(み)生活

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浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

ep第38話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2016-09-23 14:44:09 | ガラスの・・・Fiction
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『Letouch of Love』
ミナト(北島マヤ) カナデ(由比隼平)

恋人同士のミナトとカナデはある日不慮の事故に遭う
懸命の救出作業にも関わらず
カナデは意識不明の重体、そして
ミナトは帰らぬ人となった

カナデがこん睡状態から意識を回復したのは2ヶ月後、
後遺症からか事故当時の記憶を一切失っていた。
事故に遭ったという事実自体を全く覚えていないカナデ
そして事故と共に、最愛の恋人ミナトの事も
記憶から消えていた。

九死に一生を得たカナデにさらにショックを与えたくないと思う
周囲の人々は
ミナトの事は伏せ、まるでそんな人などいなかったかのように
いつもの日常に戻っていった。

そんなある日、カナデの前に一人の女性が現れる。
「私よ、ミナトよ」
それは、幽霊となって姿を現したミナトだった。

カナデにだけ見える幽霊、ミナト。
しかも彼女は自分の恋人だという。
一切の記憶がないため戸惑うばかりのカナデに対し
あくまでこれまでのように恋人として接してくるミナト。

カナデがミナトのことを思い出す日は来るのか
そしてミナトの魂はどうなるのか

自分の生命だけでなく、愛する人の中にある自分の存在までも
失ってしまったミナトの切ないまでの健気な愛が
カナデに届く時は来るのか・・・・



「身辺調査は済んでおります」
そういって水城は資料を差し出した。

"由比隼平に関する調査報告書"

「劇団"新KIZOKU"所属の27歳
 これまでは自身の劇場での活動がおもだっていましたが
 昨年より他の舞台にも積極的に出演するようになり
 特にあの奇才の演出家横澤克彦手がけるシェークスピアの
 舞台に抜擢されてからは業界での認知度もうなぎ上りです。
 今年は既に3本のドラマに脇役ながら出演をし、
 知る人ぞ知る期待の若手俳優の一人としてこれからの活躍が
 期待されています」
渡された資料及び写真を見ながら真澄は水城の報告を
聞いていた。
「表向きの活動は分かった。」
私生活は?と問う真澄に、水城は淡々と次のページをめくる。
「両親は若いころに他界、幼少期は父の兄夫婦とともに
 アメリカで生活していたようです。
 日本に戻ってきたのは中学生の時、高校卒業後
 現在の劇団に入団、演劇活動を開始しています。」
「と、いうことは・・・・」
芸歴はほぼマヤと同じくらい・・・か と
頭の中ですばやく計算をした真澄は、そのまま水城に先を促す。
「演じる役によって印象ががらりと変わる様子はまさに
 かつてのマヤを彷彿とさせるほどと評判、その代わり私生活は
 まったく知られていません。
 同じ劇団員も劇場で会う以外はほとんど交流はないようですが、
 特に女性の姿があるわけでもなく、時間を見つけては
 映画や舞台を観て回る毎日を送っているようです。」
水城が差し出した隠し撮りと思われる写真は
ラフな格好に身を包んで一人で映画館に入る姿や
パンフレットを抱えて劇場から出てくる様子ばかりだった。
「とりあえず、これまでにスキャンダルはないようだな。」
「はい、むしろ・・・・」
女性嫌いという噂すら・・・と水城は言葉を区切る。
「演じた役の印象もあるのでしょうが、どちらかというと
 女性に対して潔癖という印象が一般的なようです」
そのため、今回の恋愛ドラマ出演は意外性が高いのだとか。
「なるほど。演技の幅を広げるためか、自分の可能性を見せるためか
 今回のドラマを選んだわけか。」
「もともと演劇を目指すきっかけとなったのはアメリカ時代にみた
 ブロードウェイの影響が強いようで、日本でも舞台中心の活動を
 行ってきたようですが、本格的なアメリカ進出を前に少しでも
 知名度を上げておきたいというのが本音のようです。」
それに・・・と水城は更にもう一つの資料を差し出す。
「彼は『紅天女』一真役のオーディションも受けています」
「!?」
「最終選考まで残りましたが結局赤目慶に決まったようです」
「・・・ということはもしかしたら」
「はい、姫川亜弓と共演していたかもしれません」

