かめ設計室*3丁目通信

2005年4月より、西新宿にて一級建築士事務所かめ設計室がはじまりました。3丁目からのかめバー通信。

町のひとと旅人の湯 西山温泉体験レポート

2005年11月17日 | 
山が赤く染まる11月、紅葉を期待しつつ山梨県早川町西山温泉に見学に行ってきました!

図面や模型、現場進行写真で出来上がるまでの姿を追ってきたので実物をみるのを楽しみにしていた。夕暮れの時間を狙って現地に到着。思っていた通り、いやそれ以上にこじんまりとした姿。かわいらしいさくら色の受付の小屋がちょこんとこちらをむいて迎えてくれている。そのうしろには、ぽん、ぽんと配置された、もみじとおんなじ色をした脱衣小屋と洗い場。
これらが放射状に散らばり、その合間をあか色の幕で仕切っている。色づいた山と渓流という贅沢な景色をちょっとお借りしますという感じに。
わたしたちは温泉ですっかり暖まり裸の姿で渓谷をのぞいたり、モミジを愛でたり、芝生にころがったりと楽しんだのでした。

日も暮れてくると地元の人たちが連れ立ってやってきて世間話をしながらこの場所を利用している。もみじが綺麗ネ~、あら去年のほうがすごかったのよ~、なんて。来年も再来年もこの場所で紅葉を見ることができるなんて少し羨ましいです。
なん

久田子の集落 秋の小旅行レポート

2005年11月17日 | 
早川に沿う道をはずれて山を越え谷を越え、さらに深い山の奥を進んでいくと、すり鉢のようなお椀型の土地に小さな集落があった。この集落へ行くためには「久田子四十七曲がり」と呼ばれているらしい絶壁の山に沿う細い道だけ。
周りをぐるりと山に囲われた小さな小さな盆地にわずか数件のトタン屋根の家がポツポツと存在する。集落の大きさはおよそ直径が100メートルほど。

先祖代々耕されただろう畑に家族必要なだけの野菜の種を撒き茶の木を育てて暮らしているようす。完全に自給自足は無理だろうけどこのお世辞にも便利とは言えない土地で彼らなりに暮らしが丸く納まっているのかな。家の周りにはその家族のための小さな畑があって家族の食べる分だけの白菜やお茶やネギやキャベツ、いろんなものが植えられていた。ちいさなおばあちゃんがせっせと畑を耕している。こうやって春や夏や秋や冬が回っているんだろう。

どうしたってこの山奥で暮らしていくのは不便だろうし過酷に思うのだけどなぜだか惹かれるものがある。
勝手だけどここでの暮らしはいつまでも変わらないでほしいと思ってしまう。
なん

流行建築通信8/うそ

2005年11月17日 | 流行建築通信
 折れた煙草の 吸いがらで
 あなたの嘘が わかるのよ

 子どもだった頃、この歌の世界が、僕にとってのあこがれの大人そのものだった。中条きよしの名曲「うそ」(1974年)の歌いだしである。こうして時代は徐々にさかのぼっていってしまう。
 JIA(建築家協会)主催の「かつて住宅には思想があった・大高正人が語る前川國男の住宅(自邸)」を聴講した。前川國男は戦中戦後を生き抜いた数少ない本物の建築家である。この歌と同じように、この時代の建築家にも大人の世界をいつも感じる。別にノスタルジーではない、ロマンティックなのかと言えばよくわからない。
 このあこがれは何だろうと思う。僕がその時代を知らないというどうしようもない事実。自分の知らない世界、体験できない世界はどうにも魅力的なのだから仕方ない。
 この講演会のタイトルに反して、大高さんの次の言葉が印象に残った。「前川自邸は前川さんそのものなんです」。これには進行役の阿部仁史氏も言葉を失った。つまり前川自邸は思想なんぞではなく、前川自身なのだと。これはよかった。以前、忌野清志郎が「清志郎さんにとってロックとは何ですか?」と聞かれた時に「俺そのものです」と答えていた。そう言い切れるだけの人間や建築がひとつの到達点かもしれないし、その態度にあこがれを感じているのかもしれない。