散日拾遺

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分断か統合か /「検疫」の語源

2020-05-18 08:56:40 | 日記
2020年5月17日(日)
 「特に、県境をまたいでの移動」を控えるよう、今朝のラジオなども強調しているが、どれほど意味があるのかよく分からない。各県の辺縁に住む人が県境を越えて隣町に買い物に行くのと、広い県の内部で遠距離を移動して繁華街に出かけるのと、どちらの危険が大きいか。
 県境をまたいでの移動を控えさせることによって、遠距離移動を控えさせる効果が期待できる、その理屈は分かるけれど、同時に近距離の越境までも過剰に危険視させる副作用があるし、それ以上に「県 vs 県」の敵対的構図をあおる悪影響の大きさが気にかかる。
 コロナが何を問いかけているかは、これから皆で考えなければならないが、「分断か統合か」というモチーフは選択肢から漏れることがないだろう。国境(くにざかい)が、自然や経済・社会の条件の違いをよく反映した幕藩体制の時代ならいざ知らず、現在の県境はそうした意味をあらかた失っている。
 政治的な思惑や恣意によって引かれた「境」は、いつもどこでも分断と抗争の永続的な火種になってきた。昔、国際政治の講義で教わったことについて後述する。

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 コロナ騒動で「2週間」という言葉を頻繁に耳にする。潜伏期を踏まえて不発症を確認するのに要する期間と理解しているが、何だかくすぐったい感じがしていた。
 わかった。
 くすぐったさの由来は、2週間(14日)ではなくて40日である。

 「英語の quarantine は、イタリア語のヴェネツィア方言 quarantena および quaranta giorni (40日間の意)を語源としている。これは1347年の黒死病大流行以来、疫病がオリエントから来た船より広がることに気づいたヴェネツィア共和国当局が、船内に感染者がいないことを確認するため、疫病の潜伏期間に等しい40日の間、疑わしい船をヴェネツィアやラグーサ港外に強制的に停泊させるという法律を定めたためである。
 日本でも、コレラ患者のいる船を40日間沖に留め置く「コレラ船」という言葉があり、夏の季語となっていた。
 同様の検疫は様々な疾患について各国で行われており、例えば21世紀までイギリスでは狂犬病を予防するため、全ての犬を含むほとんどの動物を6ヶ月間抑留するという法律が施行されていた。現在では、正しく予防接種が行われているという証明書を提出することで抑留を免れることができる。」
(Wikipedia: 検疫より、一部改変)

 文中の「21世紀まで」は、あるいは "until 21th century" の直訳か。 until ~ は、~を含まないという明確なルールが英語にある。8月31日まで閉店し、9月1日に開店する場合は、closed until September 1 である。うっかり closed until August 31 と掲示したもんだから、8月31日に来店した外国人客が途方に暮れたという話を、どこかに誰かが書いていた。
 forty と fourteen をいつになっても聞き分けられないのは、これはまた別の話、こちらの耳の問題である。

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