むすぶ つなぐ

「悪の枢軸」とされる国から思いつくまま……。

イラン映画の心

2010年06月27日 17時07分12秒 | Weblog


イランは実に祝日が多い。

ほとんどは宗教に由来するものだ。
土曜日も、シーア派初代イマーム(指導者)アリーさんの誕生日で祝日のため、世の中は木、金、土の3連休。
政治の動きもないし、取材相手もつかまらないし、なかなか仕事は進まない。



午後から少し時間を作り、ずっと行きたかった「映画博物館」へ。
乗り合いタクシーを降りて、目抜き通りのヴァリ・アスル通り沿いをトコトコ。
博物館は、優雅な庭園に囲まれた実に豪華な造りだった。

イランの豊かな映画文化と歴史を語る数多くの展示があり、黒沢明や小津安二郎のポスターなどもあった。






帰りに、イラン映画名作選のDVDセットを見つけた。
12枚入って、日本円で4000円ほど。
思い切って買ってしまった。
映画ファンには、垂涎もの!だろう。




早速、キアロスタミ監督の「桜桃の味」を見た。
ハリウッド映画の派手さ、欧州映画のような華やかさは全くない。
自殺志願の男が砂ほこりの中をひたすら車が走り続ける……。
数少ない交わす言葉の中に、生きる希望がちりばめられている。

時に眠りそうになる展開だけれども、頭の中にずっと残る深い味わい。





人生にとって、大事なものは……。
愚直にメッセージを追求しながら、押しつけがましさが全くない。


マニアだけのものにしておくのはもったいない。
イラン映画はまだ初心者だけれど、日本の心に通じるものがたくさんある、と直感する。

アシアの仲間

2010年06月25日 23時57分53秒 | Weblog
テヘランの空の色は日替わりだ。
昨日は灰色だと思ったら、今日は日本の勝利を祝うようなサムライ・ブルー!



時折みられる灰色の原因は、イラク方面から運ばれ、空に舞う大量の砂だ。
昨日の夜は、ジョギングに出たものの、なんだか体に悪そうなので、途中で引き返した。

イランの人は、砂が舞う日は「また、イラクからだ」と迷惑そうな顔をして言う。
最近は「イラクからの砂には、米軍が使った劣化ウラン弾が含まれている」との根拠不明の
ニュースも流れ、嫌悪感に拍車がかかっている。




日本から見れば、イランは一文字違いのイラクとそれほど変わりなく、中東アラブ諸国のひとつと思われがちだが、そんな仲間意識は意外に乏しい。

むしろ、「同じイスラム教国でもアラブと一緒にしないでくれ。俺たちはアシア(アジアのこと)の仲間なんだ」との声が強い。



全く顔も民族も違っても、日本や韓国の活躍がうれしいらしい。
不思議な連帯感……。

ないものねだり

2010年06月22日 19時36分09秒 | Weblog
どんなに暑くなっても、イランの女性は頭のヘジャブはもちろん、上半身は「マント」と呼ぶ長袖上着を着て、町を歩く。

まだ真夏ではないが、既にしんどそうだ。



衣服や髪形のおしゃれが楽しめないストレスか、女性の顔に対する執着はすごい。
「これでもか!」というほどきつい化粧をし、目をビカビカさせている。

ただ、高~い鼻は自慢かと思いきや、みんなコンプレックスのよう。
ある女子大学生は「もう少し小さめで、フランス人のような鼻がいい」とか。
なんと贅沢な……。



整形外科医の先生が言っていた。
「世界中どこでも人間は、みんな自分の持っていないものを欲しがる」
http://mainichi.jp/select/world/news/20100621ddm012030121000c.html
(東日本のみ掲載)

アフガニ

2010年06月21日 14時04分53秒 | Weblog
昨日20日は「世界難民デー」

イランには、300万人ともいわれるアフガン人がいる。
ソ連の侵攻、米国による攻撃……。
世界を混乱させてばかりのようなイランだが、隣国として大量の難民を受け入れ、支えてきたのはれっきとした事実だ。

