白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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13路盤プロアマ本戦その3

2016年07月06日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日も第1回13路盤プロアマトーナメントが行われました。
早速対局を振り返って行きましょう。



1回戦、高梨聖健八段(黒)対二十四世本因坊秀芳戦です。
黒1!
この手はプロの19路盤対局ではまずお目にかかれません。
いわゆる無理筋で、定石書にはハメ手として載っていると思います(笑)
そんな手を打った黒の狙いは何でしょうか?





白は1、3の対応が正しく、これはもちろん黒も想定していました。
1子を取っては白が厚いというのが常識ですが、黒8、10が後続手段です。
白石を上辺に偏らせ、凝り形にするのが狙いです。
13路盤ならではの意欲的な作戦でした。





手順が進み、このような場面になりました。
左上の黒にはまだ生きが残っていますが、白Aと取り切っているようでは右下の黒地の方が大きくなりそうなので・・・





白1と突入しました。
黒も生きられては負けなので、皆殺しの構えです。





その後黒△までと進行、次に白Aあたりに打ってどうなるかと思っていましたが・・・





白1を先手で打てることに満足して、あっさり大石を見限ってしまいました。
白3で左上黒を取り切れば良いと見ています。





黒1、3と右上を打ちましたが、左下白4が「見合い」です。
これでコミガカリの白勝ちが確定しました。
この後変化はありましたが、勝負は動きませんでした。
13路盤での優勝経験がある二十四世本因坊秀芳、見事な判断力で2回戦に進出しました。





次は大垣雄作九段対芝野龍之介アマ戦です。
黒は右下白を攻めていますが、このまま攻めを続けると・・・





黒1で眼を奪えますが、白2の「2目の頭」が形の急所、これで右辺の黒はダメ詰まりで動きが不自由です。
白4、6にも黒7の守りが必要、白8となると白は全部繋がってしまいました。





そこで実戦は黒1、3のツケ切り!
典型的なモタレ作戦です。
上辺を打っていますが、本当の狙いは下方にあります。





白1以下の対応で黒が取られてしまうようですが、これは捨石です。
この後白Aと取るしかありませんが、そこでいよいよ黒Bと眼を取って攻めます。
黒4、6、8あたりの石が待ち伏せており、白は上辺に繋がる事が出来ません。
この図はまずいので実戦は違う対応をしましたが、やはり黒は右下の白を攻める事になりました。
難しいシノギ勝負になりましたが、最後は大垣九段が白を仕留めて勝利、2回戦に進出しました。





最後は2回戦、大垣雄作九段対二十四世本因坊秀芳戦です。
白△とマネ碁を志向しています。
黒Aと受けるのが通常の対応ですが、白Bとマネ碁が続きそうなので・・・





黒1と出て行きました。
恐らくこの手にはマネ碁封じの狙いがあります。
白がマネ碁を続けるならAですが・・・





このようにシチョウに抱える形に持っていく作戦でしょう。
白もAと真似をしますが・・・





お互いの石を追いかけ合う形になって・・・





黒4となると・・・あれ?
白だけが取られてしまいました
シチョウをぶつけるのは、古来より伝わるマネ碁封じの手段です。





という事で白もマネ碁はやめて、白1と押さえました。
黒2と切って戦いが始まりました。





しかし白△となって、白は上辺も右辺も安定しました。
こうなると黒が切って行ったのは空振りになっています。
マネ碁は封じたものの、どうやら黒が一杯食わされたようです。





右辺は白3で生き、一方右上の黒は白Aと打たれるとコウになります。
最終的には右上の黒が取られてしまいました。
二十四世本因坊秀芳がベテランの芸で連勝、準決勝進出を決めました。


次回の対局日は7/9(土)、残りの1回戦2局と勝者による2回戦が行われます。
幽玄の間で中継されますので、ぜひご覧ください!