報告を終え、静かに書類を整理する水城は
「とにかく、少なくとも由比隼平は共演者に手当たり次第
 モーションをかけるようなタイプではないという点は間違いないようです。」
まるで"ご安心を!"といっているかのような水城の視線を感じながらも
真澄は改めて由比の写真に目を落とした。
「むしろ心配なのは・・・・・」
真澄の脳裏に、幽霊姿でさまようマヤの姿が浮かんでは消えていた。



「あ、危ない!」
次の瞬間、マヤの体は何者かの胸に収まっていた。
そのまさに目と鼻の先を、大きなクラクションを
鳴らせたトラックが通過していく。
"随分と昔にも、こんな感じ・・・"
場違いにものんびりと昔の記憶を思い出していたマヤの頭上から
「どこかぶつけた??」
と声がかけられる。
物思いにふけるマヤをショックで呆然としていると
勘違いしたのか、その声は優しくいたわるようだ。
「あ、す、すみません!わたしぼーっとしてて!」
「いやいや、とりあえず無事でよかったよ」
どんどん車道の方に寄っていくからびっくりしちゃって・・
と笑いながら頭をかく人の姿をその時はじめて
マヤはまともに見た。
年の頃はマヤより少し上といったところだろうか、
大きめの黒縁メガネをかけたその男性は、
穏やかで人を惹きつける柔らかな笑顔をしていた。
「ありがとうございます!!」
改めて深々と頭をさげるマヤに、気をつけてねと
ポンと肩をたたいて、その人は去っていった。
「・・・・役のこと考えすぎて車にひかれそうになるなんて、
速水さんにバレたらまたおこられちゃう・・・」
さきほどの感触に、昔の雪の日を思い出しながら、
マヤは家路を急いだ。


「本当の幽霊になろうとするのだけは勘弁してくれ」
昼間のことなど知らないはずの真澄から突然そんなことを言われて
マヤは思わずせきこんだ。
「ゴフッゴフッ・・・ま、まさかそんなこと・・・」
真澄の表情に、冗談で言っただけだと安堵しながら、
マヤは食事の後片付けに立った。
久しぶりに早めの帰宅を果たした真澄と夕食をともに
したのはいったいいつぶりだろうか。
「冗談はさておき、どうだ役作りは順調か?」
幽霊役とはいえ、動きは普通の姿の時と変わりない。
それが逆に、幽霊っぽさを見せることを難しくさせていた。
「いっそのこと、こうやって分かりやすいかっこうできれば
 いいんですけど・・・」
そういって両手をおばけのように胸の辺りでたらしてみせるマヤを
真澄は優しく見つめる。
「マヤ、君の相手役が決まったよ」
そういって宣材写真をテーブルに広げた。
「ゆい・・・じゅんぺい・・・さん・・・」

恋愛ドラマである今作品、その相手役といえば当然恋人となる。
といっても少し変則的なのだが。
「どういった作品に出ているんですか?」
マヤの質問に、真澄があげたいくつかの舞台作品の名、
「へえ・・・」
その舞台はマヤも知っている有名な作品ばかりだった。
演出家が厳しいことで有名なその舞台、きっと才能のある
素晴らしい役者さんなのだろう。
そんな人相手に、自分は恋をするのだ。
「わたし、この人のこと大好きなんですよね」
大好きで、大好きで、幽霊になってでもそばにいたいほどの人。
「好きで好きで、この人しか目に入らないほど・・・」
テーブルの上の写真を手に取り、ブツブツと自分の世界に入っていくマヤ。
分かってはいることだが、この瞬間はいつも真澄をとてつもなく切ない気分にさせる。
役者としての本能が、マヤを奪っていく。
マヤのなかにある自分の居場所が閉じていくようで
いたたまれなくなった真澄は静かにその場を去った。
こうしてすぐそばにいても遠くにいるように感じるときがある。
しかし、だからこそこうして一緒にいる道を選んだのだと、
真澄は燻らす煙に思いを馳せた。

