高槻の実家で
門の前で叫ぶ尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太 へ歩み寄る
寺内(高槻を「天狗様」と呼ぶ、謎のフリーカメラマン)-小池徹平
止められると思う?本気で・・・。
高槻先生に、何をさせるつもりなんですか。
そのとき、屋敷の上を数羽のカラスが鳴きながら飛び去っていくのを見た尚哉。
鳥を恐れる高槻と違い、何事もなく微笑んでいる寺内に驚く。
鳥が・・・怖くない。
僕は、翼があるものは友達だと思ってる。
それは、天狗のこと?
(ハッ)まさか覚えてるんですか!(神隠しにあったとき)何があったか。
先生よりは。
高槻と違い、神隠しに遭った時の記憶があるという寺内に、戸惑う尚哉。
どうした、用が無いなら行くよ。
そう言って尚哉に背を向け、屋敷に戻ろうとする。
俺も、神隠しに遭いたかった。
(そのまま立ち止まり、高槻に出会うまでの彼のこれまでの暮らしを想う寺内)
嘘が判るようになったとき、皆に気味悪がられて学校にも家にも居場所がなかったから。
貴方がやってることは、誰かを助けてると思う。
でも、どうして先生を誘うんですか。
貴方も孤独だから?
そんなわけない。
いつも不快に思う歪んだ声が、このときは悲しく歪んだように思える。
俺には、嘘が判る。
振り向く寺内、
心配してくれなくても、僕には仲間がいる。
そう言い残して、寺内は戻って行った。
高槻の研究室で
生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 が何かを作っている。
自分の代わりに高槻に持って行って欲しいと、赤い紐で「梅結び」を作っていたのだ。
意味は、運命向上と固い絆。
そして、魔除け。
先生、気をつけて と、できあがった梅結びを、高槻に渡す生方。
受け取った高槻は、礼を述べたあと眺めた梅結びをそっと胸元へしまうのだった。
オープニング
高槻が12歳の頃、神隠しに遭う前に家族旅行で訪れたという旅館、金具屋。
高槻・尚哉・健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠 がやってくる。
従業員たちが出迎え、女将が挨拶に現れた。
案内されたあと、貸切露天風呂で高槻は
女将に、池には入っていけないと注意されたことを健司たちに伝える。
子どもの頃、それを破って山の主に会ったのかもしれないという高槻。
しかし、子どもの頃の高槻を知っている健司は、そんな注意をされたら
大人しく従うであろうことが分かっているため、その言葉を鵜呑みにはできないといった様子だ。
確かに、それもそうだね。我ながら納得したという顔で、高槻は先に湯から上がる。
続いて尚哉が風呂から出て行く。
浴衣姿で廊下を歩き、部屋に戻る二人。
この前、実家に行ったんだって?
あ、はい。
父の秘書が知らせてきた。
「先生を天狗様にしないで、俺が止める。」って、叫んでたって。
(先生、正確には「俺が・・・俺が止める。絶体に!」です。)
先生を天狗様にされちゃったら困るから、騒いでたら寺内が何処かで見てて、来るかもなって・・・。
深町君は、優しいうえに頼りになるね。
もじもじとする尚哉を残し、高槻は先に部屋へと歩き出していった。
(一人、大沼池のほとりを歩く寺内)
寺内は孤独なんです。
僕には仲間がいる・・・とも言ってましたけど、たぶん先生に認めて欲しいんじゃないかなと思います。
(立ち止まり、尚哉を振り返る)
待って、寺内は仲間がいるって言ったの?
