わたしは六百山

サイゴンでの365日を書き直す 

ラダック Ⅲ

2005年10月21日 | 雑想
こちら k-603. ラダックの今
「懐かしい未来」によれば、著者ヘレナが1975年にラダックに入った時、そこは現代文明からはずいぶん立ち遅れた社会でした。しかしそこには本来の人と人とのつながりがあり、人と自然とのかかわりがありました。他者への信頼、自然への畏敬、生きていることの喜び、死への恭順、そこでの労働は安らぎのためのものでした。仏教を信じ、人智の及ばない深遠な力に従う謙虚さを持っていました。女性の地位の高さ、老人の社会参加、子供たちへの充分な保護、現代文明が弱者と呼ぶ人々が明るく暮らす社会がありました。

一妻多夫、一夫多妻、あるいは単婚のどれもが共存していました。それは、限られた土地と厳しい自然環境から、ラダックの自給自足経済が維持できる人口を考えたとき、みんなが幸せになれる道だったのです。
人口の調整という面では、僧侶(尼僧も含めて)になるという道もありました。
いやいや僧侶になっていたのではありません。
僧侶になることは、世を捨てる事ではなく社会に必要な人間の一人になることでした。

1975年、ヘレナが最初にラダックに入ったとき、出会った一人の村人がこう語ったそうです。 「ここには貧困などない」
8年後の1983年、同じ村人が言いました。 「ラダックの人を助けてください。こんなに貧しい私たちを」 この8年の間に何が起きたのでしょう。

(以下は「ラダック 懐かしい未来」から)
世界中どこでもそうだが、ラダックでの開発とは西洋式の開発をさしていう。特に道路と発電施設の建設が柱になっている。---- 西洋式の医療と教育がこれにつぐ大きな柱になっている。---近代世界との接触の結果、人口はインド(ラダックは今インドに組み入れられている)の平均を上回る率で増加している。
<観光>
-----観光は外貨獲得のための、開発計画の不可欠な部分となっている。1974年秋の一握りの観光客から始まり、1984年には一万五千人にまで膨れ上がった。大部分は6月から9月までの4ヶ月間に訪れ、しかも人口1万人のレー(ラダック最大の街)に来る。レーにはそれまで一軒もなかったホテルやゲストハウスが百軒以上も立ち並ぶようになった。----観光客は、ラダックの人々を遅れているとみなしている。村の家庭で心からのもてなしを受けた数少ない観光客は、決まってこの経験を休暇中の最大の出来事として話す。だが、ほとんどの人は、ラダックの文化を外側から見ているに過ぎないし、自分たちの文化や経済の経験に照らしてラダックの文化を見ている。----西洋人の目にはラダックの人びとが貧しく見える。--ラダックの人びとの心理的、社会的、精神的な豊かさを見ることができない。
<貨幣経済>
-----経済変化のため、農民でありつづけることが困難になってきた。(共同作業でやっていた頃はお金は必要ではなかったが)今では農作業の労賃があがって支払いができなくなり、仕方なく村を捨てて街で賃金稼ぎをする農民もでてきた。----(他の州から運び込まれる小麦粉に助成金があり、そちらの方が安いので)自分で作物を作るのが「不経済」になってしまい、小麦を作らなくなってきた。
-----(家族を養い、村人を支えあうための)土地は金銭的価値のある商品になった。時間はお金を意味するようになり、(家を建てるためにみんなが集まって労働力を提供してくれるようなこともなくなった)。
-----(安易に手に入る)化学繊維の衣類のために、以前はお金のかからなかった手織りの羊毛の上着は、高すぎて着ることができないものになっていった。
<教育>
------知識を広げ、それを深める、この本来の教育の価値を認めない人はないだろう。だが今日では教育は全く別なものになってしまった。教育は、西洋化、都市化された環境に適した視野の狭い子供に育て、自分の文化や自然から隔離してしまう。----ラダックの子供たちが学校で教わる教育のほとんどは、役に立っていない。ニューヨークの子供が相手なら当てはまる教育だが、ラダックに足を踏み入れたこともなければ、標高3600mの土地で大麦を栽培することも、日干しレンガで家を建てることも知らない人々が書いた教科書で、子供たちは教育されているのである。
<情報>
------ラダックの農民を土地から切り離したその同じ力でこれまで以上に、工業的農法が、従来の農法に代わろうとしている。---化学肥料や農薬は水を汚染し、土壌を破壊する。これらを使うと当初しばらくは収量が増すが、やがて低下していく。(殺虫剤を購入し使用することを勧められる)しかし殺虫剤は自然の害虫防除体系を崩し、(人の体をも蝕む。そういう情報は彼らに与えられてはいない)。

ラダックの今をほんの一部、ピックアップしてみました。最後に、
------特に若い人にとって、近代化された世界が提供しているように見える自由と、気軽に移動できる便利さは、魅力である。---彼らはもう、近所の人や両親、祖父母のいうとおりに従う必要はない。実際、近代化された社会の理想像は、自立した強い男である。

『自立した強い男(女)』 この理想像を社会全体が求めているとしたら・・・。
ここから先は、あなたが考える番です。
あなたが山の尾根に生える一本の木だとして、
遠くから見ても、近づいても、その一本の木は美しくたくましい。
でも、みんなが美しくたくましいって、ある。or?

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1 コメント

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ヘレナさん来日決定!! (ケアテイカー)
2006-03-28 11:43:16
はじめまして。

もうご存じかもしれませんが、『ラダック 懐かしい未来』の著者ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんが来日します。期間は、2006年5月18日(木)~24日(水)の予定です。もしご興味があれば、ご参加下さい。

詳しくは、こちらのサイトをご覧下さい。

http://www.afutures.net/

この本を元にしたビデオの上映会他、いくつかプレイベントを行ないます。ぜひ観に来て下さい。

http://www.afutures.net/modules/news/article.php?storyid=3

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