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魚喃キリコ さん『ハルチン2』

2008-07-29 09:13:42 | 読書
先日(7月27日)の朝日新聞の書評欄で南信長さんが紹介していた

魚喃キリコさんの最新作『ハルチン2』

大好きな作品にもかかわらず、まったくチェックしていなかったので、
すごく嬉しくて、早速買いに行きました

『ハルチン2』は
98年に出版された『ハルチン』の続編に当たる作品。

『ハルチン』は、同じ雑貨屋さんでバイトをする女の子
ハルチン(彼氏なし)とチーチャン(彼氏あり)の日々を描いた作品

マガジンハウスの雑誌『Hanako』での連載にあたっては
「暗いことは絶対に描いちゃいけませんと強くいわれ」たということもあり
(『鳩よ! No197』P57)
著者のほかの作品とは違い、とてもコミカルなストーリーです。

そして、『ハルチン2』では
『ハルチン』の時には、まだ23歳だったハルチンとチーチャンも、
すっかり年齢を重ね―作品中では「約10年」、実際の連載と同時進行なら12年!!―ました。

しかし、ハルチンは、いまだに恋愛未経験でバイト生活
一応、「あたし何処に行くんだろう」と悩んではいるものの
バービー人形に2万近く使ったり、似合わないパーマ(←通称「ビブーティー」)を懲りずにかけてみたり
意味不明な寝言を言ったりと相変わらず

一方、しっかりもののチーチャンは正社員にもなり、
いまでも美人で料理上手ですが
テレビの相談番組に熱くなり、ファッションもリバイバルが始まり
恋愛では、恋愛終着駅に来てしまったりと
確実に老けました

ささやかなせつなさは感じますが
めまぐるしく時代や社会が変わったにもかかわらず、二人の友情が続いていること
そして、思いのほか仕合せそうなことに希望が感じられます


個人的には、しっとりとしたモノローグから一転してオチがつく作品が印象的

代表作である「Strawberry shortcakes」や「blue」などでは登場人物の淡い心情を描くために、効果的に用いたモノローグを
惜しげもなく<ネタフリ>として使用する点に、多層的なおかしさを感じます


なかでも、チーチャンが初々しいカップルを眺めるエピソードは、

モノローグもその後のオチもとても好みです


チーチャンのモノローグを少し引用するとこんな感じ


あんまり長く目が合っちゃうと
恥ずかしくって
下を向いちゃうんだ

話すことがとぎれちゃうと
甘く不安な顔になるんだけど

でも大丈夫

男のコが
すぐにまた
話し始めてくれるから


キュンと来ちゃうよね

キュンと来ちゃうよ



純粋にキュンと来た方だけでなく
懐かしさやほろ苦さを感じた方には、本書を強くおススメします


また、前作『ハルチン』と同様に『ハルチン2』でも
途中で絵の描き方が変化しますので、
その辺に注意しながらそれぞれを比較するのもおもしろいと思います。


さらに、巻末には筆者の日常を記した「ハルチン番外編 ナナナン」も収録

ハルチン同様、バービー人形を集め
毎晩のように酒を飲み
挙句の果てに骨折までしてしまう―

著者の豪快にして繊細な日々が描かれおり、
こちらも併せ読むと、いっそう本編を楽しめると思います。


前作『ハルチン』をお持ちの方や魚喃さんの作品が好きな方以外も、ぜひお読みいただきたい作品です。



なお、上述『鳩よ!』の対談で筆者は
『ハルチン』の連載を一度終了させた理由として

(作品の中で登場人物が成長していく、年を取っていくことを前提に)

「はるちんって、もうすぐ30歳くらいになる設定なんですけど、このまま彼女が異性とかに興味を持たないままだと、どう扱っていいかわからないので終わらせてもらったんです」(57P)

と述べています。

30歳は越えたのに男性に(あんまり)興味を持たないハルチン

続編を描くにあたって、筆者にどのような変化があったのかも気になります。