むすぶ つなぐ

「悪の枢軸」とされる国から思いつくまま……。

わかりやすさ

2009年02月28日 23時26分03秒 | Weblog
今日の夕刊各紙は、オバマのイラク撤退演説がメインだ。
イラクでの戦闘部隊は、来年8月末で撤退し、アフガンへの兵力を増強するという。

撤退の背景として、イラクの「治安改善が進んでいる」と米国は説明する。
それを多くの新聞やテレビはそのまま流す。
しかし、実態は違うようだ……。
そもそも、米国の駐留が長期化したからこそ、混乱が深まった。
これまで、むだに死者の数が増え続けてきた。
もう収拾がつかなくなり、国民世論にも耐えきれずに撤収するだけのことではないのか。

イラク開戦以来の市民の犠牲者は確実に10万人を超え、さらに積み上がる。
依然、現場取材ができない治安の中で、月間の死者数が何割か下がっただけで、「改善」と表現してしまう……。
現場を知らないなら、せめて想像力を精一杯働かせるべきだと思う。
わかりやすさを追求するだけなら、メディアの存在意義はない。

 ×   ×

フリージャーナリストの西谷文和さんに続き、アジアプレスの玉本英子さんも無事、イラク北部に入ったとメールが来た。
◆アジアプレス
http://asiapress.org/archives/2008/10/01153905.html

北部の中心都市モスルは依然治安が悪く、近づけないという。
それぞれの思いを抱えながら、わかりにくい現場で奮闘している。

流浪の民

2009年02月28日 01時34分48秒 | Weblog
北朝鮮と並ぶアジアの人権破綻国家、ビルマ。
軍事政権に異議を唱える多くのビルマ国民が、日本にも多く「避難」している。
その大半を占める仏教徒のビルマ国民から、さらに虐げられているのがイスラム教徒のロヒンギャ族だ。

ロヒンギャ族は、ビルマ政府から国民として認められておらず、周辺国にも受け入れられない。そして、すがる思いで日本の扉をたたく。
当番も雑用もない午後、群馬県まで話を聞きに行った。
群馬県館林市には160人ほどのロヒンギャ族が暮らす。
その大半は難民と認められていない。

未来が見えない中、コミュニティを作り、助けあいながら、必死に生きている。
「心が痛い」
難民申請中の男性は、窓の外の雪を見つめ、片言の日本語を繰り返した。
男性は、ロヒンギャ語、ビルマ語、英語、マレー語を話し、タイ語、日本語も少しわかる。
すべて生き延びるために獲得した手段だ。

自国の漢字も読めず、英語演説も「聞き取り不能」なんて外国に指摘されてしまう国のトップもいる。
この理不尽な人間の格差って、一体何なんだろう。
世界2位の経済大国ができる海外支援は、自衛隊派遣以前にたくさんある。

動ける幸せ

2009年02月27日 10時37分19秒 | Weblog
朝から雪……。
寒いし、布団から出られない。
やる気もわかない。
週末に仕事がある分、午前中くらいダラダラ寝ていてもバチはあたらない(はず)


大阪府吹田市のフリージャーナリスト、西谷文和さんがイラク北部に入り、毎日リポートしている。
http://www.nowiraq.com/blog/

空爆で動けなくなった子どもの写真がつきささってくる。
平和で、自由に動ける幸せをかみしめたい。

可能性と限界

2009年02月27日 00時51分45秒 | Weblog
最近、いろんな先輩記者と話す機会が多い。
それぞれの豊富な経験は勉強になる。
けれども、人間の想像力には限界がある、とも感じる。
たいていは自分の経験の範囲内でしか、価値観は描けない。

話は飛ぶけれど……。
これまで障害を持った人や難病患者は、全く別世界の人だと思っていた。
けれど、最近、急に身近に感じるようになった。
これまで、果たしてどれだけ深く理解してそうした人たちの記事を書いてきただろうか。