殺してばかりの国と、受け入れる国……。




イランでも、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)による会見があった。
政治家の会見はどんな小さなものでも30~50人と記者が集まるのに、この日は、全部で5人。
海外メディアは自分だけで、あとはイラン人。

東京でもそうだった。
すぐに結果にならないものは記者に人気がない。
日本人だけでなく、世界中同じ。
みんなまっすぐなサラリーマンなのだ。
(私もサラリーマン。早く形にしないと)




イラン人は、アフガン人(ハザラ人)を侮蔑を込めて「アフガニ」と呼ぶ。
日本人は顔が似ているので、テヘラン在住のある日本人女性は「品のいいアフガニだ!」と路上で呼ばれ、複雑な気分になったとか。

ただ、イラン社会は、表向きはアフガン人を差別しながら、しっかりと社会に取り込んでいる。
地域の雑貨店、工事現場、マンションの管理人……。
労働力として完全に定着し、「あいつはアフガニだ」と本人の目の前でバカにしながらも、それなりに仲間として認めている。





日本は、あきらかな差別は極めて少ない社会だと思う。
けれど、ホームレスの人の前を、1日何万人の人が見ぬふりをして通り過ぎる東京は、本当に豊かな街か、優しい街か……。


イランでは「アフガニ」は明らかな蔑称だが、「仕方ないから、受け入れてやるよ」というメッセージも少しだけ含まれている、と感じる。

距離感

2010年06月19日 02時54分48秒 | Weblog


近づきすぎると逃げてしまうし、遠すぎると小さくて何の写真かわからない。
スズメは実に、距離感が難しい。



日本人にとって、イランも距離感の取り方が究極に難しい国だ。


日本や欧米の価値観から抜け出せない人は、やっぱり居心地の悪さばかりを強調する。
一方で、ペルシア語や歴史、文化にほれぬいて、イランのいいところばかり語る知識人、文化人もいる。

正直、どちらのタイプも苦手だ。




昨日は、そんなイランへの「愛」と「憎」がちょうどよくバランスとの取れた人から話を聞いた。
深くイランを学び、多くの人に会い、かつ冷静にこの国の良さ、悪さを語れる。
なんだか、自分の理解の薄っぺらさを痛感した。
まだまだ時間が足りない。




国連、EUにも続き、米国のイラン制裁も近く本格化する。
自分と関係なくても、「お前はバカだ」と繰り返し言われると、さすがに穏やかではいられない感じ。

少なくとも2500年の歴史を誇る国が、数百年の歴史しかない米国から、バカだ、アホだと言われるほど、薄っぺらい思考しか持っていないわけがない。
わかりやすい対立構造の中でしか、思考を紡ぐことができない多くの「先進国」の人たちは、どこまで本当に正しいのか。


イランのお隣のイラクやアフガンで大量の命が奪われ、開戦理由の嘘までわかっても、戦争を始めた米国や英国の責任は何も問われない。


  ×    ×


理屈っぽいのはこれくらいで。

今日は、テヘラン日本人学校のお祭り。
娯楽の少ないイランでは、貴重な場で、大人も子供も本当に楽しそうだ。




ただ、学校だけでなく、在イラン日本人社会を見て思うのは、本当の地元社会との交流が少ないように感じること。

一方で、イランほど日本という国を愛してくれる国、崇拝してくれる国はないのではないだだろうか。
けれど、その思いはほとんどイラン側の片思いに終わる。
なんだか寂しい。




