古い話であるが、ある研究機関が自治体や半官半民の企業の方たちとの月に一度の勉強会に誘いを受け少し話をしたことがある。テーマが「地域に息づく伝統文化」という内容だった。その話の骨子が、地域の柱になりつつある伝統文化として話題を集めた「能勢の浄瑠璃」についてであった。
「能勢の浄瑠少し璃」は、大阪府豊能郡能勢町に伝わる、約200年以上の歴史をもつ伝承芸能である。もともとは素浄瑠璃として太棹三味線と太夫の語りによって物語が伝えられ、江戸時代のお座敷芸として賑わっていた芸能の一つ。
それを次の世代に受け継がれていく新たなチャレンジとして、1998年に新しく人形が加わり「能勢人形浄瑠璃」としてスタートした。それは「文楽」という伝統芸能というジャンルになるが、地域に根づく地域の大切な宝物として伝え継ぐためには地域色が大事なカギになっていく。通称の文楽とは少し異なものになるが、地域の伝承芸能として守り継いでいくためには地域色をだすことが求められる。そのために演目を「能勢三番叟」「風神雷神」「名月乗桂木」など能勢ゆかりの物語に特化して演じている。
2006年10月に能勢町制施行50周年を機に、「能勢人形浄瑠璃鹿角座(ろっかくざ)」として劇団の旗揚げとなった。それの少し前に人形浄瑠璃のホームグランド「淨るシアター」も建てられ伝承していく施設基盤ができた。それは観光の目玉として、また能勢町のこれからを支えるブランドに成長する礎になる。
浄瑠璃シアターの館長でプロデューサーの松田氏とそれを支える黒衣隊(くろこたい)の代表で三味線弾きの岡田氏の熱い解説に心が動く。この人形浄瑠璃を支える人たちはすべて地元のおじさん、おばさん、そして子供たち。農業の傍ら、仕事をしながら地元の芸能を支えている。地元の人々のエネルギーが何よりも肝心なことになる。
町を支えている原動力、つまり人や自然、そして伝統文化が今も脈々と生き続けている。
このエネルギーが伝統を継承し、お客様を呼ぶツーリズムへ、そしてビジネスへと実を結んでいく。令和の時代に入り、引き継ぐ次の世代が大きな原動力になりつつあるようだ。淡路島の人形浄瑠璃同様に、地域の文化がいつまでも輝いてほしいと願っている。
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