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鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたい・・・その3 メタンハイドレートの分布域は  

2011-05-26 | 2011年2月~の記事

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたい・・・その3 メタンハイドレートの分布域は   

                            鈴木 朝夫 (高知工科大学名誉教授・東京工業大学名誉教授)

 

3) メタンハイドレートの分布域は                
{メタンハイドレートの起源} 微生物分解起源と熱分解起源のメタンハイドレートがある。地層中に堆積した動物や植物の生物起源の有機物をバクテリア(古細菌)が分解し、メタンを生成する。一方、更に地中深く沈み込んだ有機物は地熱により熱分解し、メタンを発生させる。いずれも隙間の多い砂泥互層(ダービダイト)に集積する。海水温は深くなると低下し、圧力は高くなる。海底下の地層は深くなるとさらに圧力も高まるが、温度も地熱により高くなる。その中間にメタンハイドレートの安定な温度域・圧力域が存在する。
 
{メタンハイドレートの分布域は}  静岡から四国・九州の100~300km沖合、南海トラフ一帯に分布する。その他に茨城県沖、新潟県沖、北海道南岸沖などが有望視されている。水深700~2000mの海底下、100~500mの地層がメタンハイドレート形成の条件を満たしている。海底疑似反射面(BSR)で当たりを付け、試錐を行って詳細を知ることができる。

{海底疑似反射面(BSR)とは}  船で曳航するエアガンから大きな音波を出し、多数の受信機で地層からの反射音を記録する。地層構造からの反射とは別に、層状に横たわるメタンハイドレートの下層境界部分からの強い反射が帰ってくる。このBSRは海底地形に平行になっている。これから下は水とガスを含む柔らかい地層であり、上に行くほど地熱の影響が弱まり、メタンハイドレートの安定な温度・圧力になる。BSRはその境界面であり、その分布調査からハイドレート層の存在域が推定できる。

{メタンハイドレートの賦存量は} 日本周辺に賦存するメタンハイドレートは、我が国の天然ガス年間消費量の約100年分と推定される。天然ガス消費量は年間937億m3である。

{泥火山とは} 南海トラフの地中深部の未固結堆積層に高圧がかかり、流動化してその上位にある浸透率の低い粘土層を破砕して、表面に噴出してきたものが泥(どろ)火山である。メタンハイドレート層に貫入・上昇した泥ダイアビルは泥の他に、メタンと水を伴ってて噴出する。

{リチウム、Li} メタンが噴き出している泥火山で、メタンと共に噴出する水に大量のリチウム(海水の1000倍)が含まれている。しかし、その理由は解明されていない。NaClはメタンハイドレートの安定領域を低温・高圧側にシフトさせ、インヒビターとして使えると報告されている。他の塩とは逆に、海水中に含まれるLiClがメタンハイドレート形成を助けるのかも知れない。あるいは、濃縮されるとすればその仕組みを考える必要がある。

{海水からのリチウム抽出} スピネル型リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)を使って、海水からのリチウム回収の研究が進んでいる。メタン回収に際して得られるであろう「リチウムに富んだ水」から、効率の良いリチウム回収が期待できそうである。リチウムイオン二次電池の正極材料、電解質、負極材料の何れにも必要である。今後のエネルギー問題にとって不可欠の物質である。 

 

  

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたいコーナー

 

メタンハイドレート の取り組み 記事 目次

設立総会・記念講演の開催2011年7月18日(海の日)、