松岡徹の「一生懸命」

日本共産党・熊本県議「松岡徹」の日々の体験・活動、「県政だより」などを発信します。

奨学金滞納者を裁判にー反対討論をしました

2013-02-28 11:51:29 | 日記
 熊本県議会では、県の奨学金の返済滞納者を裁判にかける議案がたびたび出され、日本共産党の私以外の賛成で議決されることが繰り替えされています。
 こうしたあり方では、奨学金問題は解決できません。悪循環を断ち切って、貸与制、有利息から給付制への改革をなど、反対討論で訴えました。


少し長いですが
 

 日本共産党の松岡徹です。知事提出議案第32号に対する反対討論を行います。第32号議案は、県の育英資金の返還金の督促に対する異議申し立てがあり、民事訴訟法第396号の規定により訴訟に移行したというものです。
 異議申し立ての内容は、返納金の滞納については、分割して払いたいというもので、返納の意思はあるものと判断できるものです。これに対する県の要求は、延滞返納金および延滞利息を一括して支払えというものです。一般に、国税徴収法、国税通則法にも分納は規定されており、様々な問題が絡む育英資金滞納へのこうした対応は甚だ疑問です。
 近年、奨学金の返納金の滞納に対する訴訟という案件が繰り返し議案として出されてきますが、こうしたやり方では基本的な問題は解決しないし、逆に将来ある若い世代に、痛みと不幸を拡大再生産するもので反対です。 

 教育基本法第3条 は、「 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない」としております。
熊本県の「夢応援進学給付金支給」制度は、生活保護世帯から大学に進学する者に対して給付金を支給するというもので、優れて教育基本法第3条の精神にたったものです。
私は、この精神にたって、奨学金問題でも、現在のやり方を繰り返す悪循環から脱して、奨学金を元の無利子に戻すこと、返還猶予・免除措置の拡充、給付制奨学金導入を国に求めながら、県としてもそうした方向での具体化を目指すべきだと考えます。

 政府は昨年9月、国際人権規約A規約の留保撤回を決定しました。同規約は1966年に採択され、日本は1979年に批准したものの、中等・高等教育への「無償教育の斬新的導入」の規定については留保したままでした。規約加盟国160ケ国中、留保していたのは日本とマダガスカルだけでした。日本の政治の後進性を象徴するような30年以上の留保という驚くべき年数を経ましたが、中・高等教育の無償化は政府の国際公約になりました。政府は国際公約に従って、速やかに、中等・高等教育無償化の制度化と予算化をはかるべきであり、熊本県としても、この立場にたっての改革を考えるべきです。

 世界では高等教育の無償化が大きな流れとなっています。OECD加盟の34カ国のなかで半分の国が大学授業料を無償化しています。返還の必要のない給付制奨学金を導入している国は34ケ国中32カ国と圧倒的多数です。

 財源の話がすぐ出がちですが、国として給付制奨学金導入に必要な予算は、高校生向けで102億円、大学生向けで147億円であり、米軍への「思いやり予算」の7分の1であり、日本共産党以外の政党が受け取っている政党助成金の1年分320億にも及ばないものです。

 熊本県は、昨年7月の「国の施策等に関する提案」で、県が「夢応援進学給付金支給」制度で、生活保護世帯から大学に進学する者に対して給付金を支給する取り組みを行っていることを紹介しながら、国に対して「生活困窮世帯等から大学等への進学が可能となるよう」対策を求めています。同感だし、敬意を表します。
私は、これに加えて、熊本県として、国に対して給付制奨学金の制度化と自治体で実施する給付制奨学金への助成を求めることを提案いたします。

 奨学金は、経済的理由で進学ができないということがないように、国民に教育の機会均等を保障するための制度です。現在、学生の半数以上がなんらかの奨学金を利用しています。
ところが、貸与制、有利息の奨学金制度が、大学生、大学院生などの勉学を脅かし、ひいては日本の学問と科学、文化の発展を妨げる重大な要因となっています。
 
 日弁連が先日行った「奨学金返済問題ホットライン」による電話相談では、「生活が苦しく奨学金返済ができない」が4割を超えています。「650万円借りたが就職先が見つからない」「生活保護を受けている。自己破産を考えている」等々の深刻な声が寄せられています。
 学生団体、全日本学生自治会総連合の調査では、「バイトが週5日はいっている。奨学金は有利子のものを借りており、卒業後は300万円のお金を20年かけて返済していかなければなりません。しかし就職できるか、就職できても返済できるか不安です」「利子を含めて700万円を払わなければならない。こんな思いをする人をこれ以上つくってほしくない。もっと学生のことを考えてほしい」等々の声が寄せられています。
「学費が高い、バイトをめいっぱいしなければならない、くたくたになり、授業中は眠くなる」「大学院に入って、もっと勉強したいが、奨学金の返済が700万円にもなる、とてもじゃないと大学院をあきらめた」「大学を卒業しても、果たして就職があるのか、あったとして、500万円,700万円の支払いができるのか」「結婚する相手に、『私は700万円の借金を抱えています』―といえるのか」等々
―前途ある若者から様々な、悲痛な訴えがなされています。
 まさに学生残酷物語、奨学金残酷物語です。
 
 日本学生支援機構の調査によると、同機構の奨学金滞納者は、2011年度末で約33万人、返還対象者の10%以上にのぼっています。返せない理由の60%以上が「家計収入の減少」で、滞納者の約55%が派遣やアルバイト、失業・無職となっており、89・3%が年収300万円未満です。
政治の貧困がつくり出している就職難と不安定雇用が若者を追い詰めているのです。

 私は重ねて強く訴えたいと思います。
奨学金問題を巡って、返還金の滞納は裁判という展望のない悪循環を教育委員会も知事も議会も断ち切って、中等・高等教育は無償という原則にたっての思い切った奨学金制度改革に踏み出すべきであり、国にも強く働きかけるべきです。
 先にふれましたが、生活保護世帯の子女の大学進学への援助という画期的な施策を実行している熊本県が、奨学金改革に率先して踏み出し、国にも働きかけていくことを求め、討論を終わります。

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