よりみち文化財

ちょっと寄り道して出会える、遺跡や石仏、史跡や鹿児島の田の神さぁを紹介

漆の田の神さぁ

2007年05月20日 | 田の神さぁ
鹿児島県蒲生町 漆下

山間部に広がる水田沿いの道端におられる田の神さぁ。
像高約108cmと、腰をかがめているにもかかわらず、どっしりとして大きな像で遠くからでもすぐにわかる。この重量感は豊作の年の豊かな実りを感じさせる。
シキをかぶり、袴を着けて右手にはメシゲを持っていることから、田の神舞(たのかんめ)を映した姿であるらしい。タスキをかけて膝を立てた姿は、正面からみると今にも踊りだしてきそうな雰囲気である。

像立の記念に建てたと思われる石碑が向かって右側にあり、梵字「キリーク」と「享保三天奉御田神講寄進戊戌十二月」という銘が刻まれている。
享保3年は西暦1718年にあたり、田の神像としては最も古いもののひとつということになる。
梵字「キリーク」は本来阿弥陀如来を表すもので、必ずしも田の神さぁを表すものではないが信仰の対象として仏像に対するのと同じ意識があったのだろうか。

いま、この田の神さぁが立っておられる場所は道沿いの川にかかる橋のたもとであるが、広大な水田を眺めるような高台に立つ姿も見てみたくなるような存在感がある。

県指定文化財(1968年3月29日指定)


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