そんなことを考えていた帰り道。
だいぶ手前で車を降りて、トコトコ歩く。

近くの公園に寄ると、青空チェスをしている親父軍団に次々に声をかけられた。

「どこから来た?日本か?日本は最高だなあ」
「おまけにサッカーも強い。カメルーンに勝ったし、すごいじゃないか」

あふれる愛にどれだけの日本人が応えているだろう。




テヘランにいる日本企業の人に聞くとなんだか悲しい話ばかり。
金融やエネルギー部門以外で、ビジネスチャンスはたくさんあるのに、何も手を打たない。

「イランはややこしい国だから今は新しいことをするな。何もしなくていい」
そんな指示が日本の本社から来るらしい。



日本社会はやはり安全志向が強く、リスクは負わない。
だからイランとは必要最低限しか付き合わない。
政府だけでなく、企業までそんな感じだ。



イラン・イラク戦争の時は、米国はイラク側を支援したのに、日本企業は粘って仕事を続けたり、結構、企業駐在員をだいぶ残したようだ。
今と比べ、日イランのパイプはだいぶ太かった。




公園を出て、自宅近くの雑貨店へ。
常連のサッカー好きの兄ちゃんに言われた。
「明日はオランダ戦だな。日本が勝てば僕もうれしいよ。イランは同じアジアだしな」

尊敬されるアジアの国として、もっとイランと独自の「距離感」を持っていいと思う。

世界共通語

2010年06月18日 01時16分36秒 | Weblog
イランでも毎日、サッカーの話題で持ちきりだ。
大人も子供もサッカー大好き。
真面目な中年リーグもあり、世代を超えた国民スポーツになっている。



韓国に続き、日本の活躍は意外だったらしい。
「おめでとう。すごいな」と言いながら、イラン人は負けず嫌いが多いので、「次はオランダだし、力の差がありすぎるな。無理だろ」と付け足すのを忘れない。

W杯中は、サッカーで会話が途切れない。
やっぱりすばらしい世界共通語だ。




連日、暑い日が続くとうんざりだ。
それでも、あの声が聞こえると、曲がった背中が直り、視線が前に向く感じがする。

形も鳴き声も日本と一緒。
いつも楽しそうにペチャクチャ話しているスズメだ。

あれこそ、きっと「世界共通語」に違いないと思う。
あの楽しそうな会話をなんとか活字で表現できないだろうか。




毎日、職場のベランダに、コメをまいてシャッターチャンスを狙っている。
何もしなくても寄って来る日もあったのに、全然来なくなった。
翌朝になると、コメはあとかたもない。
言葉を持つスズメは、賢いのかもしれない。

試金石

2010年06月16日 03時36分11秒 | Weblog
今日は、夕方興味深い取材を終え、日本人のこじんまりした集まりに。
美味しい日本食に、とろけそうになった。



在イラン日本人で集まると、どうしても仕事や日常の苦労から、愚痴や悪口になりがち。

けれど、好奇心やバイタリティに満ちた人、ここで生きていく覚悟がある人は、やはりとらえ方が違う。

実は、日本人とイラン人はいろんな共通点があって、そこを探ると面白いのだ。
今日はそんな話に花が咲き、知的で前向きな雰囲気が満ちていて、楽しかった。
ベテランの方から学ぶことも多い。




愚痴やぼやきからは何も生まれない。
異文化をどうとらえるか、どう自分のものにして、楽しく生きるかは、人それぞれだ。

イランは、先進国でもないし、途上国でもない。
アジアでもあってアジアでない。
イスラムであって、どっぷりとイスラムには浸かっていない。
とらえ方が本当に難しい。




つまり、イランは、とらえる人の考え方、思想、心の持ちよう、目線で、見え方が全く違ってくる。

逆にいうと、イランという国を通して、その人の価値観やものの見方も問われるわけで、
イランは相手を試そうとする、試金石?リトマス試験紙?のような国ともいえる。






いい国?嫌な国?
楽しい国?うんざりする国?

