高知ファンクラブ

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鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたい・・・その6 石油の代替エネルギー  

2011-05-29 | 2011年2月~の記事

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたい・・・

その6 石油の代替エネルギー   

鈴木 朝夫 (高知工科大学名誉教授・東京工業大学名誉教授)

  

6) 石油の代替エネルギー


{石油ピーク} 

石油の産出量がピークを過ぎると、緩やかな減少に転じて石油減耗の時代となる。米国の石油生産量は1971年にピークを迎えたことが知られている。既に、全世界の石油生産量はピークを過ぎ、石油減耗の時代に入ったとも考えられる。

 

{エネルギー利得率、EPR} 

EPR=(出力エネルギー)/(入力エネルギー)である。採掘・精製・保管・輸送などの生産に必要な入力エネルギーと利用出来る出力エネルギーの比がEPRである。石油火力は7.9である。石炭火力が6.5、液化天然ガス火力2,4、風力3.9、地熱6.8などとなっている。なお原子力は17.4となっているが、計算の根拠が不明である。

 

{原子力エネルギー} 

津波による福島第一原発の事故で、信頼は一気に低下した。また、地球温暖化は原子炉の排水による海水温の上昇であると考える人も多い。都市のヒートアイランド現象に匹敵するとする試算もある。また建設段階から高レベル廃棄物処理、そして廃炉までの入力エネルギーの見積もりは難しいし、CO2排出も大きいと思われる。

 

{メタンのエネルギー利得率} 

燃料としては天然ガスの代替として使える。ガスタービン発電は一般的である。また水素燃料電池としての可能性も高い。C1化学の原材料として、複雑な有機化合物の合成も、また使いやすい化合物に変化させた燃料も可能である。

 

{ハイドレートからのメタンは副産物}

リチウムがメタンハイドレートの分解水に含まれているとすれば、どちらが副産物か分からなくなる。局所加熱によるエネルギー節約型の掘削法でもあり、総合的なエネルギー利得率はかなり大きなものになると期待できる。

 

{大地震の誘発は}

今の人類の知識の範囲では因果関係を考える根拠を持たない。予知できる学問の進展への期待と、コスト・ミニマムの安全・安心の対策を考える必要がある。

 

{地球温暖化への影響} 

 CO2の20倍もの温室効果があり、5500万年前の生物の大量絶滅の原因とも言われているメタンである。これは46億年にわたる地球のダイナミックな営みの中での物語である。議論になるのは、掘り出して燃焼させることと、自然放出との比較になる。メタンはCO2の排出量の差から、石油に代わるエネルギー源として期待できる。

 

 

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたいコーナー 

メタンハイドレート の取り組み 記事 目次

設立総会・記念講演の開催2011年7月18日(海の日)、 

 

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたい・・・その5 新しいメタンハイドレートの掘削法  

2011-05-29 | 2011年2月~の記事

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたい・・・

その5 新しいメタンハイドレートの掘削法   

                  鈴木 朝夫 (高知工科大学名誉教授・東京工業大学名誉教授)

  

5) 新しいメタンハイドレートの掘削法


{特許権の確定}  

 出願番号:特願2005-238783号、名称:「ガスハイドレート層からのガス回収システム」、出願人:(有)アトラス、公開日:平成19年3月1日、公開番号:特開2007-061508号、確定日:平成23年3月 日。

 

 

{加熱法(その場局所加熱)の掘削法}  

この特許のメタンハイドレート分解・回収装置の基本は「加熱法」である。掘削先端・その場局所燃焼加熱・超臨界水循環・減圧・押上圧送方式と呼べる。地上からは、空気(酸素)、可燃ガス(スタート時)、水、そして制御信号を送り込み、地上へは、回収メタンガス、燃焼排気ガスを取り出すことになる。掘削先端近くに置いたガスタービン発電装置で、その場で発生のメタンを地上からの酸素で燃焼し、それで電力を供給し、各種の熱エネルギー発生装置の電源とする。ヒーター熱による蒸気発生、高周波加熱による過蒸気生成、メタン押し上げのための超臨界水の発生、衝撃波発生によるMH層の破砕、マイクロ波発生などの各種の電源になる。(図3 その場局所加熱掘削装置の概要)


 
{ジェット・スクラバー}

超臨界水を経路を狭めて高速循環させることで、より強い減圧部分と高圧部分が発生する。ジェット・スクラバー(エゼクター型、ベンチュリー型)の原理である。メタンハイドレートを効率よく吸い上げて、分離した水も、堆積粒子汚泥も現場に残留させて、地上に持ち来さない方式であり、地上へも、海底にも環境汚染を引き起こさないことが大きな利点である。このことは必然的に、取り出すに必要なエネルギーを小さくして、エネルギー利得率を大きくできる。

 

 

{ガスタービン} 

ガスタービンの特徴は1)は小型で高出力、省スペース、2)は始動時間の短さ、3)は排気温度が高いなどである。1)の特徴は、ジェットエンジンと呼ばれ、航空機に活かされている。3)の特徴は、コンバインド・サイクルとして、排気熱による蒸気発生で蒸気タービンを廻し、熱の再利用が行われる。このような特徴を持つガスタービンを掘削時にその場で使うことは理に叶っている。熱エネルギーを有効に利用して、熱の及ぶ範囲を拡げることができるのも大きな利点である。


                                                                   
 {超臨界水}

超臨界とは液体と気体の差がなくなる状態である。水は374℃ 以上、220気圧以上で超臨界状態になる。気体の性能を備えた液体、液体のような気体と言っても良い。言い換えれば、密度の極めて高い気体、構成分子が乱雑に激しく運動する液体であり、運動量が大きくなり、反応性が高くなるのが特徴である。水分中のLiを含む可能性を増すかも知れない。また、他の有用なレアメタルを濃縮できる可能性もある。


                                             
{試掘権の設定} 

特許権認可を前提に、経済産業局長宛に試掘権を2011年2月に願い出た。鉱区は南海トラフ上の数カ所、対象鉱物は分類Ⅱの「石油、天然ガスなど」である。

 

 

 

  

鈴木朝夫のメタンハイドレートのこと、もっと知りたいコーナー 

メタンハイドレート の取り組み 記事 目次

設立総会・記念講演の開催2011年7月18日(海の日)、