JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

霞流一 「おさかな棺」

2007-09-23 | BOOK
迷走と妄想の名探偵、紅門福助による四季折々の旬のお魚づくしの連作短編!
鯛、鰻、秋刀魚、鮟鱇・・・
落語の方なら「桜鯛」「鰻の幇間」「目黒の秋刀魚」「居酒屋」・・・
霞さんはさんまに「さんま芝居」を持ってきてくれました。

謎解きの強引さは短編のためか益々威力増大。
この著者の楽しみ方はあまりに強引な本格謎解きを、「そんな、まさか!」と楽しむ。又は謎解き以前の紅門福助の毒のあるギャグ、妄想ぶりを楽しむ。
私の場合、断然、後者。
謎解きに入るまでが面白く、謎解きになると冷めてしまう不思議な作家さんです。

本人自身、大の魚好き(食べる方)と言うだけあって、謎の精神科医・宇大公彦のお魚薀蓄付きのお食事場面がいかにも美味しそうでお腹が鳴り、唾液が溢れる。グルメ小説ですか?

最後に4編が1本の線に繋がる仕掛けがあるけれど、これまた強引です。
フンッと鼻で笑うか、ニヤリとするか、はたまたあきれけぇって怒り出すか。

読んでいくうち、不思議とその魅力に嵌ってしまうんですね。
「50会」に籍を置く者としては、今後も目を離せない作家さんです。
大きな書店に行かないと売ってないんですよ。
できればBOOK OFFあたりで安価に入手したい所なんですが(許せ!)なかなか思うようにはまいりません。

最後に紅門の妄想の件(最初の依頼人のおばさんの話を聞いているのだが、おばさんがどうも獅子舞にしか見えていない・・・)を一部引用。

 困惑した表情で首を横に振った。それにつれて茶色に染めたハワイアンの腰ミノみたいな髪が揺れる。太い鼈甲縁の眼鏡が張り付いて目の一部と化し、頬がぷくっと丸みを帯びた顔は獅子舞を連想させた。こうして、首を振って髪がバサバサ揺れるのを見ているとお囃子が聞こえてきそうだった。ついでに体型もがっちりしていて、ゆったりとしたグリーンのワンピースで覆い、太い首にはグリーンのスカーフを巻いている。いづれも唐草模様が付いていないのが実に惜しい。ワンピースの下に黒子が隠れていてもおかしくない。
 俺はめくって確かめたくなる衝動を抑えながら、
「鳥越さんは、何か隠しているようですね。・・・」《中略》

・・・顔が赤味を帯びてますます獅子舞に近づいている。
俺は笛でも吹きたくなるのを覚えながら、気持ちを話題に集中させて、
「車に轢かれて恥かしいって、どういう状況だろう・・・」

出張のお供にお気らくに読めます。

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2 コメント

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時には強引な展開も、それが癖になる罠 (早紀)
2013-08-13 00:46:46
霞さんって、きっとどうやって読者を上手く油断
させて伏線をさらっと読ませるか、考えているに
違いないと思いながら、作品を楽しんでます。
落日のコンドルも面白かったですし。

書評を読みたくて、いろいろなサイトを巡っていたら見つけたのですが、
http://www.birthday-energy.co.jp/
ってサイトの霞流一さんの記事が、事細かで
意外に面白かったですよ。
返信する
Unknown (imapon)
2013-08-13 16:10:23
早紀様、コメント感謝。
霞流一氏の熱烈ファンの方ですか。
もともと変わった事に興味を持ち造形が深く面白い人でした。

最近、ぜんぜん本を読んでません。
読書復帰には「落日のコンドル」あたりが良いかな。
良くないって。
返信する

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