■起業家育成塾トップインタビュー

夢を生きる方々に学生がインタビュー

英治出版株式会社    原田 英治 社長

2008-09-29 07:00:00 | インタビュー記事

今回はブックファンドという独自のビジネスモデルで事業展開
を行うベンチャー出版社である英治出版の原田英治社長に
インタビュー形式の原稿をご投稿していただきました。 

006b
 
●株式会社英治出版のホームページは こちら

 
●原田英治氏 プロフィール

慶応大学法学部法律学科卒業後、
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
数年勤務の後、退職し、家業である一世印刷株式会社に入社する。
取締役、代表取締役副社長を務めた後、一世印刷株式会社を退職
し、有限会社原田英治事務所を設立。2000年に現在の英治出版
株式会社に改組し、代表取締役に就任。「ブックファンド」という
新しい出版ビジネスモデルを考案し、事業展開を行っている。
 
  
◆現在のお仕事について
 
英治出版という出版社を経営しています。自分たちの役割を出版社
というより、「パブリッシャー(publisher)」だと思っています。
パブリッシャーの語源にはパブリック(public)があり、私たちが
共感し応援したい著者や作品をパブリックにすることで、著者の
夢や目標を前進させる「応援ビジネス」が私たちの仕事です。
 
「パブリック」という言葉を意識した時、二つの大きな方向性が
表れました。パブリックにすることで社会的価値を形勢するのが
目的であり、紙の本を出版することが目的ではない。目的達成の
ためにメディアはもっと柔軟に選択すべきだと気づきました。
 
もう一つは、パブリックって日本だけじゃない、という視点。
日本だけじゃないという視点は、世界の多くの出版社もあまり
持ち合わせていない考え方のように思います。著者に対して母国語
で対峙しなければならない出版業の特性からか、編集者だけでなく
経営者までもが国内指向が強い経営体質になっています。
 
僕らは2004年1月から韓国に子会社「エイジ21」を設立し、
韓国語での出版活動を行っています。近い将来、英語圏にも進出
予定です。将来的には、なるべく多くの言語での出版インフラを
もつことで、世界が共有すべき情報や思想を世界に提供し、それ
をきっかけに一つでも多くの対話が生まれることを願っています。
 
もうひとつ英治出版の特徴的なところは、ブックファンド事業に
あります。これはプロジェクトスタイル出版のことで、出版資金を
外部調達することから「ブックファンド」と呼んでいます。個人や
企業など出版業を本業で営むひとでなくても、プロジェクトとして
1タイトルからの出版事業に挑戦できる仕組みです。現在は外資系
コンサルティング会社など、企業ブランディングの出版に使われる
ことが 多い仕組みです。
 
なかにはスリランカで活動するNGOが計画する孤児院建設を出版
プロジェクト化して応援する企画であったり、グローバルな視点が
要される社会問題をテーマにした書籍をそのテーマに共感するひと
たちが出資して出版されたものなどがあります。日本の出版社と
共同出資で海外(韓国)で出版したり、韓国企業が出資して日本で
出版したりと、継続して出版業を営むのではなく、私たちのイン
フラをプロジェクト単位で利用する出版活用事例が増えています。
 
近い将来、私たちが英語圏やその他言語に進出した際には、特に
非英語圏の著者や出版社に英語をはじめ様々の言語での出版に
どんどんチャレンジしてもらいたいと思っています。日本に、
世界に、出版界に新しいプレイヤーが参入することで、世界は
もっと面白くなるし、近くなる。プロジェクトスタイルでの
出版参入を支援するのが英治出版のブックファンドです。
 
 
◆会社を始めたきっかけは
 
祖父が起業した家業の印刷・出版業に携わっていましたが、
経営方針の違いからその会社を辞め、妻と二人で自宅の一室を
事務所に出版社を創業しました。私たちの会社と仕事をすること
で、社員、取引先、ステークホルダーの方々の夢が大きくなって
いく組織を作りたいというのが創業時の夢でした。
今も、それを目指して経営しています。
 
 
◆学生時代の考え方や行動の仕方
 

小学生の時からスイミングの選手として週6日、また中学・高校も
水泳部に所属し、体を鍛えました。祖父の代からの趣味である囲碁
を父親から習いました。高校時代には埼玉県代表として全国高校
囲碁選手権に出場し、勝負勘といいますか、交渉術といいますか、
勝敗を左右するコミュニケーションについて碁盤の上で体感した
ことは大きな財産です。
 
高校3年のとき、AFSを通じてアメリカのカリフォルニア州に
一年間交換留学しました。 故郷を離れ、家族以外と生活したのは
初めての経験でしたし、さらに言葉も通じないわけですから、
異文化コミュニケーションについて多くを学ぶことになりました。
自分の持っている文化的背景やメンタルモデル、他人の持っている
それらを認識することで、感情的な反応を極力抑えて思考したり
理解したりすることの重要性を学びました。
 