「・・・・天国みたいな場所って、ないですかね」
いつの間にかうたた寝をしていた真澄の体をなにか暖かな物が包む
気配とともに、遠くからマヤの声らしき音が響く気がしながら
真澄はまどろんでいた。
「この世に私とあなたしかいない、そんな場所・・・」
全てのものがあって、君だけがいない世界と
何もない、ただ君だけがいる世界は
いったいどっちが自分にとっての天国なのだろう・・・・
もうろうとする思考の波に漂いながら、真澄は本能的に
側を離れようとする細い腕をつかんで、その暖かな世界に
引っ張り込んだ。




「うっわーーーーぁ!素敵!」
車から降りたマヤは目の前に広がる絵画のような景色に
魅了された。
「気に入ったか?」
目の前に広がる透明な湖は、光の加減なのか七色に姿を変える。
まだまだ残暑が厳しい東京とは打って変わって
ひんやりとした空気に、木漏れ日が温かい。
「仕事があるので、俺は東京に帰るが・・・」
真澄が用意したこの山間の別荘でこれから一週間、いわゆる
"幽霊"としての役作りを行うこととなった。
半分眠りの中にあったようで、先日マヤが耳元でささやいていた言葉を
増す見はしっかりと記憶していたようだ。

「部屋の管理は頼んでいるから特に問題ない。
 君は自由に外にでるなり中で過ごすなりしてくれていい、但しーーーー」
勝手に外泊しないことや定期的な連絡は怠らないことを何度となく
念押しし、さらにマネージャーの大原にもくどいほど確認をした後、
真澄は車で別荘を後にした。
「と、いう訳で本当なら私も一緒にここに滞在すべきなんでしょうけど・・・」
マヤ不在の東京でも、マネージャーにはいろいろとやるべき仕事がある。
申し訳なさそうな大原に気にしないでと元気な笑顔を見せたマヤは
「こういうの、慣れてますから!」
と手を振り見送った。
「さて・・・・ではとりあえず・・・」
マヤは鞄の中から『Letouch of Love』第1話の台本を取り出した。
(仮)と書かれた台本は文字通り仮台本。
通常の舞台とは違い、ドラマは撮影と同時進行で台本が制作されることも
少なくない。
特に昨今はOA後の反応をみて出演シーンが増えたり減ったりすることも
多く、ギリギリでの撮影が続く。
「ミナト・・・・大学生の女の子・・・・」
不慮の事故で死んでしまっても、恋人の事が忘れられない
恋人以外は自分の存在に気づいていない
その最愛の恋人も自分の事を覚えていない
「もし私だったら・・・・・速水さんの所に迷わず出てこられるかな・・・」
幽霊だもん、誰にも知られず速水さんの仕事しているすぐそばで
バリバリ働いている所見ちゃおっかな
たまにお仕事の邪魔しちゃったり・・・・
あ、でも他のきれいな女優さんと親しそうに話している所みたら
私どうなっちゃうだろう
私の知らない速水さん・・・・・そして

