稼働実現への地ならしを図る狙いがあるようだ。(共同)
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ベント対策など除外 大飯 早期再稼働を優先
中日新聞 2012年4月5日 朝刊1面
 政府は四日、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題で、格納容器の圧力を下げるベント(排気)時に放射性物質を取り除くフィルターの設置など時間がかかる対策は、再稼働の是非を判断する暫定基準に含めない方針を固めた。非常用電源車の配備や建屋内の浸水対策などが進んでいることを強調し、フィルターなどは中期的に取り組むことを説明することで、理解を求めていく。
 暫定基準は、大飯原発がある福井県やおおい町が要望しており、野田佳彦首相が三日の関係三閣僚との会合で策定を指示。藤村修官房長官は四日の記者会見で、基準の策定について「一日二日、相当鉢巻きを巻いてやる」と話し、経済産業省原子力安全・保安院が検討を進めている。
 保安院は、東京電力福島第一原発事故を踏まえ、全電源喪失や冷却設備の機能喪失にならないよう三十項目からなる報告書をまとめている。基準はこれがベースになる。
 再稼働の条件となる安全評価(ストレステスト)の一次評価が進む大飯原発や四国電力伊方3号機は比較的新しい上に、福島第一原発に比べると格納容器が大きく、圧力が高まりにくいため安全性は高いとされる。非常用電源車の配備や、炉心への代替注水機能の確保などの対策も既に終わっている。ただ、ベントフィルターの設置や緊急時に大量の作業員が寝泊まりできる免震施設の建設など時間がかかる対策も残っている。これらをすべて満たすには「少なくとも三、四年はかかる」(保安院幹部)という。
 フィルター設置なども暫定基準に含めてしまうと、再稼働の時期が大幅に遅れることになる。このため、政府は三十項目のうち多くの安全対策が進んでいることを確認し、残る対策も計画が進んでいることをアピールしていく考え。
 ただ、原子力安全委員会が「一次評価だけでは不十分」と疑問を投げかけ、免震施設の重要性を強く訴えている。こうした中、骨抜きとも受け取れる基準で政府が再稼働を認めようとすれば、地元を含め広く反発が出る可能性もある。
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大飯原発 机上の安全 再稼働のために政府と関電が示し合わせ “泥縄”基準/政治主導をはき違えた「拙速」 2012-04-10 | 地震/原発/政治
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再稼働ありき/危険が大きい浜岡だけを止めて国民の目をそらし、他の原発を再稼働へ導く経産省のシナリオ 2012-04-12 | 地震/原発/政治


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