正直なところ、日替わりで、結論は変わる。
だからこそ、奥深くて面白い。

ホスピタリティ

2010年06月15日 01時11分01秒 | Weblog
イランはホスピタリティの高い国だと思う。

けれど、昨日油断した。
夜、ジョギングに出かけ、山の上にある事務所で、いつものおっさんたちとおしゃべり。
「水飲むか」と笑顔で勧められ、暑いのでついもらってしまった。
コップは汚れているし、おそらく生水から作った氷も入っていた。

ま、いいか……と思ったら、今日は朝からずっと腹痛に悩まされた。
あの水しか考えられない。




さえない日だなあ……と思ったら、夜は日本がカメルーンに勝利!
ほとんどわからないペルシア語の解説を聞きながら、見入ってしまった。
やっぱり大阪の「ビッグマウス」がやってくれた。

本当は、サッカー中継中に、イラン人家庭に呼ばれていたのに、腹痛が消えず断念した。
ゲームが終わると、日本通のイラン人から「おめでとう」と電話やメールが入る。

やっぱり、ホスピタリティの国だ。

境界

2010年06月14日 02時12分33秒 | Weblog
「境界」ってあってないようなものなんだろう。

性同一性障害を考える連載が興味深い。
もっとも根源的な「境界」である男女の性別ですら、実は絶対的なものではない。
http://mainichi.jp/select/science/news/20100613ddm001100169000c.html


「境界」を作って物事を理解するのは便利だ。
けれど、時にそれはレッテルや偏見につながる。



日本人が抱く外国人のイメージの中で、残念ながらイラン人はたぶん最低ランクだろう。
先日も覚せい剤でつかまっていたし……。

けれど、イラン人の本当の姿ってどれだけ伝わっているだろう。





40代のトルコ系のイラン人Rさんが、20年近く前の日本での思い出を語った。

ある日、通勤電車を東京駅で降りると、女性から「お茶でも飲みませんか」と声をかけられた。
Rさんは戸惑いながらも喫茶店に入り、話をした。



女性「実はこの1週間、あなたをずっと追いかけていたんです。今、彼氏がいないし、友達になってもらえませんか。で、あなたはイタリア人ですよね」
Rさん「いいえ」

女性はイタリア語とフランス語の本を取り出して、続けた。
「では、フランス人でしょう」
Rさん「いいえ、宇宙人です、ハハハ」

女性「イタリア人か、フランス人ですよね。色が白いし、鼻が高いし」
Rさん「イラン人です」

女性「うそ……。そんなことないでしょ……(絶句)」
Rさんはパスポートを見せると、女性は残念そうな顔をした。

女性「じゃあ、いいです」
温和なRさんもさすがに腹が立ち、こう言った。
「あなたは、人間を探しているんですか。それともブランドを探しているんですか」




日本が大好きで、死ぬほどレスペクトしているRさんは、今もまた日本に行きたがっている。
当時に比べ、日本でのイラン人像がさらに悪くなっているのは間違いない。

日本好きなイラン人と話すと、時に複雑な気分になる。

後悔

2010年06月13日 02時47分56秒 | Weblog
つまらんところで、キレてしまった……。

「今日はどうしてた?記者なのに、あそこへ行かなかったのか?写真くらい撮れよ」

いつも通う雑貨店のナンバー2のおやじに突然言われ、つい口論になった。



テヘランに来て半年と少し。デモのたびに、これまで嫌な目に遭ってきた。
今回も現場に出たいのは当然で、やりたいことはたくさんある。
メリットとリスクを考え、今日は街中に出ずに推移を見守った。



