(み)生活

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ep第31話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2016-03-29 19:12:10 | ガラスの・・・Fiction
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"ま、まぶしい・・・"
ただでさえ慣れないハイヒール、それ以上に気になるのは
裾の長いロングドレスを、いったいいつ踏んでしまうだろうかという恐怖。
まったくもって場違いなところに来てしまった・・・
早い所この目立つ場所から去りたい、それなのに
さっきから数歩進めばリポーターにつかまり、
何回と言葉にしたであろう、初めて参加する国際映画祭の感想を
もはや呪文のように唱えている。
「肩がこわばってるよ、マヤちゃん」
優しくマヤをエスコートしながら同じくゆっくりとしたスピードで歩くのは、
共演者であり、この映画の主役でもある俳優・境凪砂。
その柔らかな笑みはそのままに、こっそりと耳元でささやく。
「もう・・・限界です・・・。それにこのドレスなんだか心もとない・・・」
裾は長いのに、薄っぺらくて体のラインがくっきりと浮かび上がる
そのシルエットに、恥ずかしさが我慢できない!
「北島さん、初めてのレッドカーペットは如何ですか?」
「・・・もう恥ずかしくて、穴があったら入りたいです。」
思わず本音を漏らすマヤに、聞いたリポーターも隣の境も
一拍置いて笑い出してしまった。
"あ~~、また私やらかしたかしら・・・"

フランス国際映画祭 開幕
初日のオープニングセレモニーでは、世界各国から出品された
映画作品の演者や監督・関係者の華やかなレッドカーペット登場に
湧いていた。
当たり前ながらレッドカーペットを歩くのは初めてのマヤ、
胸を張って堂々と・・・頭で分かっていてもつい足下を見てしまう。

無限に続くかと思われた赤い道もようやく終わりが見えてきた。
”・・・・あとは、あの階段の前で振り返って、
 ひとしきり写真を撮られて・・・・終わりね。"
出発前に真澄から何度も教えられた、レッドカーペットの段取りを
頭の中で反芻しながら、マヤは最後の気力を振り絞って出来る限りの
余裕ぶった微笑を浮かべながらゆっくりと今来た道を振り返った。
「その衣裳は速水社長のお見立て?」
共にレッドカーペットを歩いてきた『微風のかたち』監督、是永が
マヤに声をかける。
「はい。赤に映えるようにって、この柄を・・・」
「やっぱり・・・。すごくよく似合ってるよ。」
"そうかな、私には少し大人っぽすぎる気がするけれど"
「マヤちゃんは、自分が思っているよりずっときれいだし、魅力的だよ。」
是永の率直な物言いに、マヤは思わず頬を赤くした。
「やだ・・・恥ずかしいです。」
「お世辞じゃないよ。ちゃんとマヤちゃんの事を分かっている人が選んだドレスだから、
 とてもよく似合ってる。」
是永に言われて気づく、確かに速水さんは忙しい仕事のさなかに
かなりの時間を割いて、私のこのドレスを選んでくれた。
「どんなに艶やかな恰好をしても、しすぎるということのない場だぞ」
なんて言っていたけれど、
私があまり目立つことが好きじゃないのを分かってて、あまり派手な
デザインでなく、それでいて素材にはしっかりとこだわった物を準備してくれたのだと
大原さんがこっそり教えてくれた。
「そうですね・・・。そう思うと少し、安心します。」
そうだ、私は今、速水さんの思いを身にまとって、この大舞台にいるんだ。
もう少し、しっかりとしなくちゃ。
仕事の都合上、どうしてもオープニングセレモニーには間に合わないという真澄は
きっとこの映像を日本で見ているに違いない。
ひっきりなしにたかれるフラッシュの光、そして向けられるカメラレンズに
ぎこちないであろう笑顔で答えるマヤ。
「ここでコケたら、全世界に配信されるぞ。」
からかうような声が、空から降ってくるような気がして、思わず上を見上げたその時、
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「・・・すごい、素敵!!!!」
先ほどまで自分が歩いていた道の脇に、一台の大きなリムジンが、そしてその中から
ひときわ艶やかな衣装に身を包んだ女性が降り立ち、
一気に観衆のボルテージがあがった。
「本国の女優かな?」
「う~~~ん、ここからじゃあまりよく見えませんけど。」
境と是永が目を凝らしながら歓声の中心にいる人物に注目しているようだが、
マヤからもよく見えない。
「でも、どちらかというと日本のメディアの方が騒がしいような・・・」
自分達の作品以外に日本から出品している作品はあったかな・・・と
話をする二人の脇で、そろそろこの場を去ろうとしていたマヤ、しかしその時
「マヤ!!」
あろうことかその歓声の中心人物がマヤに近づいてきた。
「・・・・・・・え?」
私フランスの女優さんに知り合いなんていませんけど・・・・・と思わず境の後ろに
身を隠しそうになるマヤだったが、その人物はためらうことなく、ずんずんと
マヤの側に近づいてきた。
"せっかくのレッドカーペットをためらうことなくそんな颯爽と・・・・"
大胆に露出された肩、風になびく裾のフリルにあしらわれたスリットが
時折その美しい脚線美を見せる。
これでも精一杯なマヤのヒールの倍はあろうかという高さのピンヒールを
履きこなして、まるで舞台の花道のようにその人はやってきた。
「久しぶりね、マヤ。ここで会うのを楽しみにしていたわ。」
マヤの手を取り、にこやかにほほ笑むその人、さすがのマヤも間違えようがなかった。
「・・・・・・お、お元気でしたか?亜弓さん。」