海外報道に当てはめると、新聞は、途上国やイスラム圏の苦悩、少数民族の悲哀、紛争地の惨状をどれだけ視線を合わせて伝えてきただろうか。
国際社会を動かしているのは、やっぱり米国、それとも欧州、中東……。
国際情勢の動きを敏感に追うのは大切だし、記事になりそうなことを記事にするのも立派な仕事だと思う。
けれど、光が当たらないところに目を向けるのが記者の本当の役割だとずっと思ってきた。

現実は難しいことばかり……。

チャンス

2009年02月24日 23時45分23秒 | Weblog
どんな仕事でも同じだろうけれど、少ないチャンスでも確実にものにする人はいる。
残念ながら、その逆もたくさんいる。

最近、大きなチャンスをものにした愛すべき先輩記者がいた。
他業界では果たして、いや同業他社でもう~ん……?!?という不思議な人。
そんな変わりダネがいることが新聞社の最大の財産だと思う。

自分はというと……。
今日、海を超えて「ダメだし」メールが来た。
う~ん、もったいない。完全な準備不足だった。
常に備えていないと、大事なチャンスは逃げていく。
ま、悔しいけど、いつまでも落ち込んでいても何も変わらない。

  ×   ×

夕方の取材を終え、夜から霧雨の中、皇居を2周走る。
着替えは、ランナーに人気の半蔵門駅前の銭湯「バンドゥーシュ」。
地元のじいちゃんも、メタボなおっさんもいない、引き締まった人ばかりの銭湯だった。

走った後の風呂は最高。
1週間前より、体重が2㌔減。素朴にうれしい。
走るといろんなことが忘れられる。
また、やり直そう!

◆銭湯「バンドゥーシュ」
http://www.enjoytokyo.jp/id/s2/12097.html

  ×   ×

昨週に続き、今日また友人がイラクに向けて出発。
電話をかけると、シンガポールで乗り継ぎ待ちだった。
志が高い人たちと接するだけで、エネルギーがもらえるのは幸せだ。

米国の政権が変わっても、イラクでは何も終わっていないし、何も解決していない……。


スタンダード

2009年02月23日 22時57分09秒 | Weblog
新聞社の泊まり勤務では、上司としゃべりながら未明まで飲むのが慣例だ。
古臭い面はあるけれど、経験豊富な先輩記者との話は、得ることもたくさんある。

新聞記者もサラリーマンで、組織人だ。
同僚に負けない立ち回り、他社に負けない紙面……。
大半の記者は、社内や業界の枠を基準に仕事をする。

一方で、そんな枠を超え、もっと広いスタンダードを追求する人もいる。
数年しか記者経験が変わらない、ある先輩は既に何冊も単著を出版。
日々の紙面だけではなく、本という形で世に自分の主張を問い、「勝負」してきた。

 ×   ×

泊まり明けで昼すぎまで勤務。
ほぼ24時間会社にこもっていると、気力も体力も落ちてふにゃふにゃ。
なんだかどうでもいい気分になることも……。

1時間ちょっと寝て、奮起して、夕方から国際人権NGOの会合に。
「世界のスタンダード」を軸に、人権問題で幅広く活動する人たちは、エネルギーにあふれていた。
莫大な知に裏付けられた人たちはやっぱり文句なく強い。
一気に目が覚める。
自分って、笑えるくらいに甘いよなあ……。

◆ヒューマンライツウォッチ東京オフィス
http://kaze.shinshomap.info/special/16/01.html

◆ヒューマンライツナウ
http://www.ngo-hrn.org/





ねこの日に

2009年02月22日 11時10分35秒 | Weblog
今日はなぜか「ねこの日」らしい。
87年にペットフードなどの業界が決めたらしい。
昨日、近くの寺でたくさんのねこを見たのも偶然か……。

動物への愛って素晴らしいけれど、改めて考えさせられた。
日本のペット産業が盛況らしい。今どき、人間の食べ物より高い缶詰や高価な衣服(衣装?)がたくさん売られている。
世界的に見れば、突出した豊さがもたらす特異な光景では。

10年以上前に読んだルポ「もの食う人々」(辺見庸著)を古本屋で文庫版で見つけた。久々に読み直してみた。
その中の場面のひとつに、タイにある日本向けのペットフードの缶詰工場が登場する。
農村から出てきた女性労働者らが低賃金で働く。
そこで、著者は尋ねる。
「日本のペットのえさのために働くことをどう思うか」
グローバル化の過度な進行が、安くて、美味しいペットフードを生み、飽食の国のねこ様の生活を支える……。


