霊の「関東……もとい、長州ウォーキング」

「関東歩き旅」の続編で、「長州歩き旅」を始めました

韓国フェリー転覆事故で感じること

2014年04月29日 | 雑感

2014年4月29日(火)

あの事故から既に二週間が経とうとしているが、行方不明者が未だに100名近くいることに、私だけでなく多くの方がとても切なく感じていると思う。そして、その多くが高校生ということも、より一層悲しみを増幅させてしまう。

ただ、これまでのマスコミの報道やネットの情報を見た限りで書かせていただくなら、起こるべくして起こった「人災」であると言わざるをえないことが、悲しいけど現実のような気がする。
私自身、元船乗りという立場から、一般の方からとは少し違った目線で、この事故を振り返ってみます(順不同)。

1.船首の腹(下部)を上にして、仰向けに転覆・沈没していった画像

まず、この画像がテレビから流れた時に、とても違和感を覚えました。小型船と違って、大型船が転覆する際に、あの様に船首の腹を上にすることは、通常はありえないはずだからです。
大型船では通常、船体の下部には、燃料・清水(飲料水)・バラストの三種類のタンクがあり、それぞれが何層かの隔壁に分けられて、その量を細かく調節できるようになっています。
仁川出港時には、燃料と清水は当然満タン状態であったはずですが、報道されているように過積載であったとすれば、バラストタンクをほぼ空の状態近くにしないと喫水が深くなり過ぎて(船が沈み過ぎて)、港長から出港許可を得られません。
ぎりぎりの喫水で出港したであろうと推測できますが、仁川出港から半日を過ぎて、燃料や清水が減ってくるので、本来ならバラストタンクに海水を入れて船体の安定を図るはずで、通常は船内では「一等航海士」がきめ細かくこれらを管理します。ところが、この画像です。私には、バラストタンクが空のままで航行を続けていたとしか思えませんし、それならば、この画像が納得いきます。
と言っても、一等航海士が単独で、バラスト水を不法に操作して喫水を誤魔化したとは考えにくいので、船長も当然知っているし、仁川港の港湾管理者、荷主、船主などの関係部署の人々も一様に知っていたはずです。
・・・それは、(日常的な)違法運航だと言うことを。

2.韓国船員の一般的な「質」について
仁川と釜山、蔚山に何度も入出港した経験から言いますと、港が近づいて更に港内に入ってから、陸上との通信手段としてVHFの無線を使うのですが、通常の呼び出し連絡及び緊急時の聴取チャンネルである16chで、韓国語の長々とした私語通話は当たり前で、中には口笛を吹いたり挙句には音楽を流したりと、全くの無法地帯化しているのにはほとほと閉口します。
日本では勿論、他の国でも滅多に遭遇しないこのような状況がなぜ起こるのか、当時はあまり深刻に考えませんでしたが、今改めて思えば、船員を含む海運業界関係者において、海上の人名の安全に対する意識が根本から違うのではないかと感じています。
その一端としてネットからの情報ですが、韓国の兵役法第8章(兵役義務の延期及び減免)第65条(兵役処分変更等)の⑤には、三年間船員として従事すると兵役を免除することが書かれてあり、兵役逃れのために不本意ながら船員になっている者がいることが、充分に想像できます。
勿論それだけが原因だとは思いませんが、実際に、韓国船員が乗り組む船舶の事故率が異常に高いという公式の文書が、ネットで検索すればわんさと出てくるので驚きます。
韓国国内の池や川を運行するだけの船なら勝手ですが、外洋に出る船舶に、もし兵役逃れを理由に船員になった乗組員が乗船していたとすると、乗船している乗員・乗客だけでなく、他国の船舶にも影響をおよぼす重大なことだと、私は思います。とても、韓国の「内部事情」で片付けられることではないでしょう。

