4. Webのアーキテクチャ
Webは情報科学のなかでどのような位置にあるのであろうか.
Webはインターネット上の一つのアプリケーションとして起こったわけなので,インターネットを構築するすべての情報技術が関連するといえる.しかし,Webが情報科学のなかで占める重要性はそこではない.むしろ,そのような計算機ネットワーク上でやり取りされる情報の中身自体が重要であり,それが情報科学の研究対象あるいは情報技術の開発対象であることを知らしめた点である(図3参照).いわば情報コンテンツの科学を創出した点がこれまでの情報科学と異なる点である.それは,データの流通でなく人や組織の間の情報流通,計算機のネットワークではなくてWebページのネットワーク,といったものはが新しい研究開発ターゲットになった.グラフの構造からWebをモデル化するWeb CommunityやPageRankといった研究はその例である.コンテンツの世界は多種多様そして膨大であり,単純さを旨としてきた情報科学に新しい局面をもたらしたといえる.
しかし,実はそれだけではWebに関わる研究は終わらない.というのは,Webのコンテンツというのは日々更新されている.今日のWebと明日のWebは違う.これはWebコンテンツは単に可変だということだろうか.実は今Webにあるコンテンツはたまたま社会にある情報がWeb化されただけに過ぎない.明日に別の情報がWeb化されるかもしれない.すなわち,Webの背後には実空間の社会にある情報もろもろがあり,その一部がWebとして“可視化”されたにすぎない(図4).
このように考えると,Webに関する技術は必然的にこの3つの層を対象にしないといけないことがわかる.無論,実空間の社会そのものをすべて情報として扱えるわけではないが,社会をスコープにいれた情報技術が必要とされている.たとえば,社会ネットワークやコミュニケーション,コミュニティに関わる研究・技術が該当する.今はWebにあるかどうかではなくて潜在的なWebとして社会にある情報を扱っていく研究である.
5. 社会化するWeb,Web化する社会
Webは今後どんな方向へ進化していくのであろうか.
端的にいってしまえば,「Webは社会化」し,「社会はWeb化」するであろう.「Webの社会化」とはWebが社会の要素を取り込んでいき,社会として機能していくということを意味している.これはWeb 2.0の流れが容易に理解できよう.
「社会のWeb化」とは社会からみた視点である.これまでの社会の基盤は実空間,すなわち物理的存在である人間が地表上に築いた世界であった.すなわち「社会=実空間」であった.それがWebという新しい基盤を得たということである.それは単に社会の基盤が複数になったということではない.Web空間は我々の実空間とは異なる法則の世界である.社会のWeb化とはこのような別の法則によって社会が変化することを意味している.
模式的に示せば,図4において,前者(Webの社会化)は下の二つの層を含む部分(Web空間)が拡大して,実空間を含むようになるという動きであり,後者(社会のWeb化)は実空間から拡大して,下の2層を含むようになるといえる.この二つの輪の和がこれからの我々の生きる社会である.
この二つの世界はどんどん近づいていって,いずれはほとんど一致するようになるであろう.これが社会としてのWebというわけである.
つまり,実空間で行っていたことがWeb空間上で行うようになるということである.実際,10年で我々の生活の一部は確実にWeb上へ移されてきた.その傾向は今後むしろ加速していくであろう.すなわち,社会そのものが大部分Web上へ移動してしまうというわけである.
Webは情報科学のなかでどのような位置にあるのであろうか.
Webはインターネット上の一つのアプリケーションとして起こったわけなので,インターネットを構築するすべての情報技術が関連するといえる.しかし,Webが情報科学のなかで占める重要性はそこではない.むしろ,そのような計算機ネットワーク上でやり取りされる情報の中身自体が重要であり,それが情報科学の研究対象あるいは情報技術の開発対象であることを知らしめた点である(図3参照).いわば情報コンテンツの科学を創出した点がこれまでの情報科学と異なる点である.それは,データの流通でなく人や組織の間の情報流通,計算機のネットワークではなくてWebページのネットワーク,といったものはが新しい研究開発ターゲットになった.グラフの構造からWebをモデル化するWeb CommunityやPageRankといった研究はその例である.コンテンツの世界は多種多様そして膨大であり,単純さを旨としてきた情報科学に新しい局面をもたらしたといえる.
しかし,実はそれだけではWebに関わる研究は終わらない.というのは,Webのコンテンツというのは日々更新されている.今日のWebと明日のWebは違う.これはWebコンテンツは単に可変だということだろうか.実は今Webにあるコンテンツはたまたま社会にある情報がWeb化されただけに過ぎない.明日に別の情報がWeb化されるかもしれない.すなわち,Webの背後には実空間の社会にある情報もろもろがあり,その一部がWebとして“可視化”されたにすぎない(図4).
このように考えると,Webに関する技術は必然的にこの3つの層を対象にしないといけないことがわかる.無論,実空間の社会そのものをすべて情報として扱えるわけではないが,社会をスコープにいれた情報技術が必要とされている.たとえば,社会ネットワークやコミュニケーション,コミュニティに関わる研究・技術が該当する.今はWebにあるかどうかではなくて潜在的なWebとして社会にある情報を扱っていく研究である.
5. 社会化するWeb,Web化する社会
Webは今後どんな方向へ進化していくのであろうか.
端的にいってしまえば,「Webは社会化」し,「社会はWeb化」するであろう.「Webの社会化」とはWebが社会の要素を取り込んでいき,社会として機能していくということを意味している.これはWeb 2.0の流れが容易に理解できよう.
「社会のWeb化」とは社会からみた視点である.これまでの社会の基盤は実空間,すなわち物理的存在である人間が地表上に築いた世界であった.すなわち「社会=実空間」であった.それがWebという新しい基盤を得たということである.それは単に社会の基盤が複数になったということではない.Web空間は我々の実空間とは異なる法則の世界である.社会のWeb化とはこのような別の法則によって社会が変化することを意味している.
模式的に示せば,図4において,前者(Webの社会化)は下の二つの層を含む部分(Web空間)が拡大して,実空間を含むようになるという動きであり,後者(社会のWeb化)は実空間から拡大して,下の2層を含むようになるといえる.この二つの輪の和がこれからの我々の生きる社会である.
この二つの世界はどんどん近づいていって,いずれはほとんど一致するようになるであろう.これが社会としてのWebというわけである.
つまり,実空間で行っていたことがWeb空間上で行うようになるということである.実際,10年で我々の生活の一部は確実にWeb上へ移されてきた.その傾向は今後むしろ加速していくであろう.すなわち,社会そのものが大部分Web上へ移動してしまうというわけである.