起業家育成塾は“企業について学ぶ”ためではなく、
“将来の目標の実現”のために集まったメンバーです。
塾代表のこの言葉を受け取った小野会長は早速、ご自身の軌跡に
ついて話して下さった。小野会長は、京楽グループで勤務され、
後に独立という経路を辿っていかれた。
「一番大事なことは、信用を作ることだった。会社は一人では
やれないし、会社っていうものはお客様にサービスするもの。
サービスとして、どういうものでお金を儲けるかっていうもの
だから、信用がないと出来ない。信用を得るためには、まずは
銀行の信用を得る必要があった。どうやってお金を借りて、返済
するかということをやらなくちゃならない。」
独立して初めての事業、郊外パチンコに成功した小野会長は、
後に金山での新規事業に取りかかった。当時の日本では
珍しかったファーストフード業界に目を向け、契約を交わすこと
となったのは、あのミスタードーナツであった。
研修するってことが、ものすごく大事である
「企業というものは、ただ働け、ただお客様にサービスを売れ、
ではよくないのだということ。研修がいかに大事であるかという
ことを学んだ。ミスタードーナツのある立派な男が、
ものすごく厳しい研修をして日本なりの店に作り変えていった。
だから成功していった。」
ひとつの経営の哲学
「ダスキンの経営理念の“損と得あらば、損の道を行く”。
この言葉を聞いた時は、損の道を行くなんて、和尚みたいなこと
を言うなぁと思ったんですよ。でもこの年になって、わかって
きたことで、これは一つの経営哲学なんですよ。
こうあるべきだという姿を考えなければならない。」
小野会長はダスキンと知り合って、目からうろこであったそう
だ。私たち学生がこの経営理念を理解するには難解すぎる気が
した。
後に小野会長は、就業規則や賃金体系などを必死に学ばれた。
現在とは全く違う雇用体系。今までに築かれていなかった体系
を、ご自身で作り上げていった。
仕事っていうのは目標が大事
「目標がないのは作業って言うんだよ。今日は何をやる日か、
何を優先にさせて、何を今日中に片付けるかを決めて仕事を
しないとだめだ。今だって、ちゃんと夜中に起きて、明日
やることをノートにとっておくんだ。
将来のビジョン
「一朝一夕には金は儲からないんだよな。どんなことでも
10年はかからないとね。でも銀行なんて、そうそう待って
くれやしない。だから我々は常に、将来3年どうあるべきかを
考えている。働く人にしても、うちの会社は3年後どうある
べきかを明確にしておかないとついてこないだろ。」
時代について
「私たちは生活のために働いてたんだな。食うために働いて
たんだよ。今は全然違うもんなぁ。嫌いとか好きとかが言って
られない時代だよ。うちの社員は早飯だよ。私が早いもん
だから。(笑)」
「みんな水商売なんだよ。今日までの売り上げは保証してくれる
けど、明日の売り上げの保証はないんだよね。“企業”だ
なんて偉そうなことを言っても、なかなか難しいんだ。あてに
ならない商売なんだ。後のことを考えてられない時代だった。」
生きる企業にならないと
「一時的な金儲けは誰でも出来る。でも長続きはしない。
だから永続することを考えなくちゃいけない。あぶく銭は儲かる
んだ。だから40年はもつ会社を作らないと、働く人が勤めて
くれないだろう。現在は、100周年、120周年はもつ企業に
するための事業を考えている。」
小野会長は最後に、タイホーグループの経営理念を話して
下さった。
働くことを歓び
人間っていうのは、働くことが当たり前なんだ。働いて社会に
恩返しをするんだ。みんな着ているものは自分で作ったもの
じゃない、何一つ。だから、その報酬として金儲けをするんだ。
自らを磨き
自分の足りないものを補ってくれるのが会社なんだよな。
社長は欠点丸出しなんだよ。だから、みんなに助けてもらう
んだ。そして自らを磨いていくことが大事。
客の心を心とし
相手の心が読めないと社長にはなれないんだな。
働く人の心が読めなかったらだめだよな。それに、相手の身に
なることがサービスだよな。そのためには苦労をしないかん。
何事も前向きに
自分のせいにしなさい。人のせいにしてはいけません。
自分のやり方、物の考えに問題はないかと見つめること。
明日に愛をかかげ
人間には必ず、平等のチャンスはあるのですから。
己を変える勇気を持つこと
人間っていうものは、俺は絶対にやるんだ!と念じれば絶対叶う
ものなんだよ。不思議なものだけど。とにかく無我夢中で
信じること。私は今でも20歳くらいの考え方と合理性を持って
いるつもり。(笑)
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講演中は終始、年齢を感じさせない表情をされていた小野会長。
起業家から創始者としてたどり着くまでのご苦労は、私たちの
想像以上のはずです。いただいた本を手に取った時、
きっと塾生全員が本の重たさ以上のものを感じとったことで
しょう。
塾生 鎌田有紀
今回の原稿は塾生の鎌田有紀さんにお願いいたしました。
今回の経験を通じて彼女が将来目指すものの実現に
繋げてもらいたいという私の思いからです。
私もまだまだマラソンのスタートラインを切ったばかりですが、
やはり一生懸命になっている人には応援したくなるものですね。
心熱くなる文章ありがとうございました。
これからの活躍を楽しみにしています。
起業家育成塾 代表
伊藤 寛子