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黒川博行さん『大阪ばかぼんど―ハードボイルド作家のぐうたら日記』

2008-07-15 00:36:14 | 読書
ヤクザ、北朝鮮、美術品の贋作、悪徳警察官などダーティーな題材と
コミカルで歯切れのいい大阪弁の会話が魅力的な黒川博行さんのエッセイ集
『大阪ばかぼんど ハードボイルド作家のぐうたら日記』

夕刊フジに掲載されたエッセイを6つのテーマ(ギャンブル、夫婦生活、買い物、老化、ペット、車)に分類して収録した作品です。


藤原伊織さん、鷺沢恵さん、東野圭吾さんなど豪華な作家陣や、
馴染みのスナックのママさん、編集者とのマージャン話は、
マージャンのルールがまったくわからない私でも楽しく読むことができました。


Tシャツとアロハ、それにトランクスだけで100円ショップに買い物に行ったり

胸の大きなお姉さんに誘われ、健康食品を売る催眠商法の会場に入ったエピソードなどは、ずっと笑いっぱなしでした。


また、ほとんどのエッセイに登場する奥様がとても印象的。

黒川さんの奥さまは日本画家にして、映像型記憶の持ち主―
夫婦喧嘩では、何年も前の出来事を持ち出して連戦連勝。
あるときは、廊下に這いつくばり、スフィンクスのようになぞなぞを出し
突如として、思春期の乙女になり(黒川さんの)加齢臭がくさいと言い出すなど
とっても素敵な方です。


なかでも好きなのが、株主優待の箱が黒川さんよりも持株数の少ない奥さまの方が大きくて言い争いになる話―
「これはどういうわけや。おれは五千株、きみは三千株しか持っていないのに、俺のツヅラのほうが小さい。納得いかん」
「それはね、あんたが<欲張り爺さん>やからやんか」よめはんは笑う。
「するとなにかい、きみは<花咲爺さん>か」
「ちがう。<花咲姉さん>や」
「えらい老けた姉さんやな」
「誰にものいうてんの」

本書の別の箇所でで
黒川さんは「男と女が共同生活をすることの意味がわからない」という意見に「そういわれればそうかもしれない」といい、
また「結婚生活というものは女にとってのマイナスのほうが大きく、かなしいかな、いまの日本社会ではこれが現実だといわざるをえない。」ともいいます。

この意見にはおおむね賛同しているのですが、
でも、こんなに楽しい夫婦生活を見せられると、結婚もいいかもしれないと思ってしまいます


また、ご親族の死や黒岩重吾さんの葬儀の話は少ししんみりし、心温まる内容。



黒川さんの作品を読んだことのある方にも、
そうでない方にも強くおススメしたい作品です