ねこフリマ

2009年02月22日 01時42分25秒 | Weblog
青梅マラソンの失態を受け、1週間ぶりに練習を再開!
皇居周回もいいけれど、昼から、今住んでいる地元探索に出かけた。
すると、結構いろんな発見がある。

走ってわずか15分ほどのところに、実に立派な寺があった。
日蓮ゆかりの法華経寺。
山門をくぐり駆け抜けると、立派な五重塔や小さいながら大仏まである。
昔、社会の教科書で見た日蓮の「立正安国論」なる書物も納められているとか。
境内にはなぜかねこがたくさん出没している。
どうやらこの寺は「野良猫天国」で有名らしい。

そして、帰り際の商店街で奇妙な「ねこフリマ」なるポスターを発見!
う~ん、ねこを売り飛ばすフリーマーケットか?
と思いきや、ポスターをよく見ると、フリマの売上は、法華経寺の境内に徘徊するねこの医療費などに充てるという。
人間も住みずらい世の中だけど、ねこにもご慈悲を……。
なんだか面白い。

  ×   ×

午後から、お手伝いで出勤。

新聞記者もれっきとしたサラリーマン。
人間の世界はいろいろとややこしい。
ああ、ねこになりたい……。


ああ、スギ花粉

2009年02月21日 10時49分41秒 | Weblog
雲ひとつない空が恨めしい。
昨年からひどくなった花粉症。
今年も2月初旬から発症し、目がシバシバ、鼻ズルズル、のどイガイガ……。
集中力もやる気も完全に奪ってしまう。
なんだか自分にとっては、「生物化学兵器」のようだ。

  ×   ×

これまでの人生で、花粉をため込んだんだのはいつだろう?
「振り出し」の滋賀県でも、次の赴任地の高知県でも、何かとネタを探しに、山間部によく出かけた。
一番思い出すのは、ユズを使った村おこしで知られる高知県馬路村(うまじむら)だ。
http://www.inforyoma.or.jp/umaji/

支局のある高知市から車でクネクネ道を3時間ほどかけ、何度か通った。
全国屈指の美しいスギ林を誇っていた同村は林業の衰退とともに、人口が激減。
そこで、ユズ栽培や保育園児からの山村留学、音楽演奏会などを通し、村の活性化に力を入れた。
出会った人もエネルギッシュで温かい人たちばかりだった。


兵庫や大阪に転勤してからも毎年、連絡を取って「山村留学生募集」の小さな記事を新聞の片隅に載せた。
記事を見たアトピーや不登校で悩む都会の子どもたちから反応があると、村の校長先生から毎回電話をいただいた。
◆小さな村の小さな学校
http://www.kochinet.ed.jp/yanase-j/index.html


あれからもう10年。
悩ましいスギ花粉は、スギ林に囲まれたあったか~い馬路村の記憶を呼び起こしてくれる。

×    ×

新聞記者の経歴って千差万別だ。
大半は最初、地方支局を経験するものの、すぐに都会の主要部署に配属される記者もいる。ほとんど東京やその周辺しか知らないなんて記者もいる。

私は地方経験が長く、どちらかといえば「遠回り」組?
けれど、今思えば、大事な記者としての視線やスタンスを教えてくれたのは、東京の人ではなく、地方勤務当時に出会った人たちばかりだ。

最近、地方支局ですぐに「キレる」若手記者が多いらしい。
よっぽどプライドが高いんだろうか。
本当に読まれる記事は、決して霞が関や永田町、地検特捜部発の派手な記事ばかりじゃないのに……。

帰還兵

2009年02月20日 20時13分38秒 | Weblog
戦場で人はどう変わり、戦地から戻ってからどんな異常が生じるのか……。

劣化ウラン弾の影響や精神障害……。
イラク、アフガンから帰還した米兵の異常がさまざまな面から検証、報告されている。

路上爆弾による爆風によって、脳への深刻な損傷も報告されている。
見えない戦争の暗部を探り出す作業ほど、ジャーナリズムの存在意義が問われるものはない。
◆毎日新聞
http://mainichi.jp/photo/news/20090217k0000m030128000c.html


