深町尚哉(10歳時:嶺岸煌桜)は、熱を出して寝かされていた。
ここは尚哉の祖母 - 中島はるみ の家。
夏休みを過ごす予定だったが残念ながら熱のせいで、従兄:和也 - 生駒星汰 と
行くはずだったお祭りにも出かけることができなかった。
従兄に、赤い提灯のお祭りが楽しかったことを聞かされる。
祖母も枕元にやってきて
お爺ちゃんが生きていれば・・・お祭り張り切っていたわよねぇ。
そう言って、昨年亡くなった祖父がいないことを残念がる。
従兄は、ヒーローの赤いお面を尚哉に渡してくれた。
真夜中
眠っていた尚哉は、祭りの太鼓の音で目が覚める。
お祭り、まだやってる?
体調が少し良くなったし、せっかくだから見に行きたい。
音に誘われるように、太鼓の音を辿り畔に沿って裏山の神社へ歩いていく。
赤い提灯がいっぱい点いていて屋台もいっぱいあって、凄くにぎやかで楽しかった。
和也はそう言っていたが、提灯の色は青く、皆が無言でお面を被り
太鼓櫓の周りを踊っている。
不思議に思いながらも、和也にもらった赤いお面を被り祭りの中へ入っていこうとする尚哉。
こんなところで何をしている。
尚哉が振り返ると、そこにいたのは亡くなったはずの祖父だった。
祖父:尚哉、お前はここへ来ちゃだめだ。こんなところへ来ちゃいけなかったんだ。
代償は払わなければいけない。
尚哉:代償?
8年後、青和大学キャンパス
先輩学生たちが、新入生のサークル勧誘活動をしている。
尚哉(青和大学文学部の新入生)神宮寺 勇太 は、大学1年になっていた。
賑やかな学内を、一人で歩き出す尚哉。
(回想)
祖父:代償を払わなければいけない。お前はこれからの人生、一つ背負っていくことになる。
そういって、祖父は幼い尚哉の手をひき社殿の中へ入っていく。
201号教室 民俗学Ⅱの講義
(尚哉の声)
なぜこの講義を取ろうと思ったのか、よく覚えていない。たまたまその時間に他に取りたい講義が無かったのかもしれない。
新入生たちがざわついている。正面のスクリーンには、民俗学についてのスライドが上映されておりコックリさんや幽霊の絵が映し出されていた。
尚哉に話しかけてきたのは、難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太 うろ覚えの名前を羅列してくるので、尚哉はつけていたイヤホンを外し名前を名乗る。外した拍子に、学生たちの声が尚哉の耳に流れ込んでくる。
女子A:私こんなに仲良くなれそうな人初めて。
女子B:大学っていいよね、チョー楽しい。
女子C:(誘われて)ゴメン、その日バイトあるんだよね。
尚哉は、耳に違和感を感じているのか少し顔を背け始める。
(難波と話していた男女)
男子:高校では長距離の学内記録もっててさ。
女子:へぇ、すごーい。
尚哉の耳に届く声は、彼にどんどん不快感を与えているようだ。
女子D:ていうか、その服似合ってるよ。
女子E:昨日の飲み会楽しかったね。
会話を楽しむ学生たちから離れた席を目指して、耳をふさぎ苦しそうにする尚哉。
その様子を後ろから眺めている男性がいた。
スライドが祭囃子に切り替わると、驚いた顔でそれを見る尚哉。
一瞬、青い色の提灯を思い出している。
スクリーンが巻き上がり、
民俗学Ⅱへようこそ。
そう言って後ろの席にいた男性が壇上に向かって階段を降りてくる。
この授業を担当する准教授の高槻彰良(青和大学文学部の准教授)伊野尾 慧 です。
女子:先生?顔ツヨっ!
男子:イケメンだな。
スマホからまだ目を離さない難波に、高槻は民俗学についてスマホで検索するよう促す。
難波:民間伝承を素材として一般庶民の生活・文化の発展の歴史を研究する学問・・・です。
軽く礼を伝えながら、講義台へ向かう高槻。
高槻:中でも僕が興味を持っているのは、現代の怪談と言われる「都市伝説」です。怪異なんて、自分には関係ないと思っている人もいるかもしれない。高槻:でも、怪異は特別なものじゃない。日常と日常の間の非日常に潜んでいる。例えば「祭り」これこそ日常と日常の間の非日常だね。この授業は、皆の興味のある話題から進めたいと思っています。そこで、今まで聞いたことのある不思議な話について、簡単にレポートにまとめて授業の終わりに出して欲しい。(ざわつく学生に)難しく考える必要はないよ。(ボードにビミョーな口裂け女の絵を描く)例えば、これでもいい。口裂け女だ。
いや、それWAONのマークにしか見えませんがなっ!
ボードを見た学生たちは笑っており、尚哉も顔を少し横に向けて笑う。
(尚哉の声)
心の奥底で何かを求めていて、自分でも気づかずに引き寄せられたのかも知れない。
・・・この人に。
オープニング の6000文字超え!
雨降りの公園、トンネルを通り抜けようとすると小学生男子らしい子供 大河原智樹(第四小学校5年2組の児童) - 千葉新がうずくまっている。
通りがかった尚哉は、心配して声をかける。
尚哉:なんか怖いことでもあるの?
智樹:ねぇよ。
いきなりくらった不快感に、尚哉は顔を横に向ける。
尚哉:聞くよ。
智樹:コックリさんに連れていかれる。
尚哉:コックリさんて、占いとかするヤツ?
智樹:そいつが学校に出て、俺たちを連れてこうとしてる。どうせ嘘だと思ってんだろ。
諦め顔で、傘を拾い歩き出す智樹。いや、信じる。そう言った尚哉に、驚いて振り向く智樹。
一緒に歩きながら、クラスで怖がっている様子を聞く尚哉。
智樹の 俺は怖くないけどさ。 という強がりがなんだか可愛く思えた。
団地の前で、智樹の母親-吹越ともみ が待っていた。
遅くなった智樹を叱る母親に、尚哉はコックリさんを怖がっている話をするが、母親は息子が他人の気を引こうとウソを言ったのだろうという。尚哉は、智樹が嘘を言っているわけではない、本当に怖がっているので話を聞いてやって欲しいと頼む。母親は何を根拠にそんなことを言うのかと、とりあってくれずに智樹を家へ連れ帰って行くのだった。
子供の頃の尚哉の回想
尚哉は橋の上で、母親- 小林さやか に「誰かが嘘をつくと声がグニャっと曲がるからわかる。」と伝えるのだが、母親は怒って尚哉をなじるだけで信用してもらえなかった。
そのことを思い出した尚哉は、団地をあとに戻っていった。
高槻の研究室(尚哉の声で、彼の書いたレポートが読み上げられる)
これは噂で聞いた話です。ある少年が青い提灯の祭りに迷い込んだそうです。その祭りでは全員がお面をつけていて、無言で踊っていて、亡くなったばかりの少年のおじいさんがいました。その祭りから帰った後、少年は他人の嘘が判るようになってしまったそうです。/ 深町尚哉
他人の嘘が判るようになってしまった・・・か。高槻は、そのレポートを読んで何か思いを巡らせているようだった。
折角だから第1話は、惜しんで起しています。今回はその1ということで、ここまで。12:09
大河原智樹(第四小学校5年2組の児童) - 千葉新
大河原(智樹の母) - 吹越ともみ
尚哉の祖父 - 吉満寛人(第4話)
尚哉の祖母 - 中島はるみ
尚哉の母 - 小林さやか
和也 - 生駒星汰