白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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扇興杯準決勝その2

2016年07月16日 09時00分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様おはようございます。(一度言ってみたかった)
本日は昨日に引き続き、第1回扇興杯女流囲碁最強戦の準決勝の模様をお伝えします。
向井千瑛五段(黒)対藤沢里菜三段の対局です。



序盤、黒1から5はちょっと違和感のある打ち方です。
下辺を盛り上げる方針と合っていない気がします。
この後白Aから上辺を盛り上げる事になり・・・





白△まで左上を大きな地にしては白好調です。





しかし、白2とボウシで消しに行ったのは踏み込み不足だったのではないでしょうか?





黒の形が薄いので、踏み込んで行くべきだったと思います。
白Aのハネ出しで分断するのが狙いです。





実戦は黒1の受けに対して、白2、4のツケ切りが常套手段です。
白はこの手でやれると見ていました。





もし黒1と穏やかに受けてくれれば、白6までの進行が想定されます。
黒地を割っただけでなく、左下黒が弱い石になっています。
これが白の注文でしたが・・・





黒2、4が凄い手でした!
向井五段らしい最強の打ち方です。
一見すると黒危険なようですが・・・





白1とやって行くとこんな進行でしょうか。
下辺を破れますが、黒が厚くなるとAと左下白の眼を奪う手が厳しくなります。





あるいは黒4を打ってからの黒8切りかもしれません。
やはり黒Aが狙いです。
白はどちらの図も思わしくないと判断したのでしょう。
しかし、仕掛けた以上はこれで行くより仕方なかったのではないでしょうか。





実戦は白5までと引き上げましたが、後手で黒地を固めただけになってしまいました。
黒8の絶好点に回られては、形勢は一遍に黒に傾きました。





地道な争いでは勝てないので、その後白は中央を広げる作戦に出ています。
ここで黒Aあたりから右辺の白にプレッシャーをかけて行けば勝負は早かったでしょう。





黒1と堅い石から飛んだのはどうだったでしょうか。
やや震え気味の印象で、白2から目一杯に中央を囲って少し難しくなりました。





黒1から5と切って行きましたが、白6と中央を囲い切って勝負に出ました。
右辺白は生きていませんが、黒にもAやBの傷があって味良く取るのは簡単ではありません。





しかし、震え気味だった向井五段がここで座り直しました。
しっかりと時間をかけて黒1を決行!
恐れずに白を取りに行きました。
これが本局の勝着でしょう。





白は色々と黒の嫌味を衝いて行きますが、黒はしっかりと受けているようです。
白△が最後の罠で、黒Aと受けると白Bの切りが先手になるため、白Cから右上隅を手にされてしまいます。





しかし、既に計算も出来ていたのでしょう。
冷静に黒1と右辺を取り切って黒の勝ちが決まりました。
向井五段の鋭い仕掛けが光った一局だったと思います。

謝女流本因坊と向井五段で争われる決勝は、明日7/17(日)の午前9時から行われます。
対局の模様は幽玄の間囲碁プレミアムで生中継されます。
お楽しみに!