ヨーロッパの限りない大地

ヨーロッパの色々な都市を訪問した思い出をつづっていきたいです。

ノートルダム フランスの魂(前半)

2021-07-16 20:05:12 | パリの思い出


ノートルダム フランスの魂
アニエス・ポワリエ 著
木下哲夫 訳
白水社 発行
2021年4月10日 発行

2019年4月15日、火災に遭ったパリのノートルダム大聖堂。
その時の緊迫した状況や、その後の再建に向けての混乱、
そして大聖堂建築時に遡り、そこから各時代のノートルダムを舞台にした出来事まで、生き生きと描かれています。

まえがき、より
ノートルダムは人類が建築の分野で成し遂げた最も偉大な成果のひとつであり、文明の顔、国家の魂である。神聖なのに世俗的、ゴシック様式なのに革新的、中世のものなのにロマンティックなノートルダムは、神を信じる者にも信じない者にも、キリスト教の信者にもそうでない者にも神と出会い、難を避ける場をつねに提供してきた。

1 2019年4月15日 火災の夜
「ある夜、わたしは死んだ」 フィリップ・ヴィルヌーヴ

ノートルダムの火災の鎮火のため、聖遺物を破滅から救うため、建物自体の崩壊を防ぐため、消防士や様々な関係者たちの緊迫した一夜

2 1163年 礎石
「いつの日かこの偉大な建造物が完成した暁には、比較を絶するものとなろう」 ロベール・ド・トリニー

12世紀半ば、首都パリはいましも経済、政治、地域、文化、芸術すべての面で驚異的な拡張を始める門口に立っていた。p47
少しずつパリは四通りの使命を我が物とする。
国王の都、商都、司教の都、そして大学都市として。
「学校が続々と現れる狭い小路に新たな精神が誕生した」p51

ノートルダム・ド・パリの建設、そしてより広くはシテ島の色直しの資金を出したのは誰なのだろうか?
下は貧しいパリ市民から、上は国王と側近に至るまで寄付をしたが、大部分はモーリス・ド・シュリー司教の職に伴う莫大な収入が出所だったらしい。p52-53

西側の正面では、多数の住居を根こそぎ取り壊すには、シュリーに買い上げてもらわなければならない。しかし厄介な家主がいて、ある夫婦には取引を完了するには、教区側が譲歩を重ねても、三十年を要した。p60

3 1594年と1638年 ブルボン王朝
「パリはミサを捧げるに値する!」「レ・カケ・ド・ラクーシェ」(諷刺雑誌)

パリに逆らって統治は叶わないと悟り、カトリックに改宗してノートルダムに参拝し、新旧教徒争う三十年にわたる戦争により分断された国家の融和を成し遂げたアンリ四世

アンリの息子、ルイ13世は王冠とフランスの命運をノートルダムの聖母マリアに奉献する。

4 1789年 理性、最高存在、そしてワイン
「授任式は宗教的であるべきであったのに、ほぼすべて軍隊式だった」

1789年7月14日のバスティーユ襲撃は、一大事としてフランス人のDNAに、全世界の想像力に刻印された。
ところがその翌日にはノートルダムに集い、勝利のテ・デウムで祝ったことを覚えている人はほとんどいない。

革命、そして恐怖政治の間、オルガニストは聖歌に替えて革命歌と「ラ・マルセイエーズ」を奏す。
革命派にできたのは、聖母の黄金の王冠を取り去り、ファサードの28名の王の首を取っただけ。

恐怖政治の間は最高存在を称える祭典が行われ、ノートルダムの他の部分はワインを保管する倉庫に転用された。p86

5 1804年 ナポレオンの戴冠式
「皇帝万歳!」

ナポレオンがノートルダムを当初の信仰へ復帰させる。
そして戴冠式を執り行うことにより、ノートルダムをフランスの公的、政治的な営みの中心に据える。

ナポレオンの自ら戴冠する行為の前列は、複数のスペイン国王とロシア皇帝がすでに試みていた。
しかし教皇の面前で執り行なわれたことは絶えてない。p95

6 1831年 ヴィクトル・ユゴーの小説はいかにしてノートルダムを救ったか
「これがあれを救うだろう」

ユゴーの仮説
歴史が始まって以来十五世紀まで、建築は人類の書物だった。
印刷の発明はしたがって建築の死を意味する。
ゴシック様式の大聖堂は建築の精華、大聖堂は石でできた最後の、そして最高の一冊にほかならない。p114-115