それをたしなめられ、ついカチンときた。

「外国人の記者が、今の状況で何ができるのか?。顔を見ればすぐに呼ばれ、カメラを持ってるだけでつかまるんだ。こっちだって、毎日、やれることを考えている」

そう言ったつもり。
けれど、でたらめなペルシア語なので、たぶん伝わったのは5、6割だろう。




今日はイラン大統領選から1年。
町中には大量の警察、治安部隊が配置され、デモは完全に抑え込まれた。

そんな中でも、一部の市民は大きな広場に集まってウロウロし、「何か」が起きるのを期待していた。
雑貨店のおっさんもその一人だった。

リーダーの不在、当局の力の圧倒的な強さ……。
結局、何も起きなかった。




雑貨店を後にして、どっぷり暗い気持ちになった。
自分がキレた理由は、明らかに自分のストレスからだ。

そして、けんかをふっかけてきた相手も、この国のどうしようもならない現実へのストレスからだ。


全くむなしいやりとり。
ただ、後悔……。

玉虫色

2010年06月12日 05時45分41秒 | Weblog
日本通のRさんの携帯電話が、半日不通になった。
いつもすぐに応答があるのにどこか不自然。

これは何か……と思ったらやはり、そうだった。

数時間拘束されていた。
けれど、細かくは書けない。



今この国で、まともな問題意識を持ちながら、気分よく日々を過ごすのはほとんど不可能なことのようだ。

混乱を極めた大統領選から12日で1年。
何も変わらないいら立ちから、テヘラン北部では前日の晩から叫び声がこだましている。

「マルグ・バル・ディクタトル!」(独裁者に死を)




赴任した場所のいいところを伝えるのは記者の役目だろう。
間違って塗られていくどす黒いイランのイメージが少しでも変わればいいとも思う。

実際、イランはさまざまな側面を持つ「玉虫色」を持つ素晴らしい国だと感じる。


けれど、その前には灰色のスクリーンがかかっていて、その玉虫色が次第に見えなくなっていく。

裸のつきあい

2010年06月11日 05時30分21秒 | Weblog
この前の日曜日は新聞休刊日。
(だいぶ遅れてしまった……)

ゴロゴロしているのはもったいない。
午後から1人でほ~んの短い旅に出た。

目指すは、念願のイランの温泉!




テヘラン西部にあるバスターミナルで、イラン西部のハマダーン行きの高速バスを見つけた。
切符は65000リヤル(650円)
目的地と「降りる」という単語だけ並べて、何度も運転手に念押しして乗りこんだ。

イランの長距離バスは、きれいで快適。
いつもお菓子のセットとジュースがつくので、ちょっとした遠足気分だ。




テヘランの町を抜け、1時間もするとただ何~もない土、土、土……が広がる。

目的地に少し近づいたところで、運転手の助手の男性がなんやら手招きする。
「眺めがいいから」と勧められ、助手席に座ることになった。

運転手の男性は横を向いて、笑顔でしきりに話しかけてくる。
思いっ切りわき見運転。
おまけに携帯をいじったり、ハンドルの上にひじをのせたり……。
大型バスの助手席は、眺めはいいものの、なんだか落ち着かなかった。




テヘランを出て3時間半、ようやく目的地に到着した。
10数人いる客のうち降りたのは自分だけ。

町の名前は「アーベ(水)・ギャルム(熱い)」。

まさに、熱湯町!だ。



温泉の共同浴場(ハマーム)は、バスの停留所から歩いて5分。
料金20000リヤル(200円)を払い、地下の浴場へ。


浴槽は、大きなプールのようで、大のおとなが飛び込んだり、もぐったり……。
おっさんたちのプレイランドだった。

「どこから来た?」「この温泉をどうやって知った?」

地元のおっさんは誇らしげだ。
みんなゆったり構えている感じ。




帰りは、出口まで、案内の兄ちゃんが見送ってくれた。

近くのケバブ屋さんでは、珍しい羊のレバーや内臓(腸のあたり?)の串焼きがあったので試してみた。
うん、牛と変わらない。美味。



最初は泊まるつもりで来たけれど、まだ帰りのバスがあるようなので、やはり戻ることにした。
滞在わずか、2時間半。

景気は悪そうだけれど、の~んびりと時間が流れる温泉町を後にした。
帰りは、温まった体でひたすら寝て、深夜にテヘラン到着。


  ×   ×


翌日からなぜか仕事、仕事……が続いた。



再び核問題で緊張し、またイランがどす黒く塗られていく。

米国とイランは、裸のつきあいどころか、口もきかなくなって30年。
この憎しみ合うエネルギー、なんとかならんものか……。



ちょっとした映像や情報でできあがる国のイメージ。
「米国に死を!」なんて叫んでいる国民は、全体のわずか何パーセントか。

ふと、のどかに外で座り込んでしゃべりこんでいる温泉町のおっさんたちの顔が浮かんだ。

足りないもの

2010年06月06日 02時36分15秒 | Weblog
嫌なこと、つまらん失敗をした時は、必ず外食だ。
ガッツリ食べて忘れて、元気を出す。
今日は、ひき肉のクビデ・ケバブに、山盛りメシ。