初めて映画「ディアハンター」を観た時の衝撃は今も忘れられない。
ベトナム戦争でも大量の帰還兵がいた。
95年の沖縄米兵暴行事件をきっかけに、日本全国で講演を続けてきた米兵、アレン・ネルソンさんもその一人だ。
いつか取材したいと思っていながら、チャンスがなかった。
そのネルソンさんが病に倒れ、沖縄のひとたちを中心に支援運動が起きている。

◆辺野古浜通信
http://henoko.ti-da.net/e2345256.html

たかが新聞、されど新聞

2009年02月20日 02時36分32秒 | Weblog
まだ、明らかにできないけれど、うれしいことがあった。

何かと批判を受け、元気がなくなっているのが新聞業界だ。
確かに腐っている部分もあるし、生きにくい面もたくさんある。
それでも、いろんな“人種”がいて、思い思いに仕事ができる環境がまだ残っているのがこの業界の良さだ。
それを痛感させられる1日だった。

権力にくっついて酒を飲む記者もいる。
けれども、ずっと目線の高さを変えない記者もいる。
どちらが正しいか、どちらが出世するかなんて話はどうでもいい。

日本の新聞ジャーナリズムは、まだ死んでない。
それを感じられる場にいられるのが幸せ……。


永田町ジャーナリズム

2009年02月18日 23時21分04秒 | Weblog
中川昭一・財務金融相が、G7での「深酒会見」の責任を取って辞職した。
当然のことだろう。

実は、G7会合の前後、中川氏は同行記者とも飲んでいたという。
普段は仲良く酒を酌み交わすベタベタの関係を築きながら、各社がたたくとなぜか一斉にたたく。
メディアと政治家との関係にもなんだか違和感も覚えてしまう。

中川氏は普段から酒ぐせが悪いとされ、週刊誌ではさまざまな疑惑でも名前が上がる。
麻生首相の漢字が読めない問題も、実は政治記者にとっては昔から周知の事実だったとか。

資質がない政治家が閣僚になり、世界に恥をさらす。
普段から永田町や霞が関には大勢の記者が張り付いているのに、そうなる前になんとかならないのか。
メディアの姿勢も問われている気もする。

  ×  ×

◆「ジャーナリズムの崩壊」上杉隆著(幻冬舎新書)

東京の記者には耳の痛い話ばかり……。著者のことをボロクソに言う記者もいる。新聞記者は概して自己批判が苦手だ。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0%E5%B4%A9%E5%A3%8A-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E4%B8%8A%E6%9D%89-%E9%9A%86/dp/4344980883

おきなわの心

2009年02月17日 22時48分20秒 | Weblog
泊まり明けで、そのまま夕刊の当番に。
クリントン国務長官と中曽根外相会談に加え、アホな財務相の辞任も突然飛び込んできたため、早版から刷るたびに見出しが変わるバタバタの事態に……。

  ×   ×

帰り際、新宿駅構内で、小さな「沖縄フェア」をやっていた。
すると、幻の泡盛「泡波」を発見!
人が住む最南端の離島・波照間島の名産だ。

2年前、1人でこの島を訪れた記憶がよみがえってきた。
透き通った美しい海に囲まれ、人と牛がの~んびり暮らす小さな島。
けれど、重く悲しい歴史も背負っていた。
米軍の上陸阻止という目的で、軍人が島の住民を追い出し、西表島に強制疎開させた。
疎開先では、多くの子どもを含む住民が次々にマラリアに感染して死亡。島民の3分の1が犠牲になったとされる「沖縄戦争マラリア事件」だ。
http://homepage1.nifty.com/takeishi/okinawa/yaeyama/hateruma/newpage5008.html

高齢の「おばあ」の家を訪ね、話を聞いた。
疎開先で子どもが次々に息絶えていく悲劇……。
おばあは「戦争はいかん」と何度も繰り返し、目を潤ませていた。
悲しい記憶を呼び起こさせことで申し訳ない気持ちになった私に、おばあはみかんやお菓子を渡し、見送ってくれた。
悲しみを背負っているがゆえの人間の強さが伝わってきた。

