散日拾遺

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試験監督

2015-08-01 10:43:37 | 日記

2015年8月1日(土)

 放送大学は定期試験のシーズンに入り、僕ら専任教員も学習センターで試験監督の手伝いをする。といってもたいした役には立たない、かえってお荷物なんだが、田植え・稲刈りはみんなの仕事、お荷物なりに汗かきましょうというところ。

 僕は着任以来とある学習センターに割り当てられ、特に各種障害があって別室受験する学生さんたちの担当と決まっている。監督というより援助の意味が強く、たとえば視覚障害のある学生さんが点字で打った解答を、読み上げに従ってマークシートに転記するといった作業がある。静まり返った室内をひたすら巡回する一般の監督に比べ、僕などにはよほど性にあっている。

 今日1限は特別室にGさん一人だけ、お顔を見たら思い出した。以前にもこの部屋で会った全盲の学生さんだ。向こうもよく覚えていて、「先生の科目、とりました。TA協会でも講演されたんですね」と話しかけてくる。交流分析への評価など訊かれ、試験開始まで即席の質疑応答になった。

 試験時間に入れば真剣そのもの、点字で打たれた問題をなぞりつつ、ヘッドフォンで音声をあわせ聞き、耳と指で考えている。この人々が点字を追う指先の動きには、いつも見とれてしまう。Gさんの場合は左の人差し指の末節、紙面に吸いつくように柔らかく滑らかに動き、かなりのスピードで情報を読みとっていく。指が行を左から右へなぞるのにあわせ、Gさんの両眼が同じ方向へ水平に動くのを何度か見た。Gさん自身のイメージの中で、実は文字列を「見て」いるのではないか。いつも例に引いて申し訳ないけれど、小豆島のMさんが生まれながらの全盲なのに、「愛犬がチャンチャンコを着ている写真が可愛いから」と送ってくれるのと同じことだ。彼らには「見えて」いる。

 実体験として、この種のことは疑いようがない。誰か理論化していないかな。そしてそれは、僕ら晴眼者に何を教えるのだろうか。

 

 あはは、バレました?サボってるんじゃないよ、今、休憩時間なんです。また後ほど。


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