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Kagechoのネコ的音楽&介護生活

音楽と猫が好きな介護職員の日々の記録。音楽や猫が好きな方、介護関係の仕事をしている方に読んでいただければ幸いでしょう。

女生徒(太宰治)

2009-04-29 02:02:32 | 読 書
 新潮文庫「走れメロス」の中の短編で、女生徒の独り言のような形で文章が続いていきます。これを書いたときの太宰は30歳。30歳の男が、女学生の口調で文章を書いているという光景を想像すると…… ちょっとコワイですか。でも、ぼくは彼の気持ちが少しわかるというか、似たような経験があります。

 昨年、学校の課題でロアルド・ダールの「アンブレラ・マン」という短編を訳しました。その主人公(語り手)が12歳の女の子で、その女の子の口調で文章を作っていく。これが意外に快感。「オ、オレって、けっこうかわいい」とか思いながら(笑)、自分が女の子になったような錯覚に陥るのです。

 「人間失格」くらいしか読んだことのない人におススメです。太宰のイメージが少し変わるでしょう。

 太宰治 女生徒

歴史をかえた誤訳(鳥飼玖美子)

2009-04-14 02:27:46 | 読 書
 著者は、NHKの語学番組にも出演していたので、ご存じの方も多いかもしれません。誤訳には、「純粋な」誤訳と「意図的な」誤訳とがあるそうです。特に印象に残ったのは、60年代にジョーン・バエズという女性フォーク歌手が来日した際、ベトナム戦争を非難するような発言をしたらしいのですが、それを意図的に「隠した」というエピソード。CIAを名乗る米国人から圧力がかかったとか(笑)。現在では、まず考えられないことですよね。

 もともと同時通訳をやっていた人なので、翻訳の話より通訳の話の方が多い。ちなみに、同時通訳の場合、「おおざっぱに言って翻訳の30倍のスピードの処理能力が必要」だそうです(苦笑)。ぼくにはとても無理。今さら通訳になる気は全くありませんが。「訳す」という行為は共通なので、翻訳の参考になることもあちこちに書かれています。

 目 次
 序 章 誤訳はなぜ起きるのか
 第一章 歴史を変えた言葉
 第二章 外交交渉の舞台裏
 第三章 ねじ曲げられた事実
 第四章 まさかの誤訳、瀬戸際の翻訳
 第五章 文化はどこまで訳せるか
 第六章 通訳者の使命

 一章と二章は、歴史的、政治的な内容なので、ちょっと難しくて読みにくい。三章以降は少しわかりやすくなります。「オーク」の話とか。オークという樹木は「樫」と訳されることが多いのですが、これはそもそも誤訳で、いつ誰がどのような理由でそう訳したのか、いまだに不明だそうです。ウサギの目の色の話とかもあります。六章には、通訳者の倫理(あるべき姿)、歴史などが述べられています。

 (新潮社OH!文庫・2001年5月10日初版)

 鳥飼玖美子

ぼくは本屋のおやじさん(早川義夫)

2009-04-13 15:19:53 | 読 書
 この本の著者は、昔(40年くらい前)「ジャックス」というバンドをやっていた。今では伝説のロック・バンドになっている。GS(グループサウンズ)全盛期に、ドアーズのような、重く暗い曲を作っていた。本人はあまり思い出したくないそうだ。あっさりと引退し、本屋さんになった。

 ぼくも本屋さんに憧れた時期がある。なんか楽そうでいいなぁと。が、この本を読むと、当然ながら楽なことばかりではない現実がわかる。
 内容の一部を引用する。

 「二十三歳の時である。僕はその時、はじめて生活のことを考えた。もう、あまり人と接しなくてすむような、喋らなくてもすむような仕事につきたいと思った」
 「いわば、本よりも本屋が好きであった。見知らぬ人と出会うよりは、はるかに見知らぬ本の方がよかった」

 おそらく対人恐怖症なのであろう。ぼくもそれに近い性質があるので、よくわかる。小さな古本屋で、細々とではあるがおだやかに生きている(ように見える)人たちがうらやましかったりする。

 最近は、再び歌手として活動しているようです。

 (晶文社・1982年5月10日初版)

 早川義夫

河童(芥川龍之介)

2009-03-22 23:24:49 | 読 書
 3連休が終わってしまった。結局いつもと同じようにぐだぐだと過ぎた。特に最終日の日曜は、天気も悪く、風も強く、ちょっとがっかりしてしまった。自転車乗ったら、風が強くて、止まりそうになったもんね。起きたのも遅かったし。天気が良かったら、外に出かけて写真でも撮ってくるつもりだったけど、中止。なんか疲れたなあ。都内では桜が開花したみたいだけど、ぼくの近所ではまだつぼみだ……

