凡人マスター

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吉田修一『最後の息子』・長崎と夏休み

2005年07月26日 | 
夏だなー。通勤中、ランドセル姿の子どもを見かけなくなるとそう思う。

先週末から吉田修一氏『最後の息子』を読んでいる。
ちなみに吉田氏は長崎出身の芥川賞作家で『東京湾景』の作者。
ドラマと小説は内容がちょっと違うけど…『東京湾景』という言葉はなんか好きだなー。
東京湾景、東京1K、東京1LDK、TDL…おぉ!話が脱線しそうだ。
実体験が元になっているのか、東京と長崎の話が多い作家さんで、
しかも長崎の話は出身校がかぶっているせいか出てくる町名が生活圏内!
カタルシス感じまくりです。
雲龍亭→龍雲亭、聖マリア→聖マリアンヌになってたのは地元ウケ間違いナシ。


地元のことを考えていたら小学生の頃の夏休みを思い出した。

7月の下旬、1日の生活サイクルを円グラフにして色分け。まずは“かたち”から。
(日記やその日の天気もきちんと記入)
遊ぶことを放棄して宿題に励む。ドリル・ドリル・ドリル。
隙間なく重なったページが徐々に減っていくのだけが楽しみ。
8月に入るまでに宿題の8割終了。
(この頃から日記と天気が放置される)
わからない問題と工作、絵、理科の自由研究、読書感想文が残る。



自由研究→8月上旬、お母さんと旧長崎英国領事館で現在の野口彌太郎記念美術館
     でやってた自由研究の質問室へ行く。プラネタリウムもやってたなー。
     長崎の友達よ、懐かしかろ?行ったやろ?
     昔はこの建物怖かったけど、今思えば洒落た夏休みだよね。

絵→8月中旬、原爆記念日とお盆の空気を引きずったまま平和な絵を描く。
工作→8月下旬、お父さんが作る。それを手伝う。

読書感想文、これは夏休みの宿題の中ではデザートにあたる。
課題図書じゃない場合は7月から数冊の本を読み、一番理解し難かった本の感想を書く。
感想文、作文、論文、これらを書くの上での妙なこだわりがある。
試験中でもそう、しかも小学生の頃からだ。
原稿用紙の最後のマス目を「。」で終わらせること。
400字詰めなら400字目は「。」でなければならない。
我ながらキチガイじみた癖だと思う。でも達成感は格別だ。

小2の時(転校前)ラジオ体操の後、近所の男子2人に誘われ冒険に出たことがある。あてもなく登った。坂道のだらけの長崎を、下るのではなくただひたすら登った。ちょうど星取町付近で港や街が一望できるところがあった。そこで力尽きた。まだ冷たい地面に座ってしばらくぼーっとした。麦わら帽子のあごのゴムをずっと引っ張っていたこと、男の子のランニングの色、3人でガードレールにもたれ何か叫んだこと、それらを鮮明に覚えている。

もうひとつ鮮明に覚えているのは、庭で弟が丸いビニールプールで遊んでいる姿だ。緑のスケルトンタイプの水鉄砲で遊んでいた。どんな笑顔だったかまで焼き付いている。弟は2歳だった。外人のように茶色い髪の毛に大きな黒目、白目は薄い水色だった。私は一緒に遊ぶでもなくただ弟を見ていた。

ひとり暮らしの私の家にはその頃の弟の写真がある。
時々あの夏に戻ってみたくなる。