冷蔵庫が開いていると、自動的に「とびらが開いています」とうなる。
風呂が沸くと「お風呂が沸きました」と。そのたびに、うるさく思わないだろうか。
下重暁子著 『持たない暮らし』
1 無駄な音をもっと、少なくできないのか?
それらに慣れると、もともと持っていた感覚を失う。機械に頼る。
風呂は何分で湧くか、御飯は何分で炊けるかなどの普段持っていた感覚が鈍る。これらに頼るから、ボケてくるのではないか。
ヨーロッパ人はそれを知っている。頑固に守る。
古き良きものを大事にすることは、人間の感性を豊にするはずだが。
僕は、これら便利な利器を使わないではいられない。改良してほしい。声を出さない炊飯器や冷蔵庫が欲しい。
2 多く友達はいらない?
「ものを書く職業だが、自分の肉体を使う。できるだけ、手書きで字を覚える。意味を知るにも辞書を引く。図書館へ行って調べる。一見、無駄と思えるものが、「考える」余裕を与えてくれる。
人と人とのかかわり合いも、出来る限り、面と向かって話をする。表情で細かな感情がわかる。
広く浅くつき合ってもどういうことがあろうか。
友達は一人でいい。深く理解し合うことができれば。
広く浅くから狭く深く、効率的な便利さから、自分のこだわる美意識へ。」と。
手書きで書くと頭に残る確率が高まる。しかし、パソコンで打っても、何も書かないよりましだと、思う。
今、しているフェイスブックは相手の顔がわからない。だから、どこまで、真の友達になれるか謎だと思いながらしている。
3 身の周りは余計な物ばかりで時間を奪われる?
「本当に美しいものはさりげない。
いらない物を取り払った空間、茶室は、千利休の哲学のこもった空間。たった四畳か三畳の部屋に、武士も町人も刀を取り払い、同等になって、一服の茶を楽しむ。日本の美学だ。
豪華なもの、便利で効率的なものばかり追う日本人。本物の美しさを見る目を失ったのではないか。
予定や物や、眼に見えるものがたくさんあればるほど、人間は縛られる。物がなければとらわれない。この上なく自由だ。富や贅沢や欲望から自由になれれば、本当の贅沢を知る。
贅沢とシンプルとは、相反するようだが、実は、シンプル生活こそ、心の贅沢があると思う」と。
山登りをすると、小鳥の声、梢を行き過ぎる風の音。土中から目覚める植物のざわめきなど聞こえる。
人間も自然の一員と思い知らされる。
その声があっても、聞こえないのが現実ではないか。
散歩をしても、健康のために速歩きとか、イヤホンを聞きながらとか。余計な知識に振り回されていないか。その意識があると、自然の声から遠ざかる。
予定表を書くのは仕事や勉強のため。しかし、毎日、これをすると、心が自由にならない。何かに縛れる。精神的貴族になれない。
4 ちょっといい物は買わない?
白洲正子さんが言うには
「ちょっといいもはよくない、
ちょっといいわねえ、と言って、買わない事」と。
骨董では見る目が試される。目がなければ、偽物を高く買うことに。目をつくるには、本当にいいいもを日頃からたくさん見る事だろう。
美術館めぐりも大切だし、ウインドウショッピングも役に立つと思う。普段からその気になって物を見る。衝動買いをしたくなる時、役立つ。
5 自分が持っている物をわすれるなら、大したことのない物?
「年寄りは物を捨てられないのは、自分が持っていることを忘れてしまったので、みなとっておくことに。
忘れている物は、自分のなかで必要がなかったわけだから、記憶の彼方に追いやられている。
ボケても、大切なものは憶えているという説もある。
いらないものは捨てた方がいい。いるいらないは判断は、記憶を頼りにする」と。
僕は、読書でも言えるのではないかと思う。
読んで忘れる本は自分に大した本ではないと。大切なら読後、何か残っているはずだ。
6 欧米では恥ずかしい事が日本で起こる?
