白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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扇興杯準決勝その1

2016年07月15日 20時49分17秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日第1回扇興杯女流囲碁最強戦の準決勝が行われました。
準決勝の組み合わせは謝依旻女流本因坊青木喜久代八段向井千瑛五段藤沢里菜三段となり、謝女流本因坊と向井五段がそれぞれ勝ち決勝進出を決めました。
本日は謝女流本因坊(黒)対青木八段の対局の模様をお伝えします。



序盤から難解な事になったようですが、これは大型定石でプロの対局では数多く打たれています。
白1はAを狙ったシチョウ当たりで、黒は2で防ぎました。
ここで白もAと逃げて行くのが普通ですが・・・





白1、3とシチョウ当たりからの連打を急ぎ、黒2と抜かせました。
右上の連打も大きいですが、黒4と攻められると左下で白が打った手の大半が悪手になっています。
この分かれは黒が良いでしょう。





その後黒△とノゾキを打たれた場面です。
ここでAと受けて生きを確保するか、Bと頭を出すのが普通の発想ですが・・・





気合を重視する青木八段らしく、白1、3と反撃!
しかし黒6となって左辺の白が不自由です。
Aとツケて足早に進出したいのですが・・・





黒2、4であっ!と言う事になります。
ダメ詰まりは怖いですね。





止むを得ず白1でしたが、空き三角はプロの最も嫌う形です。
黒8、10で眼を取られ、苦しくなってしまいました。





左辺の白をなんとか逃げ出したものの、左上の黒模様が大きく固まっています。
さらに黒△が絶好点で、白5子が攻められる事になりました。





白は必死に凌ぎましたが、狭い下辺に押し込められてしまいました。
ここで白Aなら無事ですが、黒Bと1子を抱えられては勝ち目がありません。





そこで白1から5が青木八段の勝負手!
黒Aと打たれると大石に眼がありませんが、中央黒の大石と刺し違えようとしています。
ここで黒が震えて逃げ出すようだと形勢は急接近しますが・・・





黒1、3のツケ切りで力強く反撃!
これがこの碁の決め手になりました。
白の包囲網を破ろうとしています。





黒8で白を切断、白も9から黒を切断しましたが・・・





中央の黒7子と下辺の白が攻め合いになり、その過程で△の種石が抜けてしまいました。
中央の黒は取れましたが、これでは取引になりません。
ここで勝負ありました。
最後は右下の白も仕留め、謝女流本因坊が決勝進出を決めました。

謝女流本因坊の力強い打ち回しが光った1局でした。
青木八段としては序盤から守勢になってしまい、力を出すチャンスがありませんでした。


明日はもう1局の準決勝、向井千瑛五段対藤沢里菜三段の対局の模様をお伝えします。
なお決勝は7/17(日)9:00から、幽玄の間で中継されます。
お楽しみに!