ユゴーはノートルダムの小説で二つのことを成し遂げようと思った。
・一時の流行とは異なるまっとうな中世の姿を描くこと
・フランスの歴史的建造物の置かれた惨状、崩落するにまかせ、やがては不動産開発業者の手であっさり取り壊される現況への意識を高めること


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コンピエーニュ城庭園の5の目形?並木

2021-07-11 07:01:51 | フランス物語


コンピエーニュ城庭園の並木を撮っています。
この写真もきれいな遠近法になっています。
この場所は庭園内でQuinconcesと呼ばれています。庭園の左右に同じ様式で配置されているため、複数形になっています。
Quinconceの意味を辞書で調べると、(さいころの)5の目形[の配置]、5点形;5の目形の植え込み、と書かれていました。
ただ、画像を確認すると、単に並行に配植されているだけのような気がします。
5の目形の真ん中が見当たりません。
ここでも謎が深まる、コンピエーニュ城の庭園なのでした。
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コンピエーニュ城庭園中央からの眺め

2021-07-10 07:09:48 | フランス物語


コンピエーニュ城の庭園の真ん中辺りまで、たどり着きます。
木々の間に、翼を伸ばした、白くて平べったいコンピエーニュ城の姿が見えます。



城の反対側に目を転じます。
門のような場所の向こうには、まずDemi-luneと呼ばれる半月型の場所があります。
辞書には半月堡という訳が載っていました。これは築城用語のひとつで、日本では五稜郭に見られる三角形状の出塁のことを表します。
コンピエーニュ城の場合、防御的役割はほとんどありません。それより庭園のデザイン的なものかもしれません。門のところを起点に放射状にルートが造られています。
その中心、真っ直ぐに伸びている道はallée des Beaux-Monts、ボーモン散歩道と呼ばれています。
画像では先は白く霞んでいます。
5キロほどの長さで、突き当たり付近には展望台があるそうです。
こんな散歩道をのんびり歩いて、展望台にたどり着き、そこからの眺めも楽しむ、という優雅な時間を過ごしたいものです。

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アルザス欧州自治体(CeA)の議長選挙と常任委員会担当者

2021-07-03 20:13:08 | フランス物語


アルザス欧州自治体議会の選挙後、初召集された議会での議長選挙と、常任委員会の担当副議長についての記事を訳してみました。
訳だけでなく、お名前などの固有名詞の日本語表記も怪しいものが多いですが(笑)ご了承願います。

就任会議:選挙結果
Séance d'installation : résultat de l'élection

2021年7月1日のコルマールでの就任会議中に、アルザスの80人の議員の投票を受けて、アルザス欧州自治体の議長に選出されたのはフレデリック・ビエリー氏です。
C'est M. Frédéric Bierry qui a été élu président de la Collectivité européenne d'Alsace suite au vote des 80 Conseillers d'Alsace lors de la séance d'installation du 1er juillet 2021 à Colmar.

投票結果
80人の投票者
フレデリック・ビエリー 75票
ルディヴィーヌ・キンタレ 4票
白票 1票
第1回投票で、フレデリック・ビエリーは75票(絶対多数:41)を獲得したため、アルザス欧州自治体の議長になりました。

Résultat du dépouillement
80 votants
75 bulletins Frédéric Bierry
4 bulletins Ludivine Quintallet
1 bulletin blanc
Au premier tour de l'élection, Frédéric Bierry remporte 75 suffrages (minimum nécessaire : 41) et devient donc le Président de la Collectivité européenne d'Alsace.

(ルディヴィーヌさんはEELV(欧州エコロジー緑の党)在籍です。彼女に投票したのは、会派数から判断して、緑の党と社会党の議員ではないかと推測されます。あと白票はおそらく共産党の議員ではないかと思われます。どちらもあくまでも推測です)

常任委員会の構成
選出されたすべての議員は常任委員会のメンバーです

Composition de la Commission Permanente
l'ensemble des élus sont membres de la Commission Permanente

15人が副議長となります

15 sièges sont donnés à la vice-présidence :

中央アルザス地域と地域格差是正を担当するピエール・ビル
Pierre Bihl en charge du territoire Centre Alsace et de l'équité territoriale

アルザスの公共サービスと住民連携公共活動の変革を担当するイザベル・ドリンジャー
Isabelle Dollinger en charge du service public alsacien et de la transformation de l'action publique en lien avec les habitants

南アルザスのサン・ルイ=ズントガウ=トゥール=ドレ地域を担当するニコラ・ジャンダー
Nicolas Jander en charge du territoire Sud Alsace Saint Louis-Sundgau-Thur-Doller

