安芸市にある県の合同庁舎へ行くため国道55号を西走中、ラジオ再放送設備の設置工事だかで大山トンネルが全面通行止め。強制的に岬を回る旧国道へと迂回させられた。久方ぶりである。7月に東京から来た客人を案内して以来か。
わたしが来客をアテンダントする場合、晴れた日限定ではあるが、海岸めぐりは欠かせない。以前はそうではなかったが、ある時、海を見ながらクルマを走らせているだけで異様にテンションが上がっているおじさんたちを見ていて、こう思ったのがキッカケだ。
そうか、この海はうつくしいのだ。人によっては、ただ海を見るというのが得難い体験になる場合もあるのだ。
爾来、海をながめながらモネの庭へと向かうドライブの途中、あるいはモネの庭から高知市内方面へと向かう途中で、わたしが選定した数か所に立ち寄ることにしている。高知市から奈半利町へと向かう順番に、香南市塩谷海岸、芸西村琴ヶ浜、そして安芸市大山岬だ。フルセットのこともあれば1ヶ所だけの時もある。もちろん、さほど興味がなさそうな人の場合はドライブだけという場合もある。
かといって相手は自然である。雲行きまかせ風まかせ。いくらわたしが推奨しようと、こちらの想いなど知ったことではない。
きのうはそれがよい方に転び、抜群のロケーションだった。澄んだ秋空を映した海がうつくしい。すこぶるつきで気分がよくなったわたしは、そのせいもあったのだろうか、その後の打合せも順調に進み、さらに気分をよくした会社への帰路、岬の峠を越えようとしたその時、眼前にひらけた景色に思わず息をのんだ。
とはいえ運転中とあらばそれも一瞬。クルマは止まることなくそのまま走りつづける。だが・・・終わらせてよいのか?
別のわたしの問いかけに応じ、海辺へとさらに迂回しクルマを停めた。適当な撮影スポットを探し、アソコだなと見当をつけた岩を登って深呼吸。磯の香を胸いっぱいに吸い込んで、おもむろに撮る。海のあおと空のあおを撮る。一枚ずつ確認しながら撮り、その都度ため息をつきながら、また撮る。
あゝ、惜しむらくはこのウデだ。この絶景を切り撮ることができないウデのなさだ。
すると、嘆くわたしを嘲笑うかのように、海上でトンビがくるりとおおきな輪をかいた。
ふん。いつかまた。
そんなオヤジの邪なココロなぞとは関係なしに、どこまでも清々しくうつくしい海と空。たまには寄り道をしてみるのもいい。