丑の刻参り、というのがある。
いわゆる呪いのわら人形というやつだ。
丑の刻(午前2時前後)、神社の木にわら人形を5寸釘で打ちつける。
と、まあ、なかなか壮絶な儀式である。
この丑の刻参りの発祥の地が、京都にある。
貴船神社が、それである。
いいや、断定しては角が立つか。
発祥の地といわれている、くらいがちょうど良いかもしれぬ。
貴船神社は京都の北の奥にある。
御所から見て真北で、上賀茂神社よりもっと北である。
貴船川のほとりにぽつんと建つ、あまり大きくない神社。
しかし歴史は深く、平安遷都よりはるか前の創建という。
こうした呪詛の儀式と結びついたのも、霊験あらたかであるが故かもしれない。
貴船の名物は、丑の刻参りばかりではない。
むしろ今や丑の刻参りなどあるまい。
これからの季節の貴船といえば、なんといっても川床。
一般的には鴨川の床のほうが有名だが、貴船の川床のほうが風情は上。
水しぶきに手が届かんばかりの位置に、床が設置されている。
山の谷間、緑が滴る中で、これはいかにも涼しげである。
貴船川は、やがて高野川を経て、鴨川となっていくが、上流だから水はきれいだ。
蛍が住むほどである。
貴船と蛍といえば、和泉式部が思い浮かぶ。
もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂かとぞみる
これは和泉式部が貴船に参詣したときに詠んだものといわれる。
川辺を飛び交う蛍が、恋しさのあまり私の体からさまよい出た魂のようだ。
訳せばそんな感じだろうか。
貴船神社は本来水の神様であるが、縁結びの神様としても知られている。
さて、貴船川の東側に聳え立つのは、鞍馬山である。
表参道は、反対側だが、貴船側からも、鞍馬山に登れる。
鞍馬山にある鞍馬寺では、6月20日に竹伐り会というものが催される。
なかなか珍しい儀式なので、ぜひごらんあれ。
”あいらんど”