ノープロブレム盆踊り

2015年08月19日 | ショートショート

家が近づいてきたら、もう孫たちのにぎやかな声が聞こえてきます。長女家族も帰ってきとるな。
う〜ん香ばしいこの香り、わが家のお盆定番、BBQの真っ最中のようです。
庭に入ると芝生の上のコンロを囲んで家族全員大集合、みんな日に焼けて白い歯が眩しくこぼれ、ばあさんも元気そうじゃ。
どれどれ、ワシもひとつ。
「ジージ」
末の孫娘のミリが最初に気がつきました。ヒエエエ!長女の悲鳴に視線の先を見た家族一同、ワシの姿に蒼然。
腰を抜かしたばあさんは芝生に倒れたまま空に向かって南無阿弥陀仏。
そりゃまあそうでしょう。病気を患って数年前に死んだはずのじいさんがひょっこり戻ってきたのですから。
「お、お盆だから戻ってきたのか?」
「それともお墓参りの催促に?」
「じょ、成仏しなはれ〜!」
まったくどいつもこいつも。
「縁起でもない。ワシゃ死んどらん。ワシが戻ってきたのは、あの世からじゃなく未来じゃ!」
「未来?父さんは確かに火葬場で…」
「実は火葬場の焼却炉が未来人の作ったタイムトンネルになっとってな。選ばれたワシは未来に招かれ蘇生されたうえ、未来の医療でホレこのとおり、以前にましてピンピンじゃ」
長女が訝しげに聞きます。
「そんなおバカなSF話、にわかに信じ難いわ。百歩譲ってなんで父さんが?」
「盆踊りじゃよ」
「お父さんオリジナルの、あのテキトーな踊りのこと?」
どこまでワシをバカにしとるんでしょう、あっちの世界ではバカウケなのに!
「ジージ、コレどーじょ」
末孫のミリがBBQの串を差し出します。ああ子供はなんて素直なんでしょう。
ところが串はワシの手をすり抜けて芝生にポトリ。
長男が真っ青な顔になりました。
「や、やっぱり幽…」
「バカな!タイムマシンは12次元宇宙の歪みを利用しとる。違う時空間に存在しておるから干渉しあわないのじゃ」
「全然わかんない」
長女が全然わかんなくても、孫たちはワシに突進してはすり抜けてもう遊び始めています。未来は子供たちのものです。
「ジージのボンオドリおしえて!」「ボクにもボクにも!」
せがむ孫たちに自慢の盆踊りを教えてやることにしました。
そのうちビールで酔った息子たちも踊り始め、ばあさんも踊り、イヤ楽しいのなんの。
「ええい、未来の盆踊りだろーが、あの世の盆踊りだろーが、踊ってやるわ!ア、ソレ!」
長女まで缶ビールと串を手にヤケクソで踊り出し、そりゃもう最高のお盆です。
孫のター坊が踊りながら尋ねます。
「おじいちゃん、今度はいつ帰ってくんの?」
「地球の磁場の関係でタイムマシンが稼働するのは毎年お盆になるのう」
「や、やっぱり幽…」
イヤもうどっちでもいい感じでノープロブレム盆踊り!
     


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