それでも足りない時はやっぱりケーキ屋だ。
今日は、自分がよっぽど情けない顔をしていたのだろうか。
挨拶したら、入口のレジのおっさんが笑顔で、ギャズ(ぐにゃっとしたイランの銘菓)をひとつくれた。

イランで暮らすと、傍若無人の運転マナーや時間のルーズさに「イラン人ってなんてわがまま」と誰でも思ってしまう。
けれど、いつも声をかけあい、笑顔で応じるイラン人は、本当によく人のことを気遣っている。
自分が困っている時にようやくそれがわかる。



結局、小さいケーキを100円分まとめ買い?した。
家に戻り、よ~し食うぞ!といきがったものの、食べ切れずに残した。

やっぱりアルコールがないと、すっきりしないんだよなあ。
先日は、夢にまでビールが出てきた(笑)



最近、弱気なスイッチが入りそうになると、不思議と先輩、後輩記者からメールをもらう。
それぞれの場で苦労しながら、やりたいことを紡ぎだしているのが伝わる。

足りないものを、だれかが補ってくれる。
感謝、感謝……。

公園デビュー

2010年06月04日 14時39分34秒 | Weblog
何日ぶりだろう。

昨夜、久しぶりに走った。
気温が高くなったこともあって、坂道がしんどい!
何度も止まりながらも、山の上へたどりついた。



風邪ひいて以降、気力、体力が低下したことに加え、なかなか走れなかったのは、夜な夜なデートの誘いがあったせいもある。

娯楽が少ない(ほとんどない?)イランでは、夜の公園はにぎやかだ。
友人、カップル、家族連れ……。
夜中に芝生にシートを敷いてピクニックをしたり、バドミントンをしたり……。
きれいな噴水ショーもやっていた。


流れていたのはロッド・スチュワートの「セイリング」
洋楽の歌詞は厳禁なので、音楽だけ。
でも、結構雰囲気はいい。



先日は、友達になったイラン人が、会社の同僚のレバノン人と南アフリカ人を連れてきた。

いずれも、ばかでかい体の男ばかりで、ひたすらグルグル~と公園の中を歩く。
日本にいると、まず縁のない地味~な時間だ。

でも考えていることはほとんど一緒。
今のイランに足りないものもわかりつつ、何とか楽しもうとしている。

たいしたこと

2010年06月03日 15時45分33秒 | Weblog
イランのタクシーは宝くじのようなものだ。

メーターはほとんどないので、運賃は運転手次第。
けれど、運賃は乗る前に交渉すれば、何とかなるからまだいい。



運転手の能力や車のよしあしは事前には全くわからない。
普通の人でも運転が荒いイラン人社会で、暴走癖のある人に当たると、本当に困ったもんで、酔いそうになる。



よく困るのは道知らずの人。

「○○まで行きたいんだけど、道わかる?」と聞くと、100%の運転手は「わかる」という。
しかし、乗ってみてから「しまった」と思うことがしばしば。
適当に近くまで行ってから、何度も何度も通行人に道を尋ね、それでもグルグル回りながら、なかなかたどりつかないなんてことも……。

予想外に時間がかかっても、謝ったり申し訳なさそうな運転手はほとんどいない。
それがイラン。




昨日は……。

手を上げて止まったのが超おんぼろ車。
扉は今にも外れそう。
車の中はガソリン臭が充満してる(よくあることだが……)。

かなり暑い昼間で、「ああ~あちい~」と繰り返すと、ニコッと笑顔を見せて何やら器具をくれた。
これでどうするん?……と思ったら、はずれた窓を開ける手動の取っ手だった。



つきさしてグルグル回して空けると、生温か~い風が入ってきた。
「どうだ?気持いだろ?」
運転手はニコッとしている。


たいていのことは気にしなければ、たいしたことじゃない。
そう、思うようになった。