いじめ、孤立、後輩からも呼び捨て… PC遠隔操作事件 片山祐輔被告 “心の闇” 東京地裁 11、12回公判

2014-07-13 | 社会

【法廷から】いじめ、孤立、後輩からも呼び捨て…、PC遠隔操作片山被告 “心の闇”の原点とは
 産経ニュース2014.7.12 18:00 
 無罪主張から一転、「真犯人」を装ったメールが自作自演だったことが発覚し、起訴内容を認めたパソコン(PC)遠隔操作ウイルス事件の片山祐輔被告(32)。彼はなぜ、平然と嘘をつき、犯行を否認し続けたのか-。東京地裁での第11、12回公判には、片山被告によるPC遠隔操作で誤認逮捕されたり、犯行予告を受けて対応に追われたりした被害者4人が情状証人として出廷。被害の深刻さを訴える声を本人に直接聞かせた上で、被告人質問が行われた。それは、身勝手な犯行に及び、弁護人らもだまし続けた片山被告の“心の闇”を探る作業でもあった。(山田泰弘)
*誤認逮捕の男性「被告は反省していない」
 7月9日に開かれた第12回公判では、大阪市に大量殺人予告メールを送信したとして平成24年に大阪府警に誤認逮捕された男性が証人として出廷。検察官が男性に誤認逮捕前後の心境などを尋ねた。
 検察官「(逮捕前の事情聴取で)精神的負担があったということですが、どのような気持ちでしたか」
 男性「全く身に覚えがなく、真犯人が誰かということを突き止めたかった。しかし、手口が分からず『どういうことなのか』という気持ちでずっといました」
 検察官「逮捕されたときの心境は?」
 男性「信じられない気持ちでした。(事情聴取の後に真犯人につながる情報を)何か警察がつかんでくれていると思っていたので、その落差でショックが大きかった」
 「周りの人は信じてくれていましたが、その半面、PCに詳しい人が周りにいないかと、不本意ながら犯人捜しのようなことをせざるを得ない。人間関係を破壊しかねないと、そんな中で考えていました」
 男性はついたてで傍聴席からは見えない状態で証言。弁護側の席に座る片山被告からは、男性が見えるはずだが、自らがぬれぎぬを着せた相手の証言を無表情なままで聞いていた。
 それまで、当時の心境などを冷静に振り返っていた男性は、検察官から片山被告の犯行をどう思うか問われると、「犯行予告それ自体が卑劣で、それを(他人に)なりすましてやることで、二重にたちが悪い」と語気を強めた。
 さらに「逮捕後も無実の皮を被り、虚偽否認を続け、最後も言い訳できないから『やりました』ということで、反省の色が見られない。反省はしていないな、と思います」と指摘した。
*片山被告に求める刑は…
 片山被告は、24年6~9月に行われた、小学校襲撃や日本航空機爆破など9件の犯行予告と、ウイルスを6人のPCに感染させたとするウイルス供用罪で起訴された。片山被告が起訴内容をすべて認めたことで、残った争点は量刑。航空機爆破を予告したハイジャック防止法違反罪(運航阻害)の法定刑の上限は懲役10年だが、襲撃予告の威力業務妨害罪などと併合されると、最長で懲役15年を科すことができる。
 男性は量刑についても意見を述べた。
 検察官「ほかにはどのようなことを被告人に言いたいですか」
 男性「反省の有無は自分の問題としても、やってしまったことの責任はきっちり取っていただきたい。私の気持ちとしては、一生入っていてほしいが、それは難しそうなので、最大30年くらいは入っていて反省してほしい。複数の人の人生を変えているので、それぐらい当然だと思います」
 それまで男性の証言に反応を示していなかった片山被告。しかし、想像を超える厳しい言葉だったのか、上半身を揺らし、動揺した表情を見せた。
*ネットには友達がいた
 同日の被告人質問では、主任弁護人の佐藤博史弁護士が、片山被告の子供のころからの人格形成の経緯や、犯行に至った動機についての質問を重ねた。
 佐藤弁護士「あなたを診察した医師によると、小中学校時代から学校に居場所がなく、高校も自分のいるところではないと感じた。大学も面白くなかった。ただ、ネットでは尊敬され、居場所を見付けたとありますが、そうですか」
 片山被告「尊敬されたというか、ネットゲームでは友達がいました。現実には一人もいないのに…」
 佐藤弁護士「ネットの人とは実際に会ったりしましたか」
 片山被告「していないです」
 佐藤弁護士「でも親しい友達だと思っていた?」
 片山被告「はい」
 佐藤弁護士は、片山被告の人格形成の過程へと質問を進めていった。
 佐藤弁護士「中学ではいじめを受けたんですか」
 片山被告「はい。入学式直後から暴力を受けたり、物を隠されたりしました」
 佐藤弁護士「中学では水泳部でしたね」
 片山被告「自分では頑張っていると思っていましたが、記録が伸びず、なぜか後輩から自分だけ呼び捨てにされていました」
 佐藤弁護士「中学のころ、教師に言われたことで覚えているのは?」
 片山被告「『お前、何考えているのか分からない』と。当時から、こういう時にはこのような表情をすればよい、というようなことが分からないと自分でも気付いていました」
*犯行動機は仕事のストレス?
 片山被告は中学2、3年のころからゲームに熱中しだし、成績が下降。通っていたのは私立の中高一貫校で、高校には辛うじて内部進学したが、系列の大学には成績が足りず推薦入学できなかったという。
 別の大学に進学したが、「やはりというか、孤立してしまい、楽しいものではなかった」「グループで課題をこなす講義で組む人が作れず、単位を取得できなかった」。
 4年間通った後に中退し、IT技術を学ぶために専門学校に入り直したが、将来への希望は「あまり持ってはいなかった」などと、人間関係をうまく築くことができず、孤立を深めていった学生時代を振り返った。
 片山被告は専門学校に通っていた17年に大手レコード会社社長らへの連続殺害予告事件で逮捕、起訴され、実刑判決を受けて服役した。しかし、人間関係を作れない悩みは、「(服役中に)人付き合いや処世術、友達を作る方法をかなり身に付け、改善できた」と回想した。
 実際に出所後はIT関連会社への就職も果たしたが、仕事で嫌な思いをしたことについて問われると「いくつもある」と述べて、「事件を起こしたのは、ストレス解消の手段の一つだったかもしれない」と犯行の動機についても自ら分析した。
 6月20日に開かれた第11回公判でも、爆破予告を受けた日航機の機長ら被害者2人が証人出廷し、片山被告は被害者と初めて対面。被害者の証人尋問後に行われた被告人質問で、片山被告は「被害者の声を聞いて、多くの人に迷惑をかけていたと再確認した」と述べた。
 しかし、明確な謝罪の言葉はなく、「『真犯人』メールがばれなければ(良かった)という気持ちも捨てられず、(心が)揺れ動いている」とも話した。
 弁護側は片山被告の責任を認めた上で、「精神的な問題が犯行に深く関係していた可能性がある」などとして、情状面の精神鑑定を地裁に請求。検察側は却下を求めている。次回7月30日と8月7日の両期日にも引き続き被告人質問が行われ、犯行動機や虚偽の否認を続けた心境などについて片山被告が話す予定だ。
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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