 「池と沼の違いは?」「河童がいるかどうかよ」本当か? んなわけないよな。でも子供は信じてしまうかも。「河童」といえば芥川龍之介(どうかKappaと発音して下さい)。なぜかこの作品が気に入っていて、英訳版も持っている。新潮文庫も持っているが、集英社文庫の方が文字の大きさがちょうど良い。新潮文庫は、文字が小さ過ぎて少々読みにくい(最近は改善されたのかな?)。

 ところで、河童は冬眠するのだろうか。冬の間はどうしてるんだろう。そろそろ河童が目覚める季節か……?  (集英社文庫 1992年9月25日第1刷)

 芥川龍之介 河童

無名人名語録(永六輔)

2009-03-18 17:02:21 | 読 書
 永六輔がまとめた、無名人(一般人)のぼやき語録。文庫の初版が1990年とある。発売されてからもう20年もたつのか。内容的に、少し古くなっている部分もある。80年代によくテレビに出てた有名人のこととか。
 ネットやブログが普及する前、こういった「ぼやき」の数々は、ラジオ番組に寄せられていた。ラジオで聴くだけだとすぐに忘れてしまうが、このように本になると、それなりのエンターテイメントというか商品になっちゃうんだなぁ。

 今、読み直してみても「なるほど」と思えるぼやきがたくさんある。20年前と比べて何も変わっていない、20年前からそうだったのかと思えることも多い。高齢化社会のこととか。「長命」と「長寿」の違いとか。「健康のためなら死んでもいい」(有名なオヤジギャグ)とか。
 一つだけ、引用してみる。

 「ロックバンドが集まってアフリカの飢えた子供を救おうっていうの、どこかいかがわしくて好きになれないんですよ。ボートのおじさんが『親孝行をしよう』って言うのと同じで。言ってることとやってることがチグハグで、どこか怪しいんだよね」

 80年代を知ってる人ならわかりますよね。「ボートのおじさん」というのは、当時テレビCMによく出ていた「一日一善、人類はみな兄弟」とか言ってた人のこと。ぼくも最初はこの人のこと知らなくて、ただの爺さんと思ってたのですが、素性を知ってからは「胡散臭いな」と思うようになりました。

 ネットの無い時代から、みんなボヤいてたんだな…… (講談社文庫:1990年5月15日第1刷)

 無名人名語録 永六輔

自分の中に毒をもて(岡本太郎)

2009-03-11 03:14:25 | 読 書
 とにかく、人が「普通に」考えることをまず否定する。逆の発想で考える。そういうポリシーで貫かれた本である。以前の仕事をやめようかどうしようか、悩んでいたときに読んで、結局この本の言うことを信じて、仕事をやめた(笑)。ぼくの人生に大きな影響を及ぼした一冊。「熱い」本である。一部を引用する。

 「失敗したっていいじゃないか。不成功を恐れてはいけない。人間の大部分の人々が成功しないのが普通なんだ」
 「ちょっとでも情熱を感じること、惹かれることを無条件にやってみるしかない。情熱から生きがいがわき起こってくる」
 「チッポケなことでもいいから、心の動く方向にまっすぐ行くのだ」

 まさに、今のぼくは、ちょっとでも情熱を感じることを、失敗を覚悟のうえで、やっている。文章を書く仕事がしたいが、何のあてもなく、無条件にただブログにぶつけているような状態だ。でも、何かやりたい。どうにかしたい。
 失敗はしたくないが、失敗してもいいじゃないか。失敗は成功のもと。成功は失敗のもと。自分と戦いながら、自分を励ましながら、生きる。

 ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」という歌を思い出した。あの歌も、おそらく岡本太郎と同じようなことを言っているのだと思う。安全な道と危険な道があるとき、「危険な方を行けよ」と言う。危険だけど、それに情熱(魅力)を感じるなら、そっちを選べと言っている。たいていの人は、安全な道を選ぶけど。
 ぼくは今、危険だけど、情熱を感じる道を、少しずつ歩いている。

 (青春出版社 青春文庫 定価:467円+税 1993年8月15日第1刷)

 岡本太郎
 ルー・リード ワイルドサイドを歩け

チーズスイートホーム(5)(こなみかなた)

2009-03-02 21:57:19 | 読 書
 晴れたけど、風が強くて寒い一日だった。ブックオフに行って、「チーズスイートホーム」5巻を450円でゲットした。定価は税別848円なので、約400円お得。ささやかな幸せ。

 昨年、テレビ東京で朝6時半(!)から放送されていた、ネコアニメのマンガ版。アニメが先かマンガが先かよくわからないが、「モーニング」という雑誌に連載されているので、たぶんマンガが先だろう。ネコの絵がとてもかわいい。癒し系のマンガで、ネコが好きな人におススメ。「チー」というのがネコの名前で、「スイートホーム」は「 Sweet Home 」です。いつのまに「スウィート」が「スイート」になったんだろう。甘い食べ物も「スウィーツ」じゃなくて「スイーツ」だもんね。なんか発音がなまっているような気がする。

