よりみち文化財

ちょっと寄り道して出会える、遺跡や石仏、史跡や鹿児島の田の神さぁを紹介

熊野古道 中辺路 飯盛山

2011年10月02日 | 熊野古道

この先に展望台がある、との看板にはちょっとまわり道をしてでも登ってみたくなります。

熊野古道は尾根筋に沿ってずっと延びているところもありますが、木々に囲まれた中を歩き続けることになるために山登りとは違い眺めの良い場所というのがそれほど多くはありません。ただただ同じような風景が続くことも多くあります。しかしこの山中で相対的に標高が高い場所もあるので、そこにもし周りを眺められる場所があれば景色は良いはずです。


「飯盛山(めしもりやま)」の展望台は飯盛山山頂にあり、標高340.7mというのは数値だけみればそれほど高いわけではありませんが、周りを360度見渡せる場所で、これは確かに山中をひたすら歩いているという、実感があります。

道はそのまま古道へ合流することになりますので、展望台から登ってきたのと反対側へ降りれば良いだけです。

 

ところで、古道の途中には写真にあるような道しるべがあり、1からの番号が800mおきに連番で着けられていますから、どれくらい歩いたか、という目安にはなります。また、別の道に入ってしまわないよう、道が分かれているところには「ここは熊野古道ではありません」と一方の道に立て札が建てられていますので、分岐点に出くわしても、それほど迷うことはありません。

よりみち文化財 「熊野古道」記事

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熊野古道 中辺路 不寝王子社跡

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熊野古道 中辺路 剣ノ山経塚

2011年10月02日 | 熊野古道

不寝王子から20分ほど歩くと、剣ノ山(つるぎのやま)経塚跡に着きます。

現地の案内板によると、「この経塚跡は、教典を経筒に入れ、それを壺に納めて地中に埋めたところである」とあります。

その壺というのはいま熊野古道館に展示されている常滑焼の壺だそうですが、いったい、何のためににそのようなことをしたのか、と言えば当時の仏教の末法思想が背景にあって、こういった経塚はその頃貴族達によって盛んにつくられたようです。

現在、つくられた時が分かっている経塚のなかで最古のものは藤原道長による金峯山経塚です。ここから発見された「金銅藤原道長経筒」は一見、現在の茶筒のような感じですが、金銅製の立派なもの、国宝として有名なものです。銘文があり、金峯山経塚が寛弘4年(西暦1007年)に築かれたのものであることがそこから明らかとなっています。
また、熊野では那智山経塚(東牟婁郡那智勝浦町)が確認されています。

ちょうど、この時代は仏教で言う末法の世が始まるとされた時にあたるとされ(釈迦の死から1000年後にはその教典のみが伝えられる末法の世が始まるとされ、日本では1052年が末法の始まる年と信じられた)、その後の、教えが全く失われてしまうという56億7千万年後の世界まで教典を残すことで釈迦の教えを伝えようとしたものと考えられています。

納められた教典は法華経が最も多く、ほかには般若心経等多くの教典が埋納されたことがわかっています。教典は銅板に刻まれたものもあったそうですが、紙に写されたものを遙か未来まで残すのはさすがに至難の業でしょう。

しかし時が経つにつれて、このような経塚の造営はやがて、功徳を積む行為として行われることが多くなっていったようです。今でも道ばたに「一字一石経」や「大乗妙典経」、「大乗妙典経~千部」といった石碑を見かけることがありますが、こういった、後世の教典を地中に納めたり、読経供養をする行為とつながるものが有るのかもしれません。大乗妙典経というのは法華経のことだそうです。

案内板にはさらに、「ここから熊野本宮へかけて九品の門が建ち、ここには最初の下品下生の門があったと言われる。」

とあります。

つまりここから熊野まで九つの門が建ち、ここにあったのはその1番目の門である、ということで、ここまでかなり苦しい道のりであったものの、まだ先は長いようです。
しかし当時、京から歩いてきた者にとっては、ここでようやく熊野の山に入ったことを実感する、というものだったのでしょうか。
今は、その門は存在しません。

この経塚跡には小さな石が積まれています。周りに置かれているやや大きめの石は苔むしていて確かに古そうに見えますが、これらの小さな石は最近になって積まれたもののように見えます。
元々、滝尻王子社跡に現在建てられている笠塔婆がここにあったものと推定されていますから、こういった石積みも当初からあったものかどうか、わかりません。

木の根を辿る古道

 

 

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