きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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彼方へ           田添明美

2018年06月25日 11時08分32秒 | 「いたずら」田添明美





小部屋に
つぶやき がうかんでいる
からだからはみでた
呟きは白地に
    染みて
からかう仕種の
奇術師は
 すべらかな
  時をかくしまたうそをつむぎ
舞台に夜をひく
蒔かれた
ものがたりに男は
近づく
染み は呼ぶ、のだ
かえろうとして

いちどきりの逢瀬

 どこかへ、
逝ったものたちとの
   たきましょうか
  わたしも
  蚊遣りを
 窪みのなかのらせん
 ねじれたねむり木目のよう
にひとり
 たわんだ底、で

 たかった もの
 (だきしめているのは
  こわれ
  た玩具? それとも
それが
あなた。のはじまり?

しずむ雨滴のけはいにほど
かれ男は仰向く
  が残っているのは
うとうとと燠のような
つぶやき
けれど
やわらかな殻のまわりで…
こうした夜に
かげは灯り、
あらわれたかたりべだけが時を
まわす
とある日
  舞台はきえ

すて ようとしたものへの
残されたおもいが
窓をひらかせ
その窓から、おとこは
     彼をのぞくのだろう

そして
過ぎ去るものがたりが風化されたその
とき
  はらはらと
はなはまいはぢめ
  窓をゆらし
うた、にちかいあなたが
花びらのかたちに
   ふりしきる





                     H8.8.14









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