私を知らない速水さん・・・・・

いつの間にかマヤの目からは大粒の涙がとめどなく流れていた。



**
「ゆいちゃん、ど~こいってたの!」
劇団「新KIZOKU」事務所に入ってくるなり、マネージャー兼事務員に
大きな声をかけられた由比隼平は軽く手を上げた。
「ごめんごめん、ちょっと時間が空いたから映画見てた」
だから携帯つながらなかったのね・・・と小言が続くマネージャーを後目に
隼平はどっかとソファに腰掛けた。
「あ、これ今度のドラマの資料だよね」
テーブルの上にはドラマの概要、そしてキャストの写真等が並んでいた。
「そう、今度のドラマはあの北島マヤ初主演作として
 注目されているわ。あなたはその相手役。
 うまくいけば一気にあなたの知名度は上がる。」
もし失敗すれば・・・・という言葉を遮るように、隼平はペラペラと
台本をめくる。
「あ、このシーン・・・、オーディションで使った部分だね。」
今回のドラマ『Letouch of Love』は、あの北島マヤ初主演ドラマという
こともあり、かなり慎重に相手役が選ばれたようだ。
隼平も、オーディションを経てその役を勝ち取った。
「でも、なかなかこの枠のドラマでオーディションなんてめずらしいよね」
「そうね、そりゃなんていっても大都芸能の若手No.1女優でしょ。
 あの速水社長のことだもの、相手役選びに神経質にならないはずがないわ!」
速水真澄ーーーその名ぐらい、この世界にいればいやでも耳にする。
なんでも若干33歳にして芸能界のトップを激走する芸能事務所を仕切っている
やり手実業家だ。
「でもなんで俺なんかが受かったんだろうな」
「なーに言っちゃってんの」
もっと自信もちなさいよ、というマネージャーの声を聞きながら
隼平はいやいやホントの話・・・とかぶりを振った。
「だって、どっちかというと俺和風顔じゃない。『紅天女』は落ちちゃったから
 あ~やっぱり俺ってまだまだなんだなと思ってたら・・・」
「・・・・ゆいちゃんが和風顔だなんて、誰が思ってるかしらね。」
ことり、とお茶の入ったグラスをテーブルに出しながら、マネージャーは首をかしげた。
「この写真、この写真、あとこの写真もか・・・。あなたには一つとして同じ顔がないの」
そういって並べられた写真はここ数年で出演した舞台での写真だった。
「あなたの最大の武器はこの"カメレオン性"。どんな役にもすぐになりきって
 前作のイメージなんてふっとんちゃう。それがいいところでもあり・・・・」
弱点でもある・・・と続けた。
「あなたには良くも悪くもイメージがない。それは確かにいろんな役をやる上では
 武器になるけれど、反対に主役として圧倒的に人々を惹きつけるオーラが
 かけているともいえるわ」
私は、今回の作品はいい意味で由比隼平を裏切るエポックメイキングなものに
なると思っている、と真剣に続けた。
「何しろ相手役はあの北島マヤ。不足がないどころかおつりが出るくらいの女優よ」
「それは確かに・・・・」
一真役に落ちたとはいえ、作品自体に魅力を感じていた隼平は
それこそ何度となく『紅天女』に足を運んでいる。
舞台の度に新鮮な感動を与えてくれるあの作品は、さっきのマネージャーの話ではないが
圧倒的な主役としてのオーラに支えられているといっても過言ではない。
軽口をたたいていながら、実の所隼平自身が誰よりも興奮し緊張しているのだ。
「それに最終的にあなたを選んだのは他でもない、あの速水社長だそうよ」
「え??」
それは初耳だ。
確かに最終選考にはドラマ制作関係者と共に、テレビ局の上役、そして
大都芸能社長・速水真澄の姿も審査員席にあった。
「自分の所の大切な箱入り女優の相手役は、自分で見つけるってか・・・」
その過保護なまでのやり方に、改めて今度の仕事が自分にとって重要なものになる
気がして、ぶるっと体が震えた。
「でもなんで俺を選んだんだろうね。」
「さあ、それは分からないけれど・・・」
来週本読みで顔合わせがあるから、機会があれば聞いてみれば?と軽く言うマネージャーに対し
あの威圧感のある美しく冷たい顔を思い出した隼平は
とんでもない、と頭を振った。
「目が合っただけで殺されそうだよ・・・なんといっても」
大切な箱入り女優の恋の相手なんだろ、俺 といって肩をすくめた。


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
劇団「新KIZOKU」ダッサ~~~~(笑)
なんかこのダサさが欲しくて命名しました。
ゆっちゃ~悪いが絶対メジャー受けしてなさそう・・・・

特に書く予定はないですが、相変わらずマヤちゃんは
別荘でガラガラガッシャ~~ン!!と
備品を破壊しまくりの役作りをしているのでしょうか。
幽霊なんだから、どこも突き抜けられるわ!と
壁に激突☆とか・・・・
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