2019年11月20日(水)
「じゃあ、あの雲は何というの?」
「・・・あれはリュウドウグモ」
「リュウドウグモは、どういう雲?」
「冬が近づいて空がきれいに澄みわたると、龍は嬉しくて、じっとしていられなくて、空の端から端まで一目散に駆けるのね。龍の吐いた息が、駆け抜けた跡に尾を引いて、それでこんなふうに見えるの。龍の道の雲と書いて、龍道雲。」
「空を駆けると、龍は疲れる?」
「疲れるよ」
「疲れてはぁはぁする?」
「はぁはぁするよ、その息が木枯らしになって、びゅうびゅう吹くの」
「それから、どうなるの?」
「龍は疲れたからお休みするのね。そうすると、龍のいびきがごおっ、ごおって吹雪になって」
「雪が降るんだ」
「雪が降るのさ」
「今は昔みたいに雪が降らないって、おじいちゃんが言ったよ」
「龍がいびきをかかなくなったんだね、お休みできなくなったのかな」
「なんで龍、お休みできないのかな、うるさいからかな、うるさいと寝られないって、おじいちゃん言ってた」
「じゃあ夜は静かにしようか」
「龍がお休みできるように?」
「おじいちゃんがお休みできるように」
「そしたら雪がいっぱい降るね」
「うん、きっと降る」
Ω