きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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奇術      田添明美

2021年05月28日 10時28分42秒 | 「いたずら」田添明美

二十才の頃 荻窪の「邪宗門」
という喫茶店で バイトをした
そこは非常に狭い店で
二階には 鏡が壁一面並んでいて
毎日拭きあげるのに苦労した
二階の天井を引くと 梯子が下りてきて
彼らは 天井裏に住んでいた

閉所恐怖症なので
ドアを開き よく外へ飛び出した

癖のあるマスターは
私を可愛がってくれ
ジャズを私に教えようとし
大切なレコードに 針を下ろすこともさせたが
私は ぼとんっ と落としてしまい うろたえた
彼は奇術もしており 披露した
「マジックは、嘘だと思います」
という二十才の私を 叱責した

(あなたは舞台に立てば 輝く人だ)
と妙なことも 言った

この頃 父が一度目の癌になった
珍しく 定時より早く出向くと
常に 着物姿だった
マスターの癖のある奥さんが
床まで届く 髪をおろし
 大塚さんって 私嫌いよ)と言っていた
 あの子の笑顔はいいよ) とマスターは応えた
彼女の髪を 梳きながら

私はたまらず
(父が癌になりましたので、辞めさせて頂きます
とそこを辞した

結婚後
「邪宗門」を見にいくと
店の右脇に 小さく
(日本奇術会会長)とあった

彼は、極めたんだなと思った

ほろ苦い 思い出だ


             R3.5.13

 

明美22才(ムクさんと)

付記

この写真を後から出したのは、夫に邪宗門の話をしたら(当時の写真を持っている)と、当時5~10枚の白黒写真を送ったら、夫はそれをアルバムにしていて(22才の明美丸)という題名で現存し、
二人で(邪宗門用は、どれがいいか)検討し。
これに、決めました。
夫が(明美は、この写真は、お兄さんが撮ったと言った)と記憶していたので、
私の視線は、兄に向けられていた訳で、懐かしく思いました。

 


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2 コメント

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Unknown (LM)
2021-06-03 14:09:02
お兄さんは写真のセンスがいいですね。ローアングルで撮るなんて、なかなか考えないと思う。
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Unknown (田添明美)
2021-06-03 15:26:47
ああ、そうなんですね。
変な写真だと思いました。

彼は、絵が好きでした。
関係しているかもしれません。
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