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平山洋介さん『住宅政策のどこが問題か』

2009-03-21 00:00:43 | 読書
本書は神戸大学教授であり、住宅政策を専門とする筆者が

戦後の住宅政策を振り返り、これからの住宅政策について

展望を示すものです


【本書の構成】

1章では、戦後の住宅政策と

それが念頭に置いた家族や仕事のあり方

それらが高度経済成長からバブル、さらに市場の機能を重視する経済政策の中で

どのように変化してきたかを概観する


2章では

ケメニーの議論を参照しつつ

諸外国と日本の住宅政策を比較し

持家政策が、とりうる選択肢の一つであることを確認する


3章では、詳細なデータを参照し

ベビーブーマーとベビーバスターの住宅履歴の比較

若年層が住宅を所有するための条件と所有できない実態

女性による住宅所有が困難な状況

不動産資産としての住宅と、その変化について概観する。


4章では

住宅を所有できない層へのセーフティネットである公営住宅と

それについての施策の変化がさらなる住宅困窮者を生んだこと

をコンパクトに論じる。


【筆者の主張】

戦後の日本は

安定した仕事に就き、家族を築き、自分尾家を所有するという

「普通の人生」モデルがあり、

多くの人がそうした人生を送ることで

経済の拡大、社会の安定を支えてきた。


しかし80年代以降は、住宅総戸数が世帯総数を上回るだけでなく

経済情勢が不安定化、経済政策が市場重視へと転換したなどの事情によって

これまでどおりの「普通の人生」を送ることが困難になった。


今後は、特定のライフコースや主義を念頭に置くのではなく、

住宅条件の実態を踏まえた柔軟な住宅政策を行う必要がある。


【感想】

筆者も述べているように

本書は地味で、読みやすくはないものの

身近な問題である住宅政策・住宅問題について

歴史的経緯から、現在の問題まで

コンパクトに知ることのできる本作。


データを丁寧に分析し

飛びつきやすい議論を展開しない点に好感を持ちました。



個別の記述・分析については

その適否を判断できませんが、


たとえば、

2005年の答申などについて

市場重視をあまりに重視しすぎて

中古市場の促進やリフォームの活用といった

ストック重視の側面があまりふれられていないなど

―市場重視、新自由主義、保守主義といった―

「概念」に流され気味ではないかという感を抱きました。


また、個人的にもっとも関心を抱いたのが

公営住宅に関する記述。


いわゆる派遣切りなどによって

住居を失う人が増える中で

公営住宅の役割が再認識される現在

筆者が主張するように

地域の創意工夫のみにゆだねた公営住宅政策で本当によいのか

という筆者の主張は真摯に耳を傾けるべきと思いました。



これから住宅を購入する人だけでなく

現在は住宅を所有している方も、健康状況の変化などによって

住み替えやリフォームを余儀なくされる可能性がある今日。


われわれの一生を大きく左右する住宅政策について、

理解を深めるのにうってつけの著作です☆☆