5月10日、横浜市教委が小学校等の2019年度「教科書採択基本方針択」を決定し、
「教科書取扱審議会」に諮問しました
当日午後、傍聴したメンバーでとりあえずの評価を検討しました。
今回の小学校教科書採択から改訂された新学習指導要領の教科書になりますので、
採択方針に変化がありましたが、全体としては危惧をいだくような変更はありま
せんでした。しかし採択にあたっては、各学校の教員の意見を聞く手立てをこう
じてほしいということ、採択地区を細分化すべきという求めには応じていません。
この「採択基本方針」はとても重要です。
なぜなら問題の市内で使用中の育鵬社の歴史・公民教科書など の中学校教科
書の採択は、来年度であり、「採択基本方針」や教科書を評価する基準となる
「調査項目の観点」などは今年度版を踏襲することが予想されるからです。
大きな変更点は、取扱審議会に諮問する各教科書の調査で、評価項目となる
「採択の観点」の部分でした。
観点は3種類あり、さらに観点1は3項目、観点2は6項目、観点3は2項目、
合計11項目の評価基準が設定されています。
審議会への答申の教科書評価で最も評価にばらつきが出る、つまり採択理由に
深く関わる「調査項目の観点2」がまったく新しい文面になりました。201年度と
の比較はしにくいのですが、消えた文言と新たに登場した文言で気付いた点を末
尾に挙げておきます。
また、教育委員からは、「障害その他の特性の有無にかかわらず」の部分の「有
無」の削除が修正提案されました。納得のいく提案でした。教育委員が熱心にこ
の基本方針案を読み込んでいることが判りました。
素人としては、全体によい方向になったと受け止めています。教職、行政職だ
った方の深読みを是非お知らせ下さい。
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<「採択基本方針」の主な変更点(旧指導要領に基づく2018年度との比較)>
・「権限と責任」が「判断と責任」に変わった
2018年:教育委員会の権限と責任のもと~採択を行う → 2019年:教育委員
会の判断と責任のもと~採択を行う
※文科省等の文書ではすでに「権限」を「判断」に言い換えているが、市教委
では初めて修正した。文科省が「権限と責任」を「判断と責任」に改めたのは、
法律学的には「教育委員会に採択の権限がある」とは断定できないため?
ちなみに神奈川県教委の採択方針は今年度も「権限と責任」のままでした。
・「横浜版学習指導要領」が「横浜教育ビジョン2030」に
「第2期横浜市教育基本計画」が「横浜市立学校カリキュラム・マネジメント要
領」に変わった
※横浜が目指す子どもの姿や採択の観点は、「横浜教育ビジョン2030」「横浜
市立学校カリキュラム・マネジメント要領」基づくとしています。今まではこの
部分で示されていたのは「横浜版学習指導要領」や「第2期横浜市教育基本計画」
でした。この二つは賞味期限切れになってきたということなのではないでしょう
か。
「調査項目の観点2」で気付いた文言
・2018年にあった「横浜の歴史や伝統・文化を尊重し」→ 「横浜の歴史や伝統
文化を理解したり」
※一律に「尊重」を求めるのは内心の強制ともいえるので、「理解したり」に
なったのはよいことだと思います。
・上記と同様に、「家庭や地域との絆を大切に」の文言や家庭・地域に触れた文
言が無くなりました。
・初めて「人権教育」の文言が入りました!「『だれもが』『安心して』『豊か
に』という人権教育の方針を踏まえ」という文面です。