経済、観光、農業、雇用、エネルギーと気候変動を担当するカトリーヌ・グラフ=エカール
Catherine Graef-Eckert en charge des dynamiques économiques, touristiques, agricoles, de l'emploi et de la transition énergétique et climatique

コルマール地域担当のエリック・ストローマン
Eric Straumann en charge de la région de Colmar

効率化と財政緊縮担当のララ・ミリヨン
Lara Million en charge de l'efficacité et de la sobriété financière
(可愛いお名前の議員さんですね(笑))

ネットワークと流動性を担当するジャン=フィリップ・モーラー
Jean-Philippe Maurer en charge des réseaux et mobilités

連帯、住居、貧困との闘いを担当するファティマ・ジャン
Fatima Jenn en charge de la solidarité, de l'habitat et de la lutte contre la pauvreté

ストラスブールのユーロメトロポール地域担当のジャン=ルイ・オルレ
Jean-Louis Hoerlé en charge du territoire de l'Eurométropole de Strasbourg

アルザス遺産と威光担当のパスカル・シュミディガー
Pascale Schmidiger en charge du patrimoine et du rayonnement alsacien

ミュルーズ都市圏担当のマルク・ムンク
Marc Munck en charge de l'agglomération de Mulhouse

西アルザスサベルヌ-モルサイム地域担当のミシェル・エスリマン
Michèle Eschlimann en charge du territoire Ouest Alsace Saverne-Molsheim

若者、スポーツ、教育的成功と二言語併用を担当するニコラ・マット
Nicolas Matt en charge de la jeunesse, du sport, de la réussite éducative et du bilinguisme

高齢者や障害者の健康と達成担当のカリーヌ・パグリアルロ
Karine Pagliarulo en charge de la santé et de l'accompagnement des personnes âgées et des personnes handicapées

北アルザスアグノー-ウィッスンブルグ地域担当のアンドレ・エルブ
André Erbs en charge du territoire Nord Alsace Haguenau-Wissembourg

(アルザス欧州自治体内の地域については、添付の表がわかりやすくて、たいへん参考になりました)













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フランス地域圏(州)議会選挙の最終結果と前回との比較

2021-07-03 06:18:00 | フランス物語




上は2015年のフランス地域圏(州)議会選挙の勢力図で、下は今回の勢力図です。
右派と左派の配置は同じです。
コルシカは地域政党が勝利しています。
備忘録として、今回の結果をまとめた記事を貼りつけておきます。


【パリ時事】フランスで27日に行われた広域地方自治体「地域圏」議会選(比例代表、2回投票制)決選投票で、マクロン大統領の国政与党「共和国前進」と、ルペン党首が率いる極右政党「国民連合(RN)」は、いずれの地域圏でも第1党の座を獲得できなかった。

 仏メディアは、マクロン氏とルペン氏の対決が予想される来年の大統領選の構図が変わる可能性があると報じている。

 今回の選挙は、これまで人種差別的なイメージにより根強かった極右政党に対する国民の嫌悪感が、ルペン氏の穏健化戦略でどこまで解消されたかを測る指標として注目を集めていた。

 第1回投票では、マルセイユ市を含む南仏の地域圏でRNが首位に立った。だが、決選投票では国政野党共和党が反極右票を集め、RNに約15ポイントの差をつけて第1党の座を奪取。ルペン氏の穏健化戦略は不発に終わった。

 共和国前進は、決選投票に進んだいずれの地域圏でも首位の党に大差をつけられ、惨敗した。マクロン氏再選へ向けた票の掘り起こしを狙ったが、地方での支持基盤の弱さが改めて浮き彫りとなった。

 一方、共和党を中心とした右派グループが最多の7地域圏で首位に。野党社会党などの左派グループも5地域圏を掌握した。

 北部オードフランス地域圏では、すでに大統領選出馬を表明している元共和党所属のベルトラン氏を筆頭とする右派グループが、50%以上の得票率でトップに立った。ベルトラン氏は支持者らに向けた演説で「この結果は、全てのフランス国民に会いに行くための力を私に与えてくれる」と強調。大統領選出馬への決意を改めて示した。

 28日付の仏紙フィガロは「国の主要な政治勢力という右派系の地位が強化され、マクロン、ルペン両氏の一騎打ちにはならない可能性がある」と指摘し、来年の大統領選の行方を予想した。

 海外県を除く本土の13地域圏は複数の県を束ね、国に次ぐ権限を持つ。20日の第1回投票で10%以上の票を獲得した党が決選投票に進出した。


今回の結果を受けて、第3の有力な大統領候補が出てくるのか気になるところです。
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