散日拾遺

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好きな人に好きな人が

2020-02-02 11:51:00 | 日記
2020年2月2日(日)
 好きな人に好きな人がいたんです ♪
 お~かみさま、こんな私にごほうびちょうだい ♫


 木曜午後の電車内、東北各地の雪景色とあわせて延々繰り返すのを、しばらく見とれた。家人にLINEで送ったりして、かなり面白いと思ったのである。帰宅後にネット検索して驚いたのは評価が二分されていることで、意外に「キライ」の tweet も多いらしい。もちろん人の感じ方はさまざまだから、好き派もいればキライ派もあって不思議はないが、「意味がわからない」という tweet がちらほらあるのは、それこそ意味がよくわからない。フラれてヤケになれば意味のわからないことをするのが人間の自然というもので、それを見て「意味がわからない」と言われても、「そ、そうね」としか答えようがない、フラれたことないのかな・・・
 といったことがポイントではなくて。
 帰宅後に音声付きで聴いてみると、メロディーが単純であるだけに頭の中をぐるぐる巡りそうな粘着感があり、だからこそCMとしては成功なのだろうが、そのことでもない。

 「好きな人に好きな人がいたんです」

 このフレーズが秀逸だというのである。
 生まれついての日本語話者には苦もなく意味が伝わるが、日本語学習中の外国人に見せたらどうだろうか。

 「(私の)好きな人に、(私とは別の)好きな人がいたんです」

 そういう意味と理解するのに、一手間二手間かかるのではないか。仮に自分が外国人として日本語学習中だったとしたら、日本語の厄介を嘆くと同時に、不要なものをすべて削ぎ落としたリズムと表現力に感嘆することだろう。
 「いたんです」という語尾がまた絶妙で、「いました」でもなければ「いるんです」でもない、「いたんです」という言い回しにこもる落魄と慨嘆が相当に雄弁である。恨めしさの混じった小さなため息が聞こえてくるような。
 あたりまえの口語表現の中から、軽妙でリリカルなフレーズを鮮やかにきりとった、その一点でマイ五つ星を進呈。早い話がこれを英訳してみろったって、できるものでありはしない。
https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMisibasisizuka.81796.html 

Ω

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