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Fred Hersch Trio/Everybody's Song But My Own

2011-01-25 01:29:24 | ジャズ




まずはFred Hersch復帰後の時期にレコーディングを持ちかけたVenus Recordに感謝。
そしてこの時期本人がどういう状態だったのかは本人にしかわからないところでしょうが、それに応じて作品を作ってくれたHerschに感謝。

どういう取り決めが交わされるのかは知りませんが、今回も基本的にはVenus色に染まった作品になっていると思います。今までのミュージシャンもそうですが、レーベルのカラーは全く揺るぐことがないんですね。それだけに好き嫌いも分かれることが多いレーベルですが、ある意味どういう仕上がりになるか読めるので聴き手は選びやすいと言えると思います。

善し悪しが分かれるのはミュージシャンの素の個性が合っているかそうでないかというところが多いと思います。Fred Herschは合う方だと思っているのですが、すばらしい作品も多いのでなかなかハードルは高いです。


Webで試聴した時点では「Herschの音楽」というより「スタンダードを演奏するジャズのピアノトリオ」になっている感じを受けたことで少し残念な気持ちになっておりました。曲やフォーマットを超えて彼の音楽になっていくような感覚が、例えば同じメンバーでのWhirlにあったものがここでは希薄で、ある種の枠を設けてしまっているような感覚。

聴いていくと実際そういう印象はあるのですが、Herschの音は独自性がありどう聴いても彼の音ですし、John HerbertもEric McPhersonもキメの細かいサポートでこの枠内で集中している印象です。また、美しいルバートで始まる「5」「7」は言葉を失う美しさがあり、しっかりHerschの音楽が表現されていると感じます。

そしてこの音は非常に近くで鳴っているようです。自分がハンマーになったんではないかというくらいの音で、生で聴いてもここまで近くはないのでは。もしかするとこの作品の一番の独自性、Venusらしさというのはこの点かもしれないです。


というのも、アグレッシブに展開する「8」、
その後のソロで暖かく熱のこもった表現の「9」。

この2曲は完全に枠を超えてただただ至福の音。期待以上の音楽。遠く深く持っていかれます。


最後の「10」がケロッと明るいクロ-ジングナンバー風になっている辺りが、エンドロールに浸りたいところでパッと明かりをつけられてしまったような残念な感じに、、、。ここはこのレーベルらしさかも。残念。しかし「8」「9」の流れで完全にもとを取っています。得難いテイクです。




、、それにしても裏ジャケなどで見るHerschは非常に弱々しく見え、この細い体でこの演奏がされているのかと思うと少し信じがたいです。リズムなどはフィジカルも大きく関係してくると思いますが、この人は本当に情念の強さで音が出ていると改めて思ってしまいます。そしてこの作品が録音されたことを再び感謝するのでした。



Fred Hersch Trio/Everybody`s Song But My Own
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1. East Of The Sun
2. Shall We Dance
3. I Concentrate On You
4. From This Moment On
5. Two For The Road
6. Invitation
7. The Wind / Moon And Sand
8. Everybody’s Song But My Own
9. In The Wee Small Hours
10. Three Little Words



Fred Hersch-piano
John Herbert-bass
Eric McPherson-drums


2010年録音