散日拾遺

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今どき無意味な点字ブロック

2016-07-24 09:10:25 | 日記

2016年7月23日(土)

 専任教員は障害のある学生さんの別室受験担当というのが、このセンターの流儀である。実際には事務担当のMさんがほとんど全てやってくれて、教員の仕事は開始・終了の合図とマークシートへの転記ぐらい。

 今日の別室受験は全盲のGさん一人だけ、こういうことは珍しい。予定表では一限から八限までの間に、パラパラと受験科目が散らばっているが、「変更がありまして」とMさん。夕方から地元の花火大会で一帯に相当の人出がある、それに巻き込まれるとGさんが立ち往生する危険があるので、20分の休憩をはさんで前倒しで試験を行い、早く解放してあげる予定という。なるほど適切な配慮である。

 「ポケモンGOが昨日から配信されてるし」

 「そうそう、余計あぶない」

 笑ったが笑いごとではない、Gさんのおっしゃるには、最近は点字ブロックを踏んで歩いていてもスマホ歩きが正面から突っ込んでくる、青信号で横断歩道を歩いていても前後を自転車がかすめていく、危険きわまりないという。

 「帰りはどうぞ気をつけて」と言ってから、「ほんとは目あきが気をつける話なんですよね」と皆で苦笑した。

 Gさんは屈託もなく、休み時間に僕をつかまえて統合失調症の友人にどういう配慮をすべきかなどと尋ねてくる。さらに、半年前の冬の試験の時は僕の声にどこか緊張が感じられた、何かストレスがありはしなかったかと問われた。

 聞くことへの集中度ではとても比較にならない。目あきはごまかせてもこの人々は偽れないと思いながら、さて一月末頃何があったっけと考えた。思い出せないが何かあったのだろう。

 Gさんは午後早々に無事退出。僕はいちおう待機を続けてビルを出たのが午後7時。バス通りは臨時の歩行者天国で、そこを荒川縁に向かうユニクロ浴衣の流れが一面に埋めている。勝手知ったる裏道に回っても、どの分枝もすべて逆方向の人波ばかりで、少し怖くなった。テロリストの草刈り場みたいなものだ。

 さまざまな国の言葉が浴衣の人波から聞こえてくる面白さを味わう余裕もなく、どうにか北千住駅まで無事到達。Gさんを早く帰したのは、間違いなく事務担当者の隠れたファインプレーであった。

 Ω

   


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