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山本まさきさん、古田雄介さん『ウィキペディアで何が起こっているのか』

2008-07-20 07:49:18 | 読書
システムエンジニアである山本まさきさんと、
ITやサブカルチャーを中心に扱うライターの古田雄介さんの共著
『ウィキペディアで何が起こっているのか―変わり始めるソーシャルメディア信仰』

現在700万人を越える人々が利用しているといわれるインターネット上の百科事典「ウィキペディア」。
本書はその運営実態や抱える問題を明らかすることを目的に書かれた作品です。


まず1章では、ウィキペディアについて基本的な知識が示されます。概略以下のとおりです。
①ウィキペディアが創始されたのは2001年だが、日本で、本格的に普及したのは2003年以降である。
②ウィキペディアの登場によって、それまで個別のブログやホームページ上でされていた議論が「一つのコンテンツ」上で行うことが可能になった。
その結果、ユーザーは効率よく、公正な情報を手に入れることが可能になった。
③ウィキペディアのユーザーは誰でも項目の編集ができる。
ユーザーには編集を匿名で行う「IPユーザー」と、利用者登録して行う「ログインユーザー」がいる。
④各コンテンツごとに、ユーザーの選挙で選ばれた「管理者」がおり「ブロック」や「保護」などの権限を有する。
さらに、一般の「管理者」よりも権限の大きい「ビューロクラット」と「スチュワード」がいる。
⑤ウィキペディアの基本的なルールは5つ
―偏見を避ける、独自の調査を載せない、著作権を侵害しない、ウィキペディアは百科事典、他の参加者へ敬意を払う


2章では、これまでにウィキペディアで起きた事件を紹介します。

挙げられるトラブルには、省庁や企業の関係者が自分たちにとって都合のいい情報を掲載・不都合な情報を削除した、有名人に対する中傷記事の掲載、気に食わないユーザーへの脅迫、議論の妨害などがあります。

3章では、ウィキペディアの管理体制を概観しながら、中立性・公正さを維持するための取り組みと問題点を論じます。

4章では、ウィキペディアの管理者を務めている人物、ウィキペディアに対して批判的な立場の人物、インターネットに詳しい弁護士のインタビューを掲載

終章である5章では、ウィキペディアを含む「ソーシャルメディア」(「情報を効果的に共有する仕組みを持ったサービス全般」のこと)について、その中立性・公正さ、さらに反権力、反既存メディアの観点から論考します。


本書は文章が平易で、実際のウィキペディアの画面も掲載されています。
そのためウィキペディアをほとんど見たことがない私でも、それがどのようなものなのか、どのような問題を抱えているのかを簡潔に知ることができました。

また、5章ではソーシャルメディア全般について論じているので、幅広く現在のネットが直面する問題について把握できます。

ただ時々、論理がアレな箇所があります。

たとえば182ページではこんな具合

読売広告社が2002年に実施したアンケートでは、政治、マスコミ、企業、人の順で消費者の不信感が強い。
 ↓
海外でも、マレーシアでは20~31歳の世代では64.5%がブログをはじめするインターネットメディアを信頼しており、テレビや新聞への信頼は低かった。
 ↓
ソーシャルデータを信仰し、既存の情報全部をソーシャルメディアで置き換えようとする動きも、こうしたデータを見れば無理からぬことだ




……はい?

こういう箇所がしばしばありますので、これが気にならない方にはおススメします。