3.膨張式救命筏(いかだ)はなぜ投下されなかったか

これは韓国海洋警察の巡視艇が最初に到着した時の画像と言われているものですが、デッキ上に見える白いカプセル型のものが救命筏で、消火栓と同様に、ピンを外してレバーを引くだけでカプセルが洋上に投下され、洋上で直ちに膨らんで安全な筏に変身する仕掛けになっています。
外洋を航行する客船では、画像のように船が傾いた時を想定して、「片舷だけで」救命筏と救命ボートを合わせて乗船可能な定員分が装備されることになっています。つまり、両舷合わせれば乗船定員の二倍分ある訳です。
画像のように、ここまで船が傾くと救命ボートはもう降ろせませんから、後は救命筏が唯一の避難手段になります。この画像のタイプの救命筏だと定員は10名程度で、14基装備されていますからこれだけでも140名分の避難が可能です。画像のような海上の状態(ほとんど波が立っていない)ならば、最悪1基に15名程度が乗り組んでも、じっとしていれば大丈夫ですから、約200名分収容できることになります。
しかし、この画像をよく見ると不思議なことに気が付きます。画像の中程に乗組員らしき一人が救命筏のレバー付近を操作しています。そして、その下の海上には、投下したと思しき救命筏が2基浮かんでいますが、膨らんでいないので筏として役に立っていません。これはどういうことなのでしょうか。
そもそもの話ですが、多くの一般乗客がいることを考えれば、ここまで傾く前に救命ボートや救命筏を海上に降ろしておくのが通常で、仮にごく短時間で傾いたとしても、その間に少なくとも全ての救命筏を投下することは可能で、また何よりも最優先されるべきです。
つまり、「船室に留まれ」ではなく「デッキ上に出なさい」の指示を乗客に出して、直ちに救命筏を洋上に投下すれば、これほどの大惨事にはならなかった可能性は非常に高いと考えます。ところがこの画像の状況なんですね。
今回の事故の状況では、救命筏はあまり役に立たなかったかもしれませんが、それにしても疑問は一杯あります。
 ①救命筏を投下しようとした乗組員は、たった一人だったのか?
 ②例え一人でも、14基の救命筏を迅速に投下することは可能なのに、なぜそれができていないのか?
 ③投下の努力はしたが、投下できなかった何か別の理由があったのか?
 ④投下に成功した2基の救命筏は、なぜ膨らまなかったのか?
 ⑤購入後の増築・改造で定員が100人以上増えたが、それに見合った救命設備は整っていたのか?

4.船底にいた機関部乗組員は救助されたのに・・・(下図は単なる参考です)

一般乗客よりもはるかに低い(深い)階層で勤務している機関部乗組員の全員が救助されたと聞いて、「おや?」と思ったのは私だけでしょうか。
事故直後、主エンジンは停止したようですがそれから一時間程度は船内の電気が活きていたことから、発電機はまだ動いていたと考えられます。となれば、船内では発電機は「二等機関士」の管轄ですし、その指示の下に機関部員が、発電機を止めないようにギリギリまで必死の対応をする・・・はずです。
なのに、その職場を放棄して(多分)、さっさと救助船に乗り移ったと言うことは、どういうことでしょう。
考えられるのは、仁川出港以来、機関部乗組員は、燃料・清水・バラストなどの状態から船の安定性(復原性)に何かしらの不安を抱いていたということではないでしょうか。
船が傾斜を始めた際に、船長から退船の指示があったかどうかは分かりませんが、例え退船指示が出なくても船がもう危機的な状態であることは、機関部乗組員だからこそ分かることもあるはずです。
当然、機関部乗組員は、救命筏を投下するなどの保安業務は義務的業務ではありませんから、さっさと救助される側に回る訳で、これを責めることは難しいでしょう。
でも、多くの乗客がまだ船内にいることも、多分知らずに・・・