**
「やってくれたな、亜弓くん」
オープニングセレモニーの翌日、フランスでマヤがありとあらゆる出品作品を
夢のようにむさぼり鑑賞しているそんな頃、日本では
一昨年、紅天女に敗れて以来一切公の場に姿を見せていなかった
姫川亜弓の電撃的復帰の話題で持ちきりだった。

"姫川亜弓 輝きを増して復帰!"
"ブランクを感じさせない美貌!姫川亜弓"
"因縁のライバルに挑戦状!第2Rは世界!!"

様々な見出しが新聞紙上に踊る。
角度は違えど、どの紙面も亜弓がにこやかにマヤの手を取る姿を
1面に置いていた。
そのひとつひとつにじっくりと目を通した真澄は、
PCでストリーミング配信されている映画祭の様子を並行してチェックする。

「注目度という意味では、これ以上はない宣伝効果です。」
これも真澄さまの?という目を向ける水城に、
「いや、ここまで一切の情報が表に出ないようにはしていたが、
 こんな形で表舞台に立つことまでは聞いていなかったな。」
水城の淹れたコーヒーを飲みつつ答える。
「本当に姫川亜弓は復帰したのかと、事務所への問い合わせ電話が殺到していますわ。」
さも迷惑だといった口調とは裏腹に、水城の顔には余裕の笑みすら浮かぶ。


真澄のもとに亜弓から連絡があったのは、昨年夏、ちょうどマヤが
映画『幕を上げる』の撮影に入っていた頃だった。
"フランス映画に出てもいいか"
用件のみの短い問合せだったが、真澄はそこにピンとくるものを感じ、
フランスに飛び、現地で自ら交渉を行った。
着くやいやな山のような契約書類に目を通し、素早く大都にとっての
有利不利を見極め、ひとつひとつその場で決裁していく作業は、
まさに仕事の鬼の真骨頂。
ささやかな食事にありつけたのは、フランスについてからもうずいぶんと時間の
経った頃だった。
「マヤが女優だったから」
その席で、亜弓はそう言った。
「正直今の段階で紅天女の事を忘れることも、考えることもできないけれど、
 春に会った時のマヤは女優として前を見ていた。その姿を見た時、
 私も前に進みたいと思ったんです。」
そして選んだ地がフランス。
「ここなら私の実力だけが評価される。姫川亜弓なんて誰も知らない。」
日本での知名度も実績も全て捨て、一から挑戦者としてもがいていた。
幾つものオーディションに落ちたというが、悲壮感どころか
日本にいた頃よりも生き生きとしている亜弓がそこにいた。
「本当に地獄の底まで落ちた時もありました。」
オーディションなんて、受けられればまだいいほう、たいていは
日本人と言うだけで門を閉ざされることも一度や二度ではなかった。
「そんな時、偶然をきっかけにチャンスをつかんで・・・」


フランスでの仮契約を終えた真澄は、当時検討していた配給会社のM&Aを
驚くべき早さで実行し、大都芸能の新規プロジェクトとして立ち上げた。
そしてその事業の重要な立ち上げとなる大きな案件に、その当時はまだ
撮影にすら入っていなかった亜弓主演のフランス映画をあてがったのだ。
「当時はバクチだと揶揄する人もいましたが・・・まさに新規事業の目玉となりましたわね。」
「ふむ。」
当ればだがな、と返す真澄だが負ける戦をするはずがない。
それに真澄の視点は、既にその先を見据えている。
「さて、ここからはまさに、神のみぞ知る・・・か・・・。」
わずかに残ったコーヒーを飲み干すと、真澄は脇においたカレンダーに書かれた
自身の出国日を確認し、また膨大な仕事の山へと戻っていった。

今頃君は何をしているだろうか
きっと映画に夢中で俺のことなど思い出す暇もないだろうがな・・・。
テレビで見た、マヤのぎこちないレッドカーペットデビューの様子を思い出し、
真澄はふっと小さく笑いをこぼした。
"いい刺激をいっぱい受けてこい、マヤ"

真澄がフランスに向かうのは今日から4日後、
『微風のかたち』が上映されるその日だった。


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
皆さん覚えていますか?
私の記憶はあいまいですが、ちょうどマヤ映画ロケの頃、
真澄さんはフランスに急な出張へ行っていました。
その時のビッグプロジェクトがコレ!!!
そして、夏に久々にマヤと再会した亜弓が年内海外で
静養するとか言いながらやってた仕事がコレ!!!

女優として華麗なる復帰を果たすのか、亜弓!
フランスで、亜弓はマヤに何を語ったのか!?

つくしほどの中途半端な伏線をちらちらばら撒いていたので
思い出すのが大変、時系列がキツキツ(笑)!
で、なかなか書けませんでした。
というか、一から書き直しました。
でも書き直したら登場人物が勝手におしゃべりはじめて
やっぱり楽しいな~と思います。
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