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「お金」で読む日本史 (本郷和人監修 祥伝社)

2023-01-03 23:17:35 | 日記

「お金」で読む日本史 (本郷和人監修 祥伝社)

 昔のヒトの収入などを何でもかでも現代のおカネに換算していくらと計算した書でなかなか興味深い。歴史の講談本でもドラマでも絹布いくらとか米何石とか言うのが出てくるけど米はともかく絹なんかもろても使い道ないような気がしていた。絹はおカネの代用になったというけれど、まさか絹を少しずつハンカチ位の大きさに切って白菜や大根のお代に支払うわけにもいかないだろう。さすがにどんなふうに使っていたのかということは書いてないけど何でもかんでもお金に換算してある。

 これによると鎌倉の御家人の年収は現在価値で2000万円であったというには驚いた。御恩と奉公という奉公は刀を振り回す命懸けのことだから御恩の方もそれに見合う額が当然支払われていたと思い込んでいた。そこで中学だか高校だかで鎌倉幕府は功あった御家人に褒美を出せなくて(憎しみを買い)滅びましたと言うのを聞いて「御家人は強欲な奴らだ。たんと貰ってたんやろ。」と思っていたのを今頃になって修正することになった。2000万円しかもらってない会社の重役が社長に「福岡でリコール騒ぎが起きたから行ってくれ。部下の滞在費もリコール費用も全部あんたかぶってくれ。」と言われたようなもんだろう。年に10億円くらい貰ってれば、まあしゃあないかと言うことになるけど2000万では滞在費も出せないだろう。わたしは当時御家人は当然今の価格で10億とか100億とか莫大な収入があったと思い込んでいた。

 鎌倉最後の執権北条高時は暗愚なヒトとされているけど、そんなことはないだろう。ちゃんと支払いのできない会社の社長にたまたまなってしまっただけのことで、運の悪いヒトと言うべきである。社員に持ち出しで働かせておいてあとで補填ができなければどうなるかくらいのことは、わかりそうなものだろうに。その部下というのは刀を持っていることを忘れてはいけない。私が高時さんなら頭が痛いの何とか言って執権になるのを絶対逃れるところである。または全然興味ないけど「いや禅宗に凝りましてネあっちの方へ行こう思てますねん。」とか言って逃げ出すところである。高時さんは真面目人間だったんだろう。

 小さいころ「殷の兵士は矛をさかさまにして戦い・・・・・」とあるのを、あんなものさかさまにして持ったら取っ手ではなく刃のところを素手で持つのか、それでは痛くてたまらんなと思ったのでこの文章はよく覚えている。これは殷の兵士は反逆して矛を殷の王様に向けたという意味らしいのだが、漢文は解説を先に読まないと滑稽な誤解をしてしまう。それはいいんですけど、その殷の兵士はきっとこの鎌倉の御家人と同じような扱いを受けたのではないか。

 大きな組織を運営する人は、ご自身が読んでもいいけどご自身が無理なら読む人を身の回りに置いておいて歴史の滅んでいく王朝の滅んでいく様子をいつも勉強するべきだと思う。歴史大河ドラマも出世譚ばかりでなく滅んでいく様子だけに特化して作成するともっと教訓になるだろうに。