朝、NHKニュースを見ていたらユニクロ柳井社長のインタビューが始まった。夕餉の残りのおでんの玉子をほおばりながら見る。「おでんの玉子は翌朝食べるに限るな」、とかナントカ思いつつ見始める。この時点では、玉子が主でテレビが従だ。ところが、あっというまに形勢逆転。ついついインタビューに引き込まれてしまった。
そのプログラムが終了後、「得たり」とうなずく内容をしかと頭に叩き込み、「今日のブログネタはこれに決まりだな」と、またその内容を反芻してみる。よし、だいじょうぶだ。ちゃんと覚えている。だが待てよ。。。。
ふと思いつき「ユニクロ 社長 NHK 朝」とグーグルさんで検索をしてみると、あった。
NHK『おはよう日本』2017年8月23日(水)『柳井流「仕事の進め方」』。
どうやら今朝のは再放送だったようだ。
正確を期するためにWeb記事から引用する。
今や日本を代表する経営者である柳井社長に、ビジネスパーソンは、どんなマインドで仕事をしたらいいかを尋ねてみました。
ファーストリテイリング 柳井正社長
「大企業で仕事している人は、社長だったらどういうふうにするかを考えて仕事しないと。課長だったらとか、部長だったら、それはクライアントのためじゃないですよね。お客様のためにどういう仕事をする。それは、自分は課長なんだけど、社長だったら、どういうことをするかということを主体にして、自分の置かれている立場で、自分の部署も変わるし、周囲も変える。そういうふうな仕事のしかたに僕は変えるべきなんじゃないかなと思いますね」
豊永デスク
「常に社長の立場でものを考える…」
ファーストリテイリング 柳井正社長
「じゃないと、報告用の仕事になっていくと思うので。報告用の仕事っていうことは、上司にとっていい仕事で、お客様にとっていい仕事でない可能性がありますよね」
(太字、宮内)
この場合、「大企業で仕事している人は」という括りは必要ではないだろう。柳川さんの言は、どのような規模においてもどんな職種においても、組織に身を置き仕事をする人間の心がまえとして通底するものだとわたしは思う。そして、これを聴きながらいみじくも思い出したのは、今年の夏、鹿児島での拙講のあと、天文館で一献かたむけた初見の人(業界の外の人)が「三方良しの公共事業」について語ったわたしの話に対して述べてくれた感想だった。
いわく、
「あなたの話は、建設業について語っているようでいて、けっしてそればかりではない。あの話には、仕事というものについてすべからく共通する大切なものがあるんではないでしょうか」
たしかそれは「自利」と「利他」について語ったことを指していたはずだ。
つまりそれは、「自分の利益」としてやった仕事は「他人の利益」にもならなければならない、あるいは「他人のため」を考えたうえで「自分の利益」を図る、いずれにしてもそのことについて自覚的に仕事をしていかなければならない、幸いわたしたちが生業(なりわい)とする「公共建設工事という仕事」は、そもそもそれを実行することそのものが「利他」(地域貢献)になるという性格を生まれ持っているのだけれども、そのことに無自覚であってはならず、結果オーライで世間の役にたったとしてもそれは意味をなさない、というような話である。
と同時にわたしは、「三」の重要性についても説いた。受注者と発注者という二項対立の枠組みやそこからスタートする発想、仕事のスタイルからは、わたしたちは救われないのだと。繰り返し語ってきた例のアレである。そこで重要となってくるのが、公共建設工事の真の発注者たる「住民」の存在であり、二項対立を打破する「三」の存在としての「住民」を向いて仕事をしていこうとういうその取り組みを端的に表現する言葉として、「わたしたちのお客さんは住民です」という惹句を使ってきた。
そのことを踏まえ、「大企業の社員」に向けた柳井さんの言葉を再度反芻してみると、先述したように、それが「大企業のみにとどまらない」ことはもとより、単に企業内部だけにとどまらず、「三方良しの公共事業」を考えるうえでも大いに示唆に富んでいることに気づく。
インタビュアーと柳井さんのやり取りをもう一度引用する。
豊永デスク
「常に社長の立場でものを考える…」
ファーストリテイリング 柳井正社長
「じゃないと、報告用の仕事になっていくと思うので。報告用の仕事っていうことは、上司にとっていい仕事で、お客様にとっていい仕事でない可能性がありますよね」
「上司」を「発注者(役所)」に、「お客様」を「住民」に置き換えてみる。
報告用の仕事っていうことは、役所(発注者)にとっていい仕事で、住民(お客さま)にとっていい仕事でない可能性がありますよね。
となる。
まさにその通りである。わたしの考えるところでは、発注者もまた「お客さん」である。エンドユーザーである「住民」に社会資本を届ける前段階の一次顧客として「役所(発注者)」があるとわたしは定義している。その前提からすれば、「報告用の仕事」というのは付き物であって、必ずしも否定されるべきものではない。いや、否定したくても否定しきれない現実から脱することはできない。しかし、だからといって、「本当のお客さんにとってどうなのか」と考えることや、その実践を放棄するのは、「自利の行為が利他となり、利他の行為が自利となる」公共建設工事というわたしたちの仕事を自ら否定することにつながるのではないだろうか。
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ユニクロの社長がどんな人でどんな考えを持っているか、ということなど今日の今日まで考えもせず、柳井正という人にもまったく興味も感心もなかったわたしだが、朝からいい言葉を聞かせてもらったことにとても感謝している。そして、常にアンテナをはっておき、できるだけフィルターをかけずにものごとを見聞きすることの大切さを実感している。
まったくもって単なる偶然。
とっかかりはあきらかに「おでんの玉子」が主役だった。
そんなことは棚に上げて。
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