連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その3 年中児の知的好奇心)
高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕
3.知的好奇心を育む
(3)年中児の知的好奇心(興味、関心)の特徴
①自分の姿、形、生活の仕方を通して、興味、関心を持つ
年中児になると、年少の時に比べて色々なことに気づいてよく質問してくるようになります。その年中児の質問には特徴があって、自分の姿、形や生活の仕方を通して質問してきます。
A「先生」
T「なんですか?」
A「あのよー」の後、しばらく間があくので、
T「うん?何?」
A「あのよー」
T「何?」
A「先生、」
T「何を聞きたいが?」
A「あのよ、先生、イチョウの木は葉っぱを落としてしまうろう。」
T「そうね、秋になったら黄色くなって落ちてしまうね。」
A「なんでかなー。僕は寒くなったら洋服今よりもっと着るでねー。イチョウの木は服を脱いでしもうて、寒うないろうか。」
T「ほんとうね、寒うないろうかね」
と、こんな具合です。
ある時、森を奥へ進んだ谷川の手前でMくんが念願のカブトムシを見つけました。大喜びです。「みんなー、カブトムシがおったでー。」と知らせ、男の子数人が飛ぶようにしてかけつけました。
カブトムシがいることはわかっていましたが、なかなか見つからないで本当にいるのかどうかも疑っていたくらいでしたから、先生も駆けつけました。あまり大きなものではありませんでしたが、正真正銘、オスのカブトムシでした。ワイワイガヤガヤいうなかで、見つけたO君くんがカブトムシをひっくり返し、「どれが手?」と言い出しました。
S「えっ、足が6本で。」
M「けんどよ、僕には手と足がある。カブトムシにはなんで手がないがよ。
先生、手が本当に無いが?」
S「無い。無いがよねー。人間と違うき。」
M「カブトムシはよ、ケンカするとき、どんなにするが?」
S「ケンカする時は、前足を使うが。」
M「えっ、蹴るが?」S「違うで、掴むがで。」
M「ほら、掴むがやったら手やんか、ねー、先生。」
と、同意を求めるMくんの横でSくんが「ウーン」と考え始めました。カマキリを見つけたときも、MくんとSくんの仲間は、大人か子どもかオスかメスかで喧々諤諤です。
「大きいき、お父さん。家で一番大きいもんね。」「僕、もっと大きいカマキリ見たことあるで。お母さんやない?」「お母さんやったらお腹が大きいで。」「えっ、けんど僕のお母さんはお腹大きくないで。」「やっぱり子どもやない?」「子どもやったら、もっと小さいで。僕らーと同じくらいやない?」「えっ、そしたら若草幼稚園に行くが?」「行くわけないやん、虫やき。」「けどここは若草幼稚園の森でね。」「やっぱり僕らーと一緒くらいの年でねー。」とへんな納得の仕方に吹き出すしかありませんが、年中児の疑問や質問、互いの会話の多くは、このように自分を通して行われます。
HN:ちるどれん
◎かしこくて、たくましい子どもに育てる(高知市・若草幼稚園の実践)
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