大学時代はファミコン世代で、よくゲームをやっていた記憶があり
ますが、留学団体のAFSでボランティアしたこと、大学1年の夏休み
に友達とアメリカ一周10000マイルのドライブ旅行をしたこと
などが印象に残っています。そして大学時代に、英治出版を現在
応援してくれている仲間たちに出会いました。
 
 
◆就職活動、社会人、働くことについて
 

大学卒業と同時に起業したくて、起業プランについてあれこれと
考えていましたが、これといったプランにたどりつけず、就職を
し経験を積むことにしました。それで選んだのがアンダーセン
コンサルティング(現アクセンチュア)でした。
 
(当時は)経営の勉強、システムの勉強ができ、多用な業種が
見られると思っての就職でした。シカゴでのプロジェクトや国内
大型プロジェクトなど、約4年間でとてもよい経験をさせてもらい
ました。アクセンチュアで得た経験と人脈がなければ、現在の
英治出版は存在しないと間違いなく言えます。
  
その後、家業の印刷会社などで学んだことも小さな会社を経営する
うえで実務的でとても重要なことが多くありました。経営の小さい、
細かいことに気がつくことができるとしたら家業での経験が活きて
いますし、大きな経験(「○○億円という対価が得られる仕事って」
のようなこと)についてはアクセンチュアで体感したことが活きて
いると思います。
  
  
◆自分に最も影響のあった事(人)
 
大学時代に熱心にしていたAFS(留学団体)でのボランティア活動
を自業自得から一時辞めざるを得ない状況になったことがあります。
自分なりに熱心にやっていたつもりでしたから、「僕がいなくなれ
ば、この団体の業務は支障をきたすのではないか」と考えていた
くらいでした。
 
しかし、ある友人が、「(僕が)いなくても、組織はまわる。
多少は混乱するだろうけどね」と教えてくれました。そして、
やはりその言葉どおりに組織は無事に業務をこなしていくわけです。
この経験は、組織が持つ力と構成要因であるメンバーの力の
関係性について大事なことを教えてくれました。
 
あと、元リクルートフェローであり和田中校長であった藤原和博
さん。英治出版の応援団長にもなっていただいていますが、以前
彼から「(原田は)自分でお金はもっていないかもしれないけど、
自分でやりたいことに必要なお金を集める能力はあるでしょ」と
言ってもらった。
 
当時は時価総額などの言葉がもてはやされていた時代でしたので
なおさらですが、「そうだ。僕はやりたいことがやりたいだけで、
やりたいことをやるのに自分のお金かどうかなんて関係なかった」
ということを気づかせてくれる大事な言葉となりました。
 
 
◆理想の人生と将来の夢について
 
自分の想像力を駆使し、誰かの夢を応援していく。目標達成に壁が
あれば、その壁を乗り越えるために、さらに想像力を駆使していく。
想像力の限界が自分の限界になる。そうやって、誰かを応援し続け
る中で、自分の限界を拡げていきたい。誰かの夢を応援した結果が
世の中に十分貯金できると、知らないところで少しずつ、そして
一気に自分の夢が前進していく感じ。そういった興奮と感動を
味わいたい。
 
そういう姿勢で社会と関わって歩いていきたい。そしてその姿勢に
共鳴し自分と同じ方向に向かって歩いてくれる仲間がいたら、
とても幸せだと思う。生物的に僕が死を迎えることがあっても、
僕が歩いてきた道と同じ方向に向かって歩き続ける仲間たちが
いる限り、僕の人生は続いていくのかもしれない。
 
他人から見れば、紆余曲折の人生に見えたとしても、自分で振り
返ったときに、まっすぐな道を歩いてきたと思える人生を送りたい。
そして、これからも自分の目には、まっすぐな道を歩いていきたい。
 
そう思えたら満点。
 
 
◆夢や目標に向かって頑張っている人達に一言
 
夢限大の人生。夢の大きさが、自分の大きさになる。
「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する」 
           
                英治出版創業者 原田英治
   
    

 
 
◆原稿のご投稿を本当にありがとうございました 
 
 

*****************************
  
英治出版株式会社 
代表取締役 原田英治 様
 
今回はお忙しい中、原稿のご投稿をありがとうございました。
私たち学生にとって、事業をされている方の人生のプロセスを
教えていただくことは将来についてとても多くの教訓を学ぶことが
できます。本当にありがとうございました。
   
英治出版の書籍「シンクロ二シティ」を手にしてその内容の感動を
覚えたのは、今から半年以上前のことでした。その後、英治出版の
出版プロデューサーである秋元麻希さまのご好意により、その書籍
の監訳を務められた神戸大学大学院教授の金井壽宏先生への
インタビューを実現することができました。そして、今回、秋元さま
から英治出版の創業者の原田英治社長のご紹介をいただき
ました。この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとう
ございました。

記事編集 水谷 翔 (起業家育成塾)
 
*****************************

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ㈱スタンディングエッグ  ... | トップ | メディアジャパン㈱    ... »
最新の画像もっと見る

インタビュー記事」カテゴリの最新記事