2022年1月14日(金)
愛に、血のつながりがいらないことは、夫婦がいちばん知っている。
朝刊に特大の全面広告、厚労省の「特別養子縁組という選択」に関するもので、コピー自体は2020年度の朝日広告賞入選作品とある。
その昔、精神科の先輩医師が、日頃は愛妻弁当なのに珍しく昼食を買いに出るのを見とがめられ、いつもは子どもの弁当を作るついでに自分も用意してもらえるのだが、子どもが夏休みに入ってしまったのでと言い訳した、その結句が、
「血がつながってないからね」
というのだった。
爆笑の中であらためて気づかされた。標準的な核家族の中で、血がつながっていないのは夫婦だけである。その夫婦が家族の基点となるところに人生の秘儀 μυστεριον がある。
血のつながりはきっかけをあたえ動機を強めるが、それ自体は何一つ完成しない。励ましを与える一方、かえって手ひどく傷つけることも珍しくない。
血がつながっているだけで家族とはいえない。血縁の有無にかかわらず、家族になろうとして真剣に相務める一群の人々を指して家族と呼ぶのである。
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