著者のアメリカの友人が、日本では考えられないものがはやるという。
「一つ目がブランド品、二つ目がバレンタインデーのチョコレート。三つ目が紙袋。
一つ目のブランド品は、有名ブランド品を買い漁り、みんな同じものを着て、同じバッグを持つ。
人と同じ物を身に着けるのは、その人に個性がないことで恥ずべきことだが、日本では、人に遅れる、人と同じでないことが恥ずかしいという感覚がある。
自分がないから人が気になる。同じことをしていないと不安になる。
欧米では自分で考えたり、選んだりできない人は認められない」と。
同感である。休日に食べ歩きと言って、一つの店に行列を作りだす。時間の無駄も考えずに。
テレビの言う事を世論と勘違いしているのではないか。
二番名は、バレンタインチョコ。聖バレンタインに由来する日を日本人はチョコレートの日に変身させた。
聖バレンタインの事を何も知らず、チョコレートだけが行き交う。
なぜ日本人とチョコレートなのか。戦争直後にさかのぶるのが著者の説。
「敗戦で、物不足の日本では、食べ物に困り、子供たちは進駐軍のあとからついて行き、「ギブミー・チョコレート」と手を差し出した」と。
三番目は紙袋。「なぜ、日本人は猫も杓子も紙袋を持って歩くのか。
ほとんど企業や店の袋。みんな宣伝を買って歩いているようで、みっともない」とアメリカの友人がいう。
ドレスアップして紙袋はみっともない。
僕は、やはり、有名ブランドを買ったぞ、と見せびらかしたいからだと思う。
あるいは、ゴミ袋にするためにもらうのか。
7 情報に惑わされずに、自分を作るには?
情報が多すぎる。テレビ、新聞、ラジオ、雑誌、携帯、パソコンと。
シンプルに考え、シンプルに生きたいが、状況が許してくれないと。
では情報にわずらわされない方法は?
「答えは一つ。自分を持つこと。いかに情報が多かろうと、選ぶのは自分だ。自分が情報を使うのであって、情報に自分が使われるのではない。
人間がそこにいないから、引きずり回される。どんな場合も、毅然と自分がいれば、間違いはない。
それでは、自分をどうやって作るのか。
日頃から、人の話に耳を傾けるのは大事だが、決断は自分。はやっているから買うのではない。自分が欲しいから買う。友達がやっているからやるのではない。自分がやりたければやる。やりたくなければやらない。
一つの方法として、人と同じことはしない。必ず違うことをする。
友達が買った物を買わない。必ず違うものを買う。他人の意見に従うのではなく、自分の意見をもつ。
万一、同感と思う場合、同感、と言った後で、その事を自分なりに解釈して、違う表現を言ってみる。主語は夫や、子供や友達でなく、自分にする。
「私は・・・」とはじめれば自分の考えを言わざるを得ない。そうして、自分で決めればその結果がどうなろうと納得できる。自分で責任をとらざるを得ない。いつも人の考えに従うと、自分で決断できず、一生人のせいにする」と。
私は、・・・だ、私は・・・である、と書くと、自分の人格に自信が持てるような気がする。これらを多用してみては。
8 詐欺師はよくしゃべる?
著者は余分な思惑を考えず、自分に忠実にと心がける。言葉を話す前に一度頭のなかで考え、心で反芻してから口に出す。余分なことは言わない。お世辞や媚びは売らない。
「電話で、こちらの都合も確かめず一時間もしゃべりまくる人がいる。
一見ソフトだが、あの手この手でしつこく説明する人。詐欺師はだいたいよくしゃべる。テレビに映るその顔を見ると、なぜ騙されるのかわからないほど、胡散臭い。
見る目さえ養えば、その人の話し方と言葉でだいたいの見当はつく」と。
見知らぬ人でこの人は信用を置けるか判断するには、人相に頼るしかない。
だから、面接試験なども、第一印象を採る方も方も大事にする。
しかし、日が過ぎて、相手と話し出すと、第一印象が薄れて、騙されることが多いのではないか。言葉はやはり魔物だ。