 4月から、またテレビ東京で放送されるようです(時間は不明)。

 チーズスイートホーム
 こなみかなた

ロックの英詞を読む(ピーター・バラカン)

2009-02-27 23:18:44 | 読 書
 ピーター・バラカンといえば「ポッパーズMTV」。MTVができた頃(80年代前半)、よく観てました。現在はブロードキャスターという肩書で、NHKの「ジャパノロジー」という番組で、日本の伝統文化を英語で紹介したりしてますね(これはもともとは海外向けの番組らしい)。あと、NHKのFMで毎週土曜日の朝0715から「ウィークエンド・サンシャイン」という番組をやってます。ただし、音楽的にかなりの「マニア」なので、ときどき彼の趣味についていけないこともあります。

 この本は、50年代から90年代の洋楽(ロック)36曲の歌詞について、彼が解説したものです。日本語が達者なイギリス人が解説するんだから、納得するしかないっすよね(笑)。誰も反論できない(別に反論したいわけじゃないけど)。はあー、なるほど、というしかない。最も古いものがチャック・ベリー、エディ・コクラン( Summertime Blues )、最も新しいのがR.E.M( Losing My Religion )、プリンスあたりです。36曲中、ぼくがまだ聴いたことのない曲が11曲、あとの25曲はよく知っている曲です。

 ザ・フーの「 My Generation 」の訳詞がいい。そうか、あの歌い方はこういう風に訳せばいいのか、と素直に納得。
 あと、印象に残ったのがデイヴィッド・ボウイの「 Changes 」。最近流行の「チェインジ(ズ)」です。一部を引用。

 僕は何を待っていたんだろう いまだによくわからない
 八方ふさがりの状況の中
 イライラだけがつのって暴走してたっけ
 「やった、成功だ」と思うたびに
 現実はそう甘くないことを思い知らされた
 (中 略)
 何度も何度も変化して変化するんだ
 向きを変え知らない自分に直面して
 変化するんだ
 もっと金持ちになりたいわけじゃない

 とにかく同じ人間でいるのが嫌なんだ
 時の流れは僕を変えていくかもしれない
 でも僕は
 時の流れを追っていくことはできないんだ

 「自分を変えたい」という言葉はよく耳にしますが、彼の場合、本当にコロコロと自分のキャラを変えました。良い悪いは別にして、そこまでして「今までと違う自分」を演出するエネルギーは、すごいです。1970年前後の彼は、実際に音楽的にかなりの試行錯誤をくり返していたようです。「ジギー・スターダスト」として大ブレイクする直前の、初々しい彼の姿が浮かんできます。

 (発行:集英社インターナショナル 発売:集英社 定価:¥1600+税) 

 ピーター・バラカン
 デイヴィッド・ボウイ

英語達人塾(斎藤兆史)

2009-02-24 19:22:05 | 読 書
 サブタイトルが「極めるための独習法指南」で、自分で英語を学習する人、つまり学校とか留学とか家庭教師に頼らず、自分でコツコツと勉強する人のための本です。したがって、ぼくのようなやや引きこもり傾向のある人間にもピッタリ。でも、中身はすっごく厳しいことばかり書いてます(笑)。

 目 次
 第1章 入塾心得
  2章 音 読
  3章 素 読
  4章 文法解析
  5章 辞書活用法
  6章 暗 唱
  7章 多 読
  8章 丸暗記
  9章 作 文
  10章 視聴覚教材活用法
  11章 その他の独習法
  12章 英語教材の選び方

 所々に鋭い格言があります。
 「英語力は会話力にあらず。文法無視でペラペラしゃべる癖がついてしまうとそこで学習は頭打ちになる」
 「基本をおろそかにした我流では伸びない」
 「母語(日本語)を大事にしない人間は外国語の習得など望むべくもない」
 「語学力は辞書を引く回数に比例して伸びる」 などなど。

 また、各章には具体的な勉強法が指示されています。例えば、
 「毎日1回、最低200語程度の英文をゆっくり音読しなさい」
 「いまから1年以内に最低2000ページの英文を読みなさい」
 「大学受験レベル以上の英文法参考書を3度通読しなさい」
 「日本の昔話の縮約版(桃太郎、浦島太郎等)を1000語程度の英語で書きなさい」 などなど。

 最後に「翻訳」について。筆者の言葉をそのまま引用します。
 「僕は、文学翻訳の能力は、英語力の中でももっとも高度かつ特殊なものだと思っている。普通に英語を話したり書いたりできる程度では、とても文学翻訳はこなせない。(中略)したがって、翻訳家志望の人は、本書で解説してきた学習法に加え、日英の文学書の多読が必須の学習項目となる」
 道は遠いな…… 