  ×   ×

今日のクリントン、中曽根会談では、「在沖縄米海兵隊のグアム移転協定」への署名も交わされた。
しかし、それには、普天間基地返還に伴う、沖縄県名護市沖への新飛行場建設も含まれている。
日本の米軍基地の4分の3が集中する沖縄の過重な負担……。
その現実が、根本的に解消されることはない。

夜のテレビのニュースで、評論家然とした記者が解説していた。
「沖縄の基地問題は沖縄や日本だけの問題ではありません。米国のアジアの軍事戦略全体を考えなければいけません」
霞が関や永田町にしかいない記者に、「おきなわの心」が本当にわかるのだろうか。

違和感

2009年02月16日 10時31分07秒 | Weblog
イラクのニュースがどんどん小さくなる。
一度、数字になってしまった死者は、どれだけ増えてもあまり語られなくなる。

「イラクでの今月の米兵の死者は過去最低。治安改善が進んでいる」
新聞やテレビでこんなニュースを見ると、強い違和感を覚える。
米兵の犠牲とは関係なく、市民の犠牲は今でも増え続けている。
毎日莫大な死者が出る異常な状態だったこれまでと比べただけで、「改善」という言葉は全くそぐわない。

だいぶ以前、イラク戦争以降の市民の死者は、「推計で10万人」という数字が出された。
悲しいことにその推計を超えるのは確実で、報道されただけで、もうすぐ10万人に達する。
◆イラク・ボディカウント
http://www.iraqbodycount.org/

  ×   ×

現場を踏んでいる人たちは、伝え続ける大切さをより知っている。
今月、友人のジャーナリスト2人がそれぞれイラクに入る。

支援の必要性を肌で感じている人たちも。
バレンタインに合わせた、イラクの子ども支援の絵画展が日比谷でまだ開催中。18日まで。
◆「日本イラク医療支援ネットワーク」 佐藤真紀さんのブログ
http://kuroyon.exblog.jp/

格好悪さ

2009年02月15日 23時29分55秒 | Weblog
ぽかぽか陽気の15日、東京郊外まで出かけ、「青梅マラソン」30キロに挑戦。
不規則な生活が続き、またまたほとんど練習しないまま当日を迎えてしまった。

2万人以上が参加し、ゆっく~りとスタート。
「お!結構、調子いいやん。完走できるかも」
宿場町・青梅の街並みや梅を眺めながら走り、余裕な感じで最初の10キロをやり過ごす。

やがて途中でトップ集団とすれ違う。
う~ん、美しい足の運びと緊張感ある男同士の意地のぶつかり合い……。
いつになっても、ボクサーと並んで長距離ランナーは、自分にとって最高に格好いい存在だ。
実業団のトップクラスの選手に、早大、日大などの学生トップが続く。
さらに10人ほど続くと、おお!何と大学の後輩が必死にくらいついているでは……。
面識は全くないけれど、思わずうれしくなり「ファイト~!」と声をかけた。



しかし、練習不足の自堕落ランナーに、マラソンの神様は甘くなかった。
20キロすぎると、ひざがガクガク。さらに25キロを超えると太ももの筋肉がつりかけ、足を運ぶのがやっとの感じ。
「そんなに格好悪く走るくらいなら、もう、歩いちゃえよ!」
悪魔のささやきに抵抗しきれず、結局、2㌔ほど歩いてしまった。

とぼとぼ歩く横を、盲人ランナーや高齢者ランナーがどんどん抜いていく。
もともとだいぶ後ろの方だから、颯爽と走っている人はいない。
けれど、どんなにドタバタと遅く走っていても、あきらめて歩く自分よりは確実に速い。
自分の「格好悪さ」を受け入れ、走ることをあきらめない人が最後は強い。


結局、優勝記録の倍にあたる3時間5分でゴール。
それでも、走った後の生ビールは、職場仲間で飲む平日のビールより何百倍も美味い。
また、格好悪く頑張ろう!

◆時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090215-00000028-jij-spo