はい。
それだ。
(大沼池に入っていく寺内、子供の頃もそうしたように。)
部屋で待つ2人に、健司が遠山(千葉県警広報官・尚哉より先に同じ怪異を体験している)-今井朋彦 から
送ってもらった資料を印刷して戻って来る。
(バス停付近の防犯カメラの映像を静止画で印刷したもの。)
バスに乗る前の千里ちゃん(行方不明になった4歳の女の子)永尾柚乃
隣にいる男性がこの人だ。
健司が貼った行方不明者の付箋。そこには「増村幸浩(35)農業 6月21日失踪 茨城県つくば市」 と書かれている。
あの森の中の建物で、食料を買い出しに行ったり、千里ちゃん両親の様子を探っていた男性だ。
そして、バスのカメラに撮影された千里ちゃんより先に降りたサラリーマン風の男性の静止画は
健司の付箋に「遠藤哲生(48)建設業 6月18日失踪 青森県十和田市」とある。
(バスを降りた後の)千里ちゃんの横を歩いている女性が、栗本小春(青和大学の食堂の栄養士・『百物語』の参加者 行方不明後鞍馬で発見) - 田辺桃子 だ。(栗本小春(26)主婦 6月14日失踪 千葉県千葉市 と付箋に書かれている。)
尚哉:本当だ。
これは、講(こう)なんだよ。(ぇ、先生いつもの「こう」ですか?←(殴)
尚哉:こう?
簡単に言うと、同じ目的を持ったグループだね。
高槻は、健司の封筒にペンで「講」という漢字を書く。(あれですよ、女人講とか。)
江戸時代に「お伊勢参り」や富士山にお参りするのが流行ったんだけど、経済力が無い人はその夢を叶えることができなかった。
だから、皆でお金やお米を出し合って、代表者をお参りに送り出したんだ。
尚哉:代表者だけ。
その代わり、代表者は送り出した人全員の願いが叶うようお参りをする。
健司:寺内も神隠しを実行するグループを作ってるってことか。
そう、神隠しに遭いたい人が、別の神隠し志願者を助ける。人によっては、泊まる場所やお金を提供しているんだと思う。
尚哉は、小春が鞍馬で発見されたあと「記憶はありません。」と答えていたことを思い出している。
それで皆でその秘密を守ってる。
一人じゃできないことも、力を出し合えば可能になる。一人で友達を救えなかった少年が、考え出した方法だ。
千里ちゃんの家のアパート
両親の長谷部康介(千里の父親)武田航平、長谷部麗子(千里の母親)佐藤めぐみ が外出先から戻って来る。
アパートの郵便受けに、差出人のない手紙が入れられていたことに気づく母親。
中を読んで「えっ」と驚く、そこには
千里ちゃんを渡して欲しければ
大沼池まで来い
来なければ警察に知らせる
と書かれていた。
「警察に知らせる」この言葉は、両親が千里ちゃんに何をしていたかを分かっている人物からのものだと理解した。
旅館の部屋で、高槻は子どもの頃(幼少期)髙橋來、大沼池のほとりで父親である智彰(高槻の父)日比野玲 に
泣くな、高槻家に生まれて何が不満なんだ。
そう言って叱責され、泣いていたことを一人思い出していた。
尚哉は、談話室のようなところのソファーに健司と座り
寺内が自分が神隠しに遭ったときのことを覚えているようだと伝える。
驚いた健司が、そのことを高槻に話したかどうかを聞くと
首を横に振り、
思い出して、それが辛い過去だったら・・・って。
健司によると、高槻の父親は子供にやたらと厳しかったという。
(幼少期、父・母:清花(高槻の母)-高橋ひとみ・子供の3人が食事をしている。)
高槻が12歳になる頃には、もう家を継がせる準備をしていたらしく
彰良が楽しそうに笑うのは俺といるときぐらいだったよ。と言う健司。
何が言いたいかって言うとだな、あいつはもともと闘ってきてるから、どんな過去でも乗り越えるだろうってことだ。
だから、見届けてやろう。
同じ想いで、頷く尚哉。
その頃、女将が高槻の所へ手紙を預かったと言って届けに来た。
そこには、
天狗様
明日の明け方
大沼池で会いましょう
そう書かれていた。
翌日、前夜の雨を忘れたかのように、太陽が明るく山々を照らし始める。
明け方の大沼池は、その美しい青い水の上に靄(もや)がかかり、神秘的な姿を見せていた。
高槻たちが訪れると、そこには寺内がいた。
一人で来て欲しかったのにな。
背を向け、池を眺めたままつぶやく寺内。
しゅんや君のこと、残念だった。
その名前に、寺内は反応する。
神隠しの仕組みも分かったよ、講・・・なんだね。
でも君は一線を越えた、千里ちゃんを返すんだ。
何処に、あの酷い両親のところに?
