白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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幽玄の間

2016年07月22日 16時31分45秒 | 幽玄の間
皆様こんにちは。
本日は昨日行われた対局から名場面をご紹介します。
なお対局の模様は幽玄の間でご覧頂けます。



彦坂直人九段対(黒)佐々木毅六段戦です。
黒1の打ち込みに対し、白2と根拠を奪って攻めて来ました。
黒はどういう方針で行きますか?



殆どの方は黒1と逃げてしまうでしょう。
しかし白6までと白は広い方に向かい、黒はダメ場を走っています。
しかも黒が安全を確保するまではあと何手か必要になるでしょう。





実戦、黒1は軽いおまじない、そして黒3が手筋です!
「サバキはツケから」の格言通りですね。
左下は白が圧倒的に強い場所なので、正面から戦ってはいけません。





白1と伸びてくれば黒2から捨てます。
増えた白地以上に黒地が盛り上がっています。





実戦は白1のハネでしたが、黒2の切り違いがこれまたサバキの手筋です。
やはり打ち込んだ石は捨て、外に勢力を築きました。
白の多い場所で五分の分かれを得ては黒満足です。
鮮やかなサバキでした。





もう1局は依田紀基九段(黒)対マイケルレドモンド九段戦です。
ここまで良い勝負に見えました。
しかし、白1と利かしに行った事から局面は激変しました。





黒1と受ければ右辺白がいくらか強化されるので、安心して白2の攻めに向かおうという事でしょう。
しかし黒は反発しました。





黒1!
通常ではあり得ないほどの踏み込みです。
しかし上辺の黒はガチガチに堅く、この堅さを最大限に利用する手でした。





実戦、白1から3と出られて取られそうですが、黒4とさらに踏み込みました。





白1と受ければ黒2、4でAとBが見合いとなり、白潰れです。





実戦は白1と戻りましたが、黒8までと渡りに成功しました。





白も1から隅を取り、黒8までの分かれとなりました。
後に黒Aの封鎖が先手です。
隅の黒地が白地に変わりましたが、上辺の黒は堅いので地だけの問題です。

一方黒は右辺に地と厚みを得ました。
元々右辺は黒の弱い石があった所だけに、大きな成果です。
この厚みが睨みを利かせており、白は下辺にも深く踏み込みづらくなっています。
本来白Bで黒を攻めたい所でしたが、Cと遠慮する事になりました。

手堅く打つのは立派な打ち方ですが、ただ堅いだけでは遅れてしまいます。
どこかで仕掛けてこそ堅さが生きて来ます。
依田九段の仕掛けのタイミングは皆様の参考になるでしょう。

明日7/23(土)は第1回13路盤プロアマトーナメントの準決勝と決勝が幽玄の間で行われます。
午後1時~準決勝
午後3時~決勝
となっております。
解説は私が担当します。
今回はシステム上解説が残らないため、ぜひリアルタイムでご覧ください。
お楽しみに!