 中公新書 英語達人塾

男と女の進化論(竹内久美子)

2009-02-17 15:46:09 | 読 書
 「女性を見るとき、どこから見ますか」という質問があったとする。ぼくだったら、「正面の場合は顔、胸、脚で、後ろ姿の場合は髪(型)、腰(お尻)、脚」と答える。ヤラシイと言われるかもしれないが、それが自然だと思う。なぜなら、女性の身体はそういう風にできているから。女性の身体は、男の注目を集めるために進化してきたのである。
 「性的信号」を送るパーツとして、まずお尻があった。これはサルやチンパンジーも同じ。人間は二足歩行になったため、お尻があまり目立たなくなってしまった。男性(オス)の関心を引くには、新たな性的信号が必要だった。そこで発達したのが胸(乳房)である。授乳のためだけにあるのなら、別にふくらんでいる必要はない。より優れた男性を引きつけるため、女性は長い歴史の中で胸を(お尻に似せて)発達させてきた。唇もまた、性的信号を発信するように発達した。男が女性の発する信号(パーツ)を見てしまうのは、本能に基づいた自然な反応なのである。スケベ男の言い訳にしか聞こえないか?

 この本には、そのような「男と女の進化論」がいろいろと述べられている。女性の視点で。著者は京都大学出身で動物行動学の研究者(権威?)。推測も含まれているかもしれないが、なるほどと納得させられるものが多い。平成二年(1990年)初版、同六年(1994年)文庫化(新潮文庫)。沢野ひとしのちょっととぼけたイラストもおもしろい。
 だいぶ前に読んだものだが、この本を思い出したのは、たぶん先日の買い物のときに、あまりにも多くの女性を見てしまったせいだ(笑)。

 竹内久美子 男と女の進化論

人間の覚悟(五木寛之)

2009-02-13 13:21:05 | 読 書
 ついに覚悟をきめる時が来た。悲観的な意味ではない。「あきらめる」ということは「明らかに究める(きわめる)」ことで、「現実を見究める」ことだという。五木寛之は、言葉の意味をあらためて深く見直し、少し別の角度から新たな解釈を加えている。「他力」という著書もあり、これは「他力本願」という悪い意味ではなく、自力には限界があり、我々は世の中の目に見えない力(他力)によって生かされているという内容のもの。ぼくは、「自分が努力すれば必ず夢はかなう」という成功者の言葉をあまり信じない。そんなことを軽々しく言う人は、「他力」というものの存在をわかっていないのだ。自分の実力だけで成功したと思いこんでいる。実際はそうではない。自分の周囲の環境、家族や友人、タイミング、運の良さなど、さまざまなものに助けられているはずだ。それらも含めて実力というのなら、それまでだが。

 目 次
 第一章 時代を見すえる
 第二章 人生は憂鬱である
 第三章 下山の哲学を持つ
 第四章 日本人に洋魂は持てない
 第五章 他力の風にまかせること
 第六章 老いとは熟成である
 最終章 人間の覚悟

 自殺者が10年連続で3万人を超えている。この10年間で30万人が自殺したんですよ。ひどい時代だ。こんな時代にまだ生きている自分が奇跡的というか、幸運に思える。五木氏によれば「鬱の時代」に入っているらしい。それ以前に「人生はもともと憂鬱なもの」と考えることもできる。憂鬱であっても、我々はその現実の中で生きていかなければならない。
 こういう本を選んでしまうのも年をとった証拠かもしれません。仏教用語が多く出てくるので、少し難しく感じる部分もありますが、新書版で約190ページ。じっくり読んでも一日あれば読めるでしょう。価格は税別で680円です。

太宰治生誕100周年

2009-02-08 15:40:01 | 読 書
 太宰治生誕100周年だそうです。「斜陽」、「ヴィヨンの妻」、「パンドラの匣」の3作品の映画化が進んでます。すごいですね。「斜陽」はサトエリこと佐藤江梨子が主演だそうです。本人もかなりの太宰ファンみたいで、ちょっと楽しみです。

 太宰は十代後半から二十歳前後の頃に、一通り読みましたね。新潮文庫で。わかりやすいというか読みやすいのかも。太宰を読むと、みんな自分も小説書けるんじゃないかという錯覚に陥るらしい。「人間失格」があまりにも有名なので、そのイメージが強いのですが、他にもおもしろい短編を書いてます。ぼくが好きなのは、新潮文庫の「走れメロス」(短編集)に収録されている「ダス・ゲマイネ」です。ああいう短編を一度書いてみたい…… と今でもときどき思います。何かロックに近いもの、若者の勢いみたいな力を感じる。もし機会がありましたら、ぜひどうぞ。

 太宰治 映画