健司:後は警察に任せろ。
警察にはヒントをやったのに、あいつらは未だ逮捕されないじゃないかっ!
先生、貴方なら解るはずだ、千里ちゃんには助けが必要だって、貴方と同じで。
何も言わない高槻に、しびれを切らしたように寺内は問いかける。
まだ思い出さないのか「ここから救い出して」と、あの人に願ったこと。
僕らは望んで特別になった。
だから使命を果たさなきゃ、天狗様。
そこへ、寺内からの手紙で呼び出された
千里ちゃんの両親がやってくる。
警察には知らせなかったんだな、どうして?
父親:千里はすぐにでも私たちに会いたいはずですから。
(尚哉、このウソツキがぁ。の表情。)
母親:警察には、落ち着いたら知らせます。
(尚哉、嫌ぁもうこの2人。と言った様子。)
尚哉の様子を見つめる高槻たち。
千里ちゃんの両親の空々しい言葉に、高槻は静かだが汚れたものを見るような目つきになる。
寺内は、高槻に
ねっ、こんな奴ら居なくなった方が、千里ちゃんは幸せに。
ゆっくりと両親の前に歩き出そうとした寺内より早く、高槻が前に出る。
何も語らず動き出した高槻に、先生?と尚哉が声をかけるが
高槻は、怒った様子で二人に話しかける。
千里ちゃんに暴力を振るったのか?
バツの悪い父親は顔を背けたまま、母親は下を向いている。
言え。
高槻の態度に、逆ギレした母親が
ちょっと、あなた何なのよっ!
そう声を荒げる。
そのとき、高槻の両目が青く光り、それに気づいた母親は恐れに腰を抜かす。
俺たちの子どもだ、何しようと勝手だろっ!
そういきがった父親も、高槻を見て驚く。
お前たちのモノじゃない。(怒)
高槻の行動に驚く尚哉たち。
彼が、父親の首に手をかけようとしたとき
やめろ。
そう言って、寺内が高槻を引き留めた。
それに気づいた高槻が手を降ろすと、千里ちゃんの両親はその場を走って逃げだす。
健司は 任せろ。と、2人を追いかける。
ね、君には人は殺せない。
寺内の方を見る高槻。
怒っていたのは本当のようだが、高槻は脅すフリをしていたのだ。
人を罰することなんてできない。
尚哉も、これまで理不尽な状況に置かれながらも、相手に何もできなかったことを思い出している。
寺内はそんな事を否定するように、違う と言うが高槻は言葉を続ける。
無理なんだ。
友達を助けることができなくて、自分を責めた。
優しい少年なんだから。
あのままじゃ何もできなかったから、特別になったんだ。
それしか方法がなかったから。
たったひとつの人生なのに、しゅんやがきっと生きたかった人生なのに。
そこから離れたい、休みたいって願う人が沢山いる。
人を平気で追い詰める人間がいるからだ。
そういう奴らを止めるには
恐ろしい天狗様が必要なんだ!
だから、僕らがそれになる。
僕も考えることがある。
多くの人が怪異を信じていた時代、人間以外の者を恐れ慎んでいた頃は良かったかもって。
でも、恐怖に頼らなくても人は救える。
小さい優しさとかだ。
僕も随分救われたよ。(ちらりと尚哉のいる方向を見る。)
寺内の前に歩み寄る高槻。
あのとき、助けてあげられなくてごめん。(驚きの表情をする寺内)
天狗様にならなくても、千里ちゃんは救える。
そう言って、寺内を抱きしめる高槻。
悲しみを振り払うために孤独と寂しさを抱えたまま、強さを求めていた寺内。
彼の目から涙がこぼれる。
自分が欲しかったのは、強い正義でも恐れられる力でもなく
孤独を包んでくれる温もりだったと気づく。
あの神秘の池を這うようにあった靄は、もう水面から消えていた。
警察署の前で
千里ちゃんを抱きかかえた寺内が、警察を訪れる。
立ち番をしている警察官に尋ねられ
行方不明になっていた長谷部千里ちゃんです。
僕が連れ去りました。
そう言って、千里ちゃんを降ろす。
寺内と見つめ合う千里ちゃんに、かがんだ彼は「かごめかごめ」を歌う。
続きが歌えるようになった千里ちゃんの頭をなでて
そう、困ったら羽のある人が助けに来る、きっと。
そう言い残し、千里ちゃんを置いて警察署に入っていく。
優しかった寺内との別れに、千里ちゃんは涙ぐんでいる。
大沼池近くのボードウォークで
高槻・生方・尚哉が歩いていく。
健司からの連絡で、長谷部夫婦が子供に暴力を振るっていたことを自供したらしいと
高槻に知らせが入る。
安心した表情の尚哉。
尚哉:よかった。
生方:解決した後でも、呼んでもらえて嬉しかったです。
無事に終えられたのは、これのおかげだから。
胸元にあった、あの梅結びを取り出す。
照れくさくなった生方は、二人より先に歩き出す。
さぁ、急ぎましょ。あ、天然露天風呂ですよ、しかも天狗の隠し湯。
天狗ぅ?(尚哉:え、あれだけ騒いだのにまた天狗なの?の表情。)
生方に早く来るように急かされ、後をついていく尚哉。
高槻との関係性に変化が起きても、生方との力関係だけは変わっていないらしい。
二人の様子に目を細めながら、高槻は揺れる木々の音に耳を澄ませる
自身が行方不明になった夜のことを思い出していた。
パジャマ姿で2階の部屋から出て1階に行き、庭に通じるガラス戸を開ける高槻少年。
強い風の吹く庭へ裸足で降りると、そのまま芝生の上を歩いていく。
木々を揺らして大きく吹く風に立ち止まり、屋敷の方角を振り返っている。
その風に攫われたかのように、彼の姿は庭から消えていた。
そうだった、あの時僕は望んで怪異に身を委ねた。
離れた先にいる生方が声をかけ、尚哉が駆け戻って来る。
先生、行きましょう。離れたらまた迷いますよ。
そう言って、高槻の手を取る。
青い提灯の祭りで、手を離さないでと連れていた尚哉が
今は自分の手を離さないでいてくれる。
この手があれば、互いは暗い場所に迷い戻ることはないだろう。
ありがとう。心の中でそう言わずにいられない高槻だった。
手を離さず駆け出す高槻。
尚哉も駆け出していく。
エンディング
終わりました。お疲れ。
結局健ちゃん仕込みの護身術は、一回も見られなかったよ(ぇ、そこ?
健ちゃんと、奥多摩の奇跡の少女の母を同時に見たのは
映画「クロスファイア」以来で、勝手にしみじみしてました。
あれから健ちゃんは、格闘技にいっちゃってたと聞いていたし久しぶり。
当時の「ゆう」くんから、「ひさし」くんに名前が変わってたんですね。
役柄なんだろうけど、優男風味からすっかりゴリゴリになられて、それはそれでステキ。
殿山くんとの出会いもあって、味わい深い作品でしたね。(デスヨネしららさん
そして何より、2は若干少なかったとはいえ、膨大な台詞量の伊野尾くん。
お疲れさまでした。
なかなかの字数で、文字数制限をくらうエントリーって初めてでした。
面白かったです。ありがとうございました。