5.船齢18年のフェリーなら、本来は廃船でスクラップになってもいいのですが
貨物船なら船齢20年を越えても現役で運行していますが、客船やフェリーとなると、競争相手や船客の評判などから概ね船齢20年程度で廃船となり、後はスクラップ(鉄くず)になるのが通常です。
2012年10月に売却した元船主の日本のマルエーフェリーもまさか、約11億円余りという低価格で売却したスクラップ寸前の船に、3億円もかけて増築改造し、それを実際に運航するとは思っていなかったでしょう。
横浜の氷川丸のように、港内に係留して水上ホテルとして使う、なんていうのならアリですが。

6.パンツ姿で救助船に乗り移った船長・・・ヲイヲイ
事故時に、船長が操舵室を離れて船長の自室にいたこと自体は、まぁあり得るかも・・として。
と言っても、当該海域の潮流、島の間を縫う航路、当直は経験の少ない三等航海士、などという状況を考えれば、日本人船長なら操舵室を離れることは有り得ないのは断言できます。
ただ、私が気になるのは、船長が救助船に乗り移った時にパンツ姿だったということです。これはどう判断すればいいのでしょうか。なぜなら、例え事故時に自室にいたとしても、事故の状況を感じて直ちに着替えて操舵室に向かうはずです。どう間違っても、パンツ姿のままで操舵室へ入ることはありませんから。
報道では、事故直後から船長は、船主と電話のやりとりを何度もしていたとのことです。ということは、事故が起きても船長は操舵室へ向かわず、自室で電話の対応に忙殺されていたことが容易に想像できます。
それなら、パンツ姿のままで救助船に乗り移った状況も納得がいくのです。勿論、その行動に納得する訳はありませんが。

とまぁ、取り敢えず思い付くだけでも、これだけいろいろ不思議なことがあるのですが、韓国だからとか、日本だったらとか決めつけてしまうのもいくらか気が引けます。
日本でも、腐敗しきった産官学の「原子力ムラ」然り、杜撰過ぎる安全管理のJR北海道然り、我々の国だって状況は多少違っても、人命を軽んじていることには、大きな差は無いように思います。
決して「対岸の火事」と見てはいけないことを、肝に銘じるべきだと思います。

☆☆☆続報☆☆☆
今日(5月4日)の各社の報道によれば、上記3.で書いた救命筏のほぼ全てが使用不能だったようで、そのことを船長以下乗組員は知っていたようです。
これで、乗客に対して「船室に留まれ」と指示した理由やその他の謎が解けました。つまり、「デッキ上に出なさい」と指示しても、避難する救命筏がそもそも使えなかったのです・・・嗚呼
船長の責任は当然重大ですが、それ以前に、今年2月に韓国の船舶安全検査に合格していたことの方が、より事態は深刻なのではないでしょうか。
救命筏が使えるかどうかなんぞは、検査官なら一目見ただけで判別できますから、見落としは考えられません。ならば、使えないことが分かっていながら、検査機関が検査を「合格」としたことになり、船主(運航会社)側との間で何らかの癒着があったと見られても仕方がありません。
検査機関も船主も、乗客の人命なんぞは全く無視したことになってしまいます。
この記事の最初に書いたように、文字通り「人災」であった可能性が益々濃くなってきたことは本当に悲しいことですし、船員だけでなく社会の根の深いところまでの原因究明が必要でしょう。



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2 コメント

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韓国フェリー事故 (ひだか)
2014-05-05 10:18:38
最近、肥中街道歩きを始めました。ルートの参考に貴ブログを利用させていただいています。
韓国フェリー事故については、テレビ報道でもヒドイと思っていましたが、貴ブログでのご指摘が具体的でわかりやすいです。
船舶安全検査合格経緯の推測や、仁川港の港湾管理者の出向許可についての推測等、その通りなのでしょうね。本当にヒドイ話です。
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ありがとうございます ()
2014-05-05 11:19:09
ひだかさん、こんにちは
肥中街道ウォークの参考に幾らかでもなりましたなら、大変嬉しく思います。
ひだかさんが歩かれての印象なども、ブログの紹介を含めて教えていただければありがたいです。

今回のフェリー事故については、二度と繰り返さないための教訓に是非して欲しいとの思いを込めて、敢えてブログで書かせてもらいました。
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