散日拾遺

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依存症予防ブログ/死生観とユーモア

2013-08-03 09:34:57 | 日記
2013年8月2日(金)続き

朝刊一面の見出しは、「ネット依存 中高生52万人」
厚労省研究班調査、全国264校から得られた約10万人の回答からの推計とある。
さもありなん、驚きもしないのが考えてみれば大きな問題なのだな。

ここで使われた8項目の質問票を転記してみる。

① ネットに夢中になっていると感じているか
② 満足のため使用時間を長くしなければと感じているか
③ 制限や中止を試みたが、うまくいかないことがたびたびあったか
④ 使用時間を短くしようとして落ち込みやイライラを感じるか
⑤ 使い始めに考えたより長時間続けているか
⑥ ネットで人間関係を台無しにしたことがあるか
⑦ 熱中しすぎを隠すため、家族らにうそをついたことがあるか
⑧ 問題や絶望、不安から逃げるためにネットを使うか

8項目中、5項目以上にあてはまれば、ネット依存の疑いありと判定する。
そのように判定された割合が、中学生の6%、高校生の9%に及んだということだが、
もちろんこれはメヤス、いわゆる氷山の一角であって、水面下の問題の広がりが重要なのはみな承知。
とはいえこれは都市化とIT化の必然的な結果というもので、町に住んで便利を求めることを諦めないまま問題を解決しようというのは、マクロレベルでは無理な相談だと僕には思われる。
もっとも、いまでは物理的な「田舎」にも、機能的な「都市化」が進んでいるけれどね。

それはさておき、この「8項目質問票」は安直なように見えてけっこう深い背景がある。
たどっていけば、アルコール依存症の膨大な臨床経験にさかのぼるものだ。
たとえば⑤などは、「一杯だけと思って飲み始めるが、一杯飲んだが最後、つぶれるまで飲まずにはすまない」という現象に相当し、要するに当該行動に対するコントロールの喪失を意味している。
各項目を随時/随事に書き換えて使われているし、使えるんだよ、これは。

そういえば下記の箴言は、最近マイブームの利休さんに帰せられていなかったかな、
一杯は、人、酒を飲む
二杯は、酒、酒を飲む
三杯は、酒、人を飲む

*****

依存症の病理は、実は人間性の深みに根を下ろしている。
精神科医になりたての頃は、とても思いの及ばないことだった。

深い話は僕にはできないが、基本的な治療論の問題として「依存をやめ(させ)る」というアプローチは概して難しく、心理的にもつらいことのように思われる。
「Aに対する依存を、Bというヨリ生産的な対象への依存で置き換える」
といったほうが、現実的であるようだ。

それというのも、依存症はしばしば「凝り性」とか「やりだすと徹底的にやらなければ気が済まない」といったこと、強迫性や完全主義の問題とつながっているからだ。ほどほどに、良い方向に向かえば、人をも身をも大いに利するこの傾向が、度を越えて、妙な方向に進んだ結果、人をも身をも滅ぼしてしまうのが依存症である。ひとつの対象を禁じれば、早晩、別の対象を発見するだろう。

お察しの通り、これは他人事ではない。僕自身が依存症への危険な性向を強く抱えている。
ふりかえって背筋が寒くなるほど危ない時期も、過去にはあった。
遠い話ではなく、今も日々さらされている危険である。

このところブログに入れあげているのも、
「より生産的な対象へ意図的に時間とエネルギーを投入する」
という予防的な意味があるんだろうな。
明敏な家人はそれを見通して、「朝ごはん前だけにしとけば~?」とニンマリやんわり突っ込んでくる。

「いや、ほら、ブログは多目的ツールでさ、これを書くこと自体、仕事の大事な一部なんだよ」

ほらほら、合理化が始まった・・・

*****

診療先へH先生から電話をいただく。
この冬あたり、同先生の研究所で「死生学」について話してみないかとの打診だ。

高いところから他人様に話して聞かせる蓄積はないが、自分の勉強の機会としてありがたく活用させていただきたい、そのようにお答えする。
本心である。

まずはタイトルを決めてお知らせしなければならない。
診療の合間に、あれこれ考えてみる。

結びめとしての死生観
何の結びめ?
個人と世界の/個人と歴史の/
個と超越者の

言葉の意味
言葉の不在

大きな喪失体験と大きな防衛操作 ~ 否認と躁的防衛

ユーモア

そうだ、ユーモアが大切だ!

Y先生がお母様を亡くされた。
言葉足らずのお見舞いメールに、返信をいただいた。

> 本人は、最後までユーモアを忘れずに希望を持って生きておりました。

素晴らしい、どんなふうに?
少し日が経